落ちこぼれ少女たちが死亡率9割の任務に挑むーー『スパイ教室』シリーズの圧倒的おもしろさ

『スパイ教室02 〈愛娘〉のグレーテ』

 読めば分かる2度は使えない手口。だからこそ、続編となる『スパイ教室02 〈愛娘〉のグレーテ』が、どういった展開になるのかが気になって仕方がなかった。不可能任務を見事に成し遂げた、クラウスと少女たちのスパイチーム「灯」が次に挑むのは、共和国に潜入した冷酷な暗殺者《屍》をあぶり出すことだった。

 いや、その前に国内外で5つの任務が課されて、それをクラウスが少女たちの知らない間にこなしていて、ここでも「「「「「「「「ちょっと待てえええええええぇつ!」」」」」」」」という怒号が飛び出すことになるのだが、そうしたクラウスの他人をあまり信じていなさそうなスタンスに、不信を覚えつつ認めてもらいたいという少女たちの強い思いが、第1巻にも増して感じられる物語になっている。

 今度の任務では、リリィのほかに格闘が得意なジビア(cv.東山奈央)、動物を扱えるサラ(cv.佐倉綾音)、そして、クラウスの絶賛する変装の名手、コードネーム《愛娘》のグレーテ(cv.伊藤未来)が選抜されて、暗殺の対象になっている要人をメイドとして警護する任につく。グレーテが圧巻の変装能力を駆使して潜入者をあぶり出していく展開がスリリング。その上で、第1巻とは違ったクラウスの仕掛けが浮かび上がって、リリィやグレーテたちの自信を揺るがす。同時に「灯」の未来も。

 読み終えて、やっぱり浮かぶだろう「極上だ」の言葉。豪華PVにふさわしいストーリーを、まだまだ味わえると思うと嬉しくて仕方がない。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

■書籍情報
『スパイ教室01 《花園》のリリィ』(ファンタジア文庫)
『スパイ教室02 《愛娘》のグレーテ』(ファンタジア文庫)
作:竹町
イラスト:トマリ
出版社:株式会社 KADOKAWA
価格:各・本体650円+税
<発売中>
http://fantasiataisho-sp.com/spy/

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