Amazonで本の在庫切れが続出 入荷制限から再考する、出版の未来
Amazon.comの日本法人アマゾンジャパンが国内の物流施設で生活必需品や衛生用品を優先的に入荷し、それ以外の商品の入荷制限をしていると2020年4月17日付けの日本経済新聞で報じられた。
「それ以外」に入れられたもののひとつが本である。結果、どうなったか。多くの本のAmazon内の在庫がなくなり「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」というステータス表示になった。在庫がなくなったにもかかわらずAmazonから注文(入庫以来)は来ないので、取次も出版社もどうすることもできない状況が続いている。(代わりに楽天ブックスなど他のネット書店が機能してくれれば一気に利用を伸ばすチャンスだったのだが、そちらも十分とは言いがたい状況だ)
買う側(読者)からしても売る側(出版社)からしても、リアル書店は開いていないか開いていても三密を避けようと考えるとなかなか行きづらいし、オンライン書店でも実質的に買えないという八方塞がりの状態になってしまった。
おそらくほとんどのAmazonユーザーは事情を知らずに「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です。」と表示されたらわざわざ他のサイトで探すことなく、買うのをやめてしまっただろう。
物流の逼迫その他を考えると入荷制限するのは仕方がない面もあるが、こと本に関してとんでもない機会損失が生じさせているのも事実だ。
出版社はそもそも悪条件での取引
そもそもの話をすると、Amazonは「e託」という出版社から直で仕入れる(出版社が取次を通さずAmazonからのオーダーに対して自分たちで入庫する)という販売サービスを行っている。
出版社はこのサービスを使っても使わなくてもいい。いいのだが、使わないとAmazonは基本的に取次を介して本を仕入れるものの、e託利用時と比べて動きが遅い上に、トーハンや日販の口座を開いていない(取引がない)小規模出版社の本をトーハンや日販に対して注文をかけたり(そんなことをしても扱いがないので入荷できないのだが、おかまいなし)、版元側からはさまざまな情報がブラックボックスになっていて何をどうすれば状態を改善できるのかわからなかったりする。
e託を使うと出版社に直で入庫指示が来るので情報量的には多少マシになるのだが、年会費がかかる上に、送料は版元側が負担しなければならず、多いと週3回オーダーが来て、しかもただ送ればいいというわけではなく通常の発送用ラベル以外にいちいちe託用の紙をプリントアウトして貼ったりなんだりと対応が面倒、かつ直販だからといってリアル書店の流通などと比べても条件は良くない。
入荷制限と販売予測の変更でe託利用のメリットは?
そのうえコロナ禍以降の入荷制限によって、e託利用による数少ない利点だった「取次を介さないので在庫切れが比較的生じにくい/生じてもAmazonの倉庫に送ってしまえば比較的早期に在庫切れが解消される」が機能しなくなった、という声が出ている。
在庫切れをしても出版社に注文が来ないか、よほどのヒットタイトル以外は来たとしても各タイトル1冊とか、各倉庫に1冊ずつとか極めて少ないとの証言もある。
e託を利用すると出版物ごとに今後の販売予測が閲覧できるが、入荷制限が始まって以降、Amazonは本の販売予測の数を突如急減させているという。
もともと何を根拠にどう算出しているのか利用者(出版社)側には曖昧にされてきたわけだが、コロナが流行ったら急にネット書店で本が売れなくなると本気で予測しているのだろうか?