宮下草薙、独自のコミュニケーションに垣間見る“エモい関係” 『宮下草薙の不毛なやりとり』を読む

 もともと宮下がTwitterに書きとめていたものが『TV LIFE』で連載化し、一冊の本になった本書。今食べているパンは自分の方がおいしいとか、ごはんをお腹いっぱい食べないと寝られないとか、『M-1グランプリ』前に禁酒するしないで揉めたりとか、まさに“余分なコミュニケーション”のオンパレード。

 「よくぞこのやりとりを形に残してくれた!」と宮下とがっちり握手したい気分になる。こんなふうに仲のいい友だちとだらだら話しているだけで楽しいことを青春と呼ぶんだと、読みながら気づかされる。ときに甘えあい、ときに厳しいことを言い合い、喧嘩をしてもすぐ仲直りができる。従来のただひたすらに笑いを求めるストイックな芸人像と異なり、彼らは仲のいい友だちの延長線上でコンビを組んでいる。宮下のTwitter上で先輩芸人や他の第7世代と絡んでいる「カメラのレンズの外側」が見られるのも嬉しい。「エモい関係」がさらに若いお笑いファンを熱狂させる。

 本書の中には本人たちへの個別インタビュー、事務所の先輩でありプライベートでも親交があるアルコ&ピースとの対談、巻末にはふたりでお酒を飲みながらの対談も収録。カラーグラビアとともに彼らの仲の良さがたっぷり楽しめる。個別のインタビューではそれぞれが相方に対して思っていることが詳らかにされている。彼らの言葉には若手である今だからこそ出せるくだらなさと尊さが詰まっている。

 おじさんになったときに読み返して「俺たちこんなバカなこと話してたんだな、でも楽しかったな」とお酒を酌み交わすふたりの様子が目に浮かぶ。『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の「おもしろ荘」出演を皮切りにスター街道をひた走るふたり。売れても売れなくても彼らの本質は変わらなかっただろう。このままずっと仲良くお笑いをやり続けてほしいと思うのはファンのわがままだろうか。

■ふじこ
10年近く営業事務として働いた会社をつい最近退職。仕事を探しながらライター業を細々と始める。小説、ノンフィクション、サブカル本を中心に月に十数冊の本を読む。お笑いと映画も好き。Twitter:245pro

■書籍情報
『宮下草薙の不毛なやりとり』
著者:宮下草薙
出版社:学研プラス
価格:1,400円(税別)
<発売中>
https://www.tvlife.jp/sp/fumou/

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