『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『約ネバ』『チェンソーマン』……2020年の“ジャンプ一人勝ち”を振り返る

 すでに「ジャンプ+」は、『終末のハーレム』、『地獄楽』、『SPY×FAMILY』、『怪獣8号』といった話題作を生み出しているが、ここに『チェンソーマン』が加わることを考えると、本誌に匹敵する連載陣が「ジャンプ+」に揃いつつあると言っても過言ではない。

 新人の発掘も本誌以上に勢力的。新人漫画家が作品の投稿・公開ができる「ジャンプルーキー!」を運営しており新人賞も、月間ルーキー賞や「ジャンプ+」での連載を賭けた連載グランプリ。プロ漫画家を対象に他誌でボツになった原稿を募集する「NEXT ステップ」など選択肢が豊富。先日発表された新漫画賞「MILLION TAG」(ミリオンタッグ)は、連載候補者と編集者がタッグを組んで課題に挑み、その選考過程を番組配信で見せていくという企画で、優勝者は賞金500万円の他に「ジャンプ+」での連載確約、コミックス発売、アニメ制作(一話分相当)といった副賞が用意されている。

 藤本タツキの影響を感じる作品も増えており、11月の28~30日の3日にわたって開催された「連載グランプリ2020」でゴールデングランプリを受賞した程野力丸の「宇宙の卵」は、架空の戦後史を題材にした超能力SF漫画。主人公はフィリピンでゴミ拾いをして暮らす日本人で、貧民窟の描写は『チェンソーマン』冒頭を思わせるものがあった。2話以降はネームで、第1話も画のクオリティが高いとは言えないが、それを補って余りある魅力的な物語となっており、どのような仕上がりとなるのか、今から楽しみである。

 もともと、ジャンプは新人育成に力を入れていたが、投稿の敷居が低いネットの強みもあってか、もっとも面白い新人が集まっている場所が「ジャンプ+」だと、言えるだろう。国内エンタメでは圧倒的な力を見せつけた少年ジャンプだが、今後その地位を脅かすとすれば「ジャンプ+」なのかもしれない。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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