青山美智子 × 後藤由紀子 特別対談:背伸びしない、快適な生き方のコツとは?

“夢を叶えた”という実感

青山美智子

――デビューから3年目で5冊と、刊行のペースはかなり速いですよね。

青山:もっと早い方もいらっしゃいますし、決してペースが早いとは思っていないんです。なんせ下積みが長かったので、書きたいものがいっぱいあるんですよ。全部書くためには、200年くらい生きないと。

後藤:書きためていたものもあるんですか?

青山:あるんですが、それを再利用できるかといえば、なかなか難しくて。「ここは使えるな」というシーンを昔の自分からいただくことはありますけど。

――試行錯誤の時代も無駄ではなかったというわけですね。

青山:デビューできたから、そう思いますね。遅咲きと言われるんですけど、自分としてはまだ咲いてなくて、やっと芽が出たところだと思っていて。私にいちばんいいタイミングでデビューできたのかなと、いまは思います。

――後藤さんどうでしょう? “夢を叶えた”という実感はありますか?

後藤:ありますけど、私は主婦業と半分半分ですからね。今は16時閉店、もっとひどい時は15時閉店の時がありました。どっちも半人前なんです。

後藤由紀子

――『お探し物は図書室まで』にも、会社員を続けながら、店を開こうとがんばる男性が登場しますね。

青山:パラレルキャリア(本業を持ちながら、副業に限らない社会活動をすること)の話ですね。

後藤:そう、あのお話は私にもフィット感がありました。

青山:後藤さんはたぶん、“無理をしない”ことを自分に課してらっしゃると思うんですよ。無理しない、背伸びしない、できることをしっかりやる。だから続けられるんじゃないかなって。

後藤:ありがとうございます。確かに無理はしてないです(笑)。

――ご家族の時間と仕事のバランスについてはどう考えていますか?

青山:息子は高校2年生で、自分の人生を楽しく送ってますからね。息子が小さくて、常に自分の半径5m以内にいるときはそれなりに大変だったし、「私、よくやってたな」と思います。私は“お母さんになりたい”という夢はなかったけど(笑)、今のバランスはちょうどいいのかなと。けっこう仲も良いんですよ。一緒にRADWIMPSのライブに行ったり。

後藤:素敵ですね!

青山:悩みを相談することもあります。わりといいこと言ったりするんですよ。

後藤:ウチは子供が幼少期のころからお店をはじめたので、自然にバランスを取っていたのかも。流れでここまで来てるので、特に何も言われません(笑)。「とりあえず流れに乗っかってみる」という感じですね。

青山:流れに乗るって、大事ですよ。言葉だけ聞くと受け身に感じるかもしれないけど、じつはすごい能動的だと思うんです。

後藤:そうかも。流れに乗るという選択をしていますからね。

青山:そうですよね。自分から攻めていく強さが必要なこともあるけど、流れに乗るためには、また違ったたくましさが必要なので。

――「流れに乗るか乗らないか」という場面は、人生のなかで何度も訪れますからね。

後藤:そうですね。編集者の方にお題をいただいても、「これならできる」という内容ではないと受けられないので。自分を偽って本を作ってしまったら、お店のお客さんにバレるし、その尻ぬぐいするのもめんどくさいですから。以前、お弁当の本を出した後に、10社くらいの出版社から“丁寧に暮らす”というお題をいただいたんですよ。判で押したように同じようなオファーが送られてきて、「私、ぜんぜん丁寧じゃないです」とお断りして。そのなかの一人の編集の方が企画を練り直してくださって、「それだったらやれます」とお受けして作ったのが“7分目くらいがちょうどいい”(『毎日のことだから。7分目くらいがちょうどいい』)という本なんです。自分を良く見せるつもりもないし、逃げ場がないとダメなんですよね。“丁寧に暮らす”なんて本を出して、近所のスーパーでお惣菜を買ってるところを近所の人に見られそうになったら、「やばい」って隠さなくちゃいけないじゃないですか(笑)。そんな生活はイヤなので。

青山:そうですよね(笑)。後藤さんはご自分のことをすごく分かっていらっしゃるんでしょうね。みんな、そこに辿り着くのが大変なんですよ。「私は何を思っているんだろう?」「どうすれば自分を活かせるんだろう?」というところで試行錯誤したり、悩むことが多いので。後藤さんはそれがわかっているからこそ、流れに乗るかどうかの判断が出来るんですよ。

後藤:それは初めて言われました!

青山:きっとそうだと思う。私は、そこに至るまでの“もがき”みたいなものを書こうとしているんだと思います。今回の『お探し物は図書室へ』の登場人物も、みんな自分に自信がない人ばかりですし、「自分って何者なんだろう?」と悩んでいるので。私もそうでしたからね。

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