CORTIS、号令「スマートフォンを置け」の真実 音と身体だけに賭けた初世界ツアーで証明する自分たちの輪郭

 「スマートフォンを置け」――CORTISが初のワールドツアーに掲げたのは、そんな挑発だった。7月の仁川から北米、ソウルを経て、旅は横浜にたどり着く。『2026 CORTIS TOUR <PUT YOUR PHONE DOWN> IN JAPAN』。9月4日から6日、ぴあアリーナMMでの初の日本単独公演が、そのままツアーの最終章となった。

 タイミングは、これ以上ないほどにいい。デビューからわずか1年、5人は今最も勢いに乗るグループのひとつだ。5月リリースのThe 2nd EP『GREENGREEN』は米Billboard「Billboard 200」で初登場3位。デビューから9カ月での到達は、プロジェクトグループを除けばK-POP史上最速のトップ3入りだった。タイトル曲「REDRED」も「Bubbling Under Hot 100」で17位に食い込み、韓国の「Spotify」週間ソングチャートでは18週連続の首位を守る。K-POPグループの楽曲では最長の記録である。

 ライブでの実績も申し分ない。2月の『NBA All-Star 2026』では、コンサートシリーズ『NBA Crossover』のヘッドライナーと『Celebrity Game』のハーフタイムショーを務めた。いずれもK-POPアクトとして初めてのことだ。韓国のボーイグループで唯一、8月の『Lollapalooza 2026』にも出演した。そうした大舞台で得た確信を携えて、CORTISは横浜へ乗り込んだ。

 だが、初日のステージは拍子抜けするほど飾り気がなかった。オープニングからして、K-POPの定石を外していた。場内が暗転して舞台後方のスクリーンに映し出されたのは作り込まれたVCRではなく、バックヤードで自撮りに興じる5人の姿だった。画面越しに客席を煽った彼らはカメラを回しながら、仰々しい出囃子もなく袖から現れる。そして、「YOUNGCREATORCREW」「FaSHioN」「REDRED」を続けざまに放つ。

 その判断は、見せ方のすべてに及んでいる。以降もスクリーンを占めるのは、歌詞やキーワード。メンバーを映し続けるわけではない。肉眼で見る実物よりも“撮り映えする画”を、そこは差し出さない。舞台に置かれているのは、ソファがひとつきり。客席側へ張り出したメインステージから、花道がアリーナを十字に割って奥まで走る。飾りのない、線だけの図面。衣装も揃いではなく、思い思いの装いのまま、終演まで一度も替わることがなかった。音と身体だけに賭けている。それが彼らの意思表示だった。

 「ACAI」「TNT」「MOTION (feat. Juicy J)」「Mention Me」と続く。踊る5人の身体は、しかしひとつにまとまらない。一糸乱れぬ群舞がK-POPの華だとすれば、ここにあるのは別の原理だ。振り付けのある曲では隊列も組むが、多くの場面では各々の呼吸で音をとらえ、声を張る。動きを決めているのは、その瞬間の衝動だ。ボーイグループというより、同じビートの上に居合わせたラッパーたちの集まりと言ったほうが近い。楽曲も映像も自作する“ヤングクリエイタークルー”がライブで見せたのは、その名の通りの“個の集合”だった。

MARTIN

 緩急がないわけではない。中盤の「JoyRide」「Lullaby」「Blue Lips」「Wassup」は、内へ向かう時間だった。畳みかけていた前半から一転し、5人の声が静かに立ちのぼる。穏やかな流れのなかにも、刹那的な感触は残っている。そこから「What You Want」を二度続けて叩き込む本編の山場では、フロアが跳ね、コールアンドレスポンスが会場を満たす。客席は身を投げ出すように揺れ、声を上げる。その熱はまっすぐ舞台へ返っていく。

JAMES

 同じ曲が、何度も戻ってくる。この夜に披露されたのは計27曲。実数にすれば16曲で、うち10曲が2度以上鳴らされている。「What You Want」は続けざまに2度、「GO!」に至っては本編で2度、最後にリミックスヴァージョンで3度目が投下される。開幕の「YOUNGCREATORCREW」「FaSHioN」「REDRED」も、終盤に同じ並びで戻ってきた。その一方で、最新曲「MONEYMONEYMONEY」も未発表の「NANI (Demo ver)」も惜しみなく披露される。持ち曲の少なさもあるだろう。だが、それだけでは説明がつかない。再演が狙うのは、聴かせることではなく、あの熱狂を再び起こすことだ。観るのではなく、巻き込む作法は、彼らが音の軸に据えるレイジラップの流儀である。

JUHOON

 その作法を、彼らは「スマートフォンを置け」という看板の下で貫いている。日本の多くの公演と同様に、横浜でも撮影は禁じられていた。しかし、号令の中身は禁止ではない。裏を返せば、「こちらへこい」という招待である。撮ることをやめた両手と視線が、目の前の5人へ向く。そのための号令だ。メンバーはMCで、スマートフォンを手にせず目を合わせて跳んでくれたこと、心を通わせようとしてくれたことへの感謝を繰り返し口にした。終演後の記念撮影も、公認のフォトタイムもない。公演中の撮影を禁じる慣習が根づいた日本は、この招待が最も素直に成立する場所だったのかもしれない。

SEONGHYEON

 ツアー直前に両手の小指付近を骨折したKEONHOは、この日も終始舞台に立ちながら、完全な状態で踊りに加わることはできない。あのソファは、彼が息を整える場所でもあったのだろう。MCは、最後の長い語りかけを除けばほぼ日本語だった。つたなさは隠さない。取り繕わないことが、かえって客席との距離を縮めていく。

KEONHO

 白眉は幕切れだった。エンディングのMCで一度きれいに締め、誰もが余韻に浸ったその直後、5人は「JoyRide」「GO! (Remix)」「NANI (Demo ver)」「PACK IT UP」へと雪崩れ込む。終わったと思った瞬間の再爆発。美しさよりも熱狂とカオスを、整合よりも衝動を選んだ一夜に、CORTISの輪郭がはっきりと定まる。グループ名の由来は「COLOR OUTSIDE THE LINES」――“線の外に色を塗る”、すなわち既成の枠にとらわれずに考えるということ。彼らはそれを、音と振る舞いで証明してみせた。スマートフォンを置いたフロアに向けて、この夜は組まれていた。

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