『美味しんぼ』山岡士郎、なぜグータラなのに尊敬される? ほっこり人助けエピソード4選

自殺未遂をした鈴子を救う

 美食倶楽部の料理人、岡星良三が泣き崩れる様子を見た山岡と栗田。兄の精一とともに美食倶楽部主任・中川に話を聞くと、想いを寄せていた仲居の鈴子が恋人に裏切られ、自殺未遂をしたことに心を痛めていることを知る。

 中川はその後鈴子が入院し、全く喋ることなく、食べ物も受け付けなくなってしまったことを説明。そして海原雄山も自分の預かっていた娘がそんな状態になったことに責任を感じ、名医を呼ぶなどしているが変わりがなく、良三が自ら志願して雄山の献立を作り食べさせる係を買ってでたことを告げられた。

 「野次馬として海原雄山の失敗を見に行く」と鈴子の病室を訪れた山岡は、雄山と鉢合わせしたことでヒートアップ。鈴子の故郷である伊豆へと向かい、食材を集める。そして海岸で子供が幅海苔を取っている様子を見て、海苔作りに着手する。

 帰りの電車で、栗田と鈴子の好きなものリストに海苔が入っていなかったことを不思議そうにする山岡。その後鈴子の病室に行き、ブダイの刺身など、買ってきたものを食べさせるが、全く反応を示さない。そんな状況で山岡は病室に七輪を持ち出し、海苔を炙ってうちわで扇ぐ。するとその匂いに反応した鈴子が「磯の香り…」と呟き、海苔を食べる。そして「これは良三さんが?」と語りかけた。

 戸惑う良三に、山岡は自分が作ったにもかかわらず「そうだよ。君のために、良三さんが」と答える。鈴子は海苔を食べながら「私、生き直したい」と泣く。すると雄山と中川が見舞いに訪れ、中川が「鈴子が食べている」と喜びを見せる。

 信じられない雄山が「何をしたんだ」と山岡に語りかけると、「鈴子さんが子供のときの生命力を取り戻す手助けをしたまでさ」と言い放ち、病室を去っていった。なおアニメ版では、物語の最後に良三と鈴子が伊豆の海岸をデートする描写が付け加えられている。(10巻より)

 良三のために力を尽くし、食べ物を受け付けなかった鈴子を蘇らせた手柄も良三に譲った山岡。その優しさがひときわ目立った話だった。また、雄山が自殺未遂をした鈴子に心を痛め、頻繁に病室を訪れる、最高の名医を紹介するなどの優しさを見せたことも見逃せない。

子供の園を救う

『美味しんぼ』(15巻)

 東西新聞社に借金取りが押しかけ、ロッカーの陰に隠れる山岡。栗田は僅かな金額であることから、貸すことにする。

 その利子は、「子供の園」で働くこと。サンタクロースに扮して、子供たちと戯れる。そんなとき、スーツに身を包んだ地上げ屋が現れ、園長に法的根拠を示したうえで1ヶ月以内の立ち退きを迫った。

 移転先がないと嘆く園長を見た山岡は新しい土地の持ち主が洋東興産であることを知ると、ニューギンザデパートの板山社長を通じて洋東グループの盛口会長と接触する。板山社長とパーティに出かけ、会長が自慢する田鶏(蛙)の唐揚げに、「これは田鶏ではありませんよ。アメリカ原産のウシガエルですよ」と注文をつける。

 素直に間違いを認める度量の広さを見せた盛口会長に、山岡は「蛙よりも美味しい唐揚げをご馳走させてほしい」と切り出す。同席した板山社長や栗田が焦るなか、「田鶏よりまずかったらホテルの下働きを一生する」と啖呵を切った。

 そして山岡は「岡星」に盛口会長を呼び、トラフグの頭の唐揚げを出す。この味を盛口会長は絶賛し、「君の勝ちだ。君はホテルの下働きを一生すると言った。私はどうすればいい?」と切り出されると、山岡は「ちょっとお願いが…」と話す。

 すると「子供の園」で山岡が子供と遊ぶシーンになり、園長が「どういうわけか突然洋東物産が計画を変えて、この土地を寄付してくれることになったの」と笑う。山岡の身を挺した勝負で、「子供の園」は運営を続けることができることになったのだ。栗田はこの話を聞いて「利子がこんなに大きくなるなんて…」と喜んだ。(15巻より)

 山岡が危険を顧みず盛口会長に挑みかかり、子供の園を救う。その勇気と功績はかなり大きな物があった。

 多くの人を惚れさせる山岡

 東西新聞社では「グータラ」と罵られることが多い山岡だが、実際は多くの人を救ってきた。そんな人間的魅力と勇気が、多くの人を惚れさせる要因なのかもしれない。

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