『SLAM DUNK』が追求したリアリティと『黒子のバスケ』が放つエンタメ性 両者の違いを考察 

 30代以上でバスケットボールに興味がある人なら、一度は読んだことがあるであろう漫画『SLAM DUNK』。同作を読んで、バスケットボールを始めた人も多いのではないだろうか。だが、連載が終了してすでに24年経った今、『SLAM DUNK』を読んだことがない人も増えてきている。そんな20代以下の層に馴染みが深いバスケットボール漫画といえば、『黒子のバスケ』だろう。

 『SLAM DUNK』と『黒子のバスケ』は、「バスケットボール」という題材は一緒であるもののアプローチ方法が全く違う。故に、よくこの2作品が比較されているところを目にするが単純に比較するのは難しい。といいつつも、絶対王者『SLAM DUNK』があるバスケットボール分野に踏み込んでいった『黒子のバスケ』の挑戦と成功は、漫画史の一トピックとなり得るものであったことは間違いない。

不良時代の三井寿が表紙に描かれた新装再編版の『SLAM DUNK(6)』

 『SLAM DUNK』は、言わずとしれた大ヒット漫画だ。売上部数は1億2000万部以上とも言われており、好きな漫画ランキングなどでも必ず上位に入ってくる。当時はみんな「先生、バスケがしたいです」と三井寿のマネをし、バスケットボールをする時には「左手は添えるだけ」とつぶやき、「ボールはゴールに置いてくる」という赤木晴子のアドバイスを実践。さらに、バスケットボール部員が一気に増えるなど、社会現象にもなっていた。

 バスケットボールの知名度UPに、間違いなく貢献した作品である。そんな『スラムダンク』の魅力といえば、漫画でありつつリアリティのある作品であることだ。派手な試合シーンばかりではなく、地道な練習の様子も盛り込まれている点は、バスケットボールをやったことがある人なら「分かる」と共感してしまうのではないだろうか。

 例えば、桜木花道がシュートの練習をし始めた時。筆者が所属していたバスケ部は、1年生の間はずっと筋トレもしくはドリブルの練習しかやらせてもらえなかった。そんな時にシュートの練習ができるようになると、地道な練習だったとしても花道のように夢中にめり込んでしまうものであった。

 さらに、ストーリーの展開もリアリティを大切にしつつ、日常パートと試合パートのメリハリが効いたものに仕上がっていた。バスケットボールを愛する人々が共感できるリアルと、漫画ならではの少しのフィクションの塩梅が絶妙なのである。

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