『流浪の月』『ぼくイエ』は自粛の日々に“考える”機会を与える 文芸書週間ランキング

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

 2位の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、ノンフィクションとフィクションの境目にあるような作品。主人公は、イギリスの海沿いの町で、“荒れている地域”に暮らすブレイディみかこ氏の息子。彼が通うのは“元底辺中学校”で、そこには人種差別や格差などさまざまな問題が潜んでいる。人は偏見によってたやすく分断する。そして偏見は、自分と異なるものへの恐怖や、社会的な不安によって助長されるものだ。舞台となる国はちがえど、『流浪の月』と同様に、ほんとうの多様性や差別のない社会を考えるうえで必要な本作が2位にランクインしたのは、コロナウイルスによって人々が、より“考える”機会を欲しているからではないだろうか。

 3位以下には、誰もが名を知る大御所作家たちが名を連ねる。休業中の書店は多かれど、オンラインでの売れ行きはそれほど悪くないと聞く。家のなかでできることが限られているなか、ふだん本を買わない人が「ちょっと読んでみよう」と、知っている作家の本に手を出した、というケースも多いのかもしれない。

 読書は、本と一対一で向き合うしかない孤独な作業だ。けれど、未知なる自分や価値観を発見できる、豊かな時間でもある。書店だけではなく、飲食店やさまざまな娯楽施設が、一刻も早く営業再開できる日を願うばかりだが、1人でも多くの人が、これを機会に読書の楽しさにハマってくれるといいな、とも思う。

■立花もも◎1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行い、現在「リアルサウンドブック」にて『婚活迷子、お助けします。』連載中。

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