ドラマも話題『来世ではちゃんとします』が共感を呼ぶワケ 多様な性を肯定する作風を考察
都内にあるブラック気味な映像プロダクションで働く“性的にこじらせた人々”を描いた四コマ漫画『来世ではちゃんとします』(通称・「来世ちゃん」)。
本作はSNS世代を中心に支持を集め、現在は内田理央主演でドラマ化され水曜深夜に放送されている(テレビ東京系)。内田理央の亀甲縛りやベッドシーンなど性的なシーンも多くドキッとさせられるが、思う相手の本命になれない切なさといった普遍的な恋愛の悩みやアセクシャルや女装男子などをはじめ異性愛だけでない多様な性のあり方を描いた作品だ。
美大の卒業制作として漫画を描き始めたという作者のいつまちゃん。その後、社会人になってからも漫画を描き続け、ツイッターで毎日投稿しているうちにフォロワーが急増。そのまま編集者の目にとまったことでデビューし、現在は『グランドジャンプ』で本作を連載中という、SNS時代ならではのルートを歩んできた作家だ。
SNS、とくにツイッターで反響を得るには、“共感”が大きなカギを握る。そこで鍛えられた作者による性的にこじらせたキャラクターたちの“恋愛あるある”は、読者の心に深く突き刺さりながらも、「こじらせているのは、あなただけじゃないんだよ」とままならぬ恋や人生を送る私たちに寄り添ってくれる。
四コマ漫画はそのジャンル名の通り、4コマで1つの話題が完結する漫画だ。ストーリー漫画のようにテーマや場面を変えるときに説明を必要としないからこそ、多種多様なキャラクターを描く群像劇にピッタリな形式といえる。
本作でも、メインとなるセフレが5人いるスペック厨の性依存系女子・大森桃江(27歳)、アセクシャルでBL好きの隠れ処女ギャル・高杉梅(27歳)、肉体関係を持った女を情緒不安定にしてしまうイケメン・松田健(26歳)、元カノに浮気されたことで処女厨に転じたセカンド童貞・林勝(26歳)、真面目ながら筋金入りの面食いでソープ嬢にガチ恋中の檜山トヲル(29歳)ら、映像プロダクション「スタジオデルタ」で働く5人以外にも、彼女らとかかわる“性的にこじらせた”人々が性癖だけでなく人物的な背景とともに描かれていく。
林が出会い系で知り合う女装男子・凪などは、ドラマで男性モデルのゆうたろうが演じ、その圧倒的なかわいらしさがSNSで話題をさらった(凪には兄と姉が存在し、その2人も意外な形で桃江と関係している)。