中高年の婚活、大切なのは「条件」よりも「生き方」 桂望実『結婚させる家』の問いかけ

 生涯未婚率(50歳まで一度も結婚したことがない人の割合)の上昇が止まらない。「国税調査報告」により算出された、国立社会保証・人口問題研究所調べの「人口統計資料集(2020年)」によると、2015年時点で男性は23.37%、女性は14.6%が未婚。男性は4から5人に1人が、女性はだいたい7人に1人が、50歳の時点でまだ結婚していないのだ。

 ひと昔前は口に出すのもためらわれた、結婚相手を見つけるための活動=婚活が、いまやすっかり定着しているのもそのはず、巷にはこれだけ未婚者があふれているのだから。

 何を隠そう、筆者も婚活経験者のひとり。友人の紹介、合コン、婚活サイト、婚活パーティー、趣味コン、結婚相談所など、数年かけてこれらのあらゆる婚活を行ない、これまでにのべ1,000人の男性に出会ってきた。時間もコストも精神力もかかる婚活の末、最終的には「たこやきパーティー」で現在の夫と出会ったのだが、婚活にも運にもタイミングがあるため、いつどこで運命の人に出会えるのかは未知のものだといえる。

 そんな運命の人を探す50代の婚活物語が、桂望実の『結婚させる家』(光文社)。40歳以上限定の結婚情報サービス会社「ブルーパール」で働く、カリスマ相談員・桐生恭子の視点から、中高年の婚活模様を描いている。物語の軸は、恭子の発案でスタートした、大邸宅「M屋敷」で結婚相談所の会員家族が一週間一緒に暮らすという、「プレ夫婦生活」プランを展開するなかでの出来事だ。

桐生さんが神妙な顔をする。「プロフィールシートだけじゃ、なにもわからないわね。いえね、入会する時に色々書いて貰うでしょ、プロフィールシートに。でもそれはあくまでも上辺の情報よね。嘘を吐いているというのじゃないのよ。そういうものの下にあって、情報としては現れてこないところに、その人の本当の人生が隠れているように思えてね。それでどうしましょうかね。途中だけど宿泊体験はもう止める?」(『結婚させる家』P83より)

 これは「M屋敷」で「プレ夫婦生活」を送る53歳の田坂直樹に対して、カリスマ相談員である恭子が問うた言葉だ。一度目の結婚で失敗した直樹はやっと再婚に前向きになり、子どもが欲しいからと、当初は30代女性の紹介を希望していたが、恭子に諭されて52歳の関本梢と宿泊体験をしていた。

 「プロフィールシート」は婚活の定番で、名前・職業・年収・家族構成その他を書いて相手に見せる、釣書のようなものだ。この条件を見てOKかNGかの判断をする場合もあれば、OKを出しても、やはりそれだけで相手の人生を把握することは難しいだろう。

 生涯を懸けた「お見合い」は、ほんの数十分だけでも緊張することを経験している筆者は、同小説のように相手の家族と一週間も暮らすなんて負荷がかかりすぎて考えられない。ただ、もしも「プレ夫婦生活」を送ると、良くも悪くもお互いの意外な一面や家族との相性も知ることで、より確度の高い決断が下せるのかもしれない。

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