ラフ×ラフ 佐々木楓菜×Akira Sunset対談 現役アイドルが“音楽作家”としてスクールへ通い始めた理由とは

 テレビプロデューサーの佐久間宣行がプロデュースするアイドルグループ・ラフ×ラフ。そのメンバーの一人である佐々木楓菜は、グループのYouTubeチャンネルでの企画をきっかけに「君ときゅんと♡」「カラフルタイム」「消えたくなるほど君が好きだ」「一期八会」「ときめきコレクション」と、これまで5曲を作詞作曲している“音楽作家”としての才能も持ち合わせている存在だ。

 先述したYouTubeでの企画を皮切りに、佐々木が初めて作詞作曲を手がけた「君ときゅんと♡」以降、彼女の“師匠”として制作のサポートをしているのは音楽作家事務所・HOVERBOARD,Inc所属の遠藤ナオキなのだが、佐々木は今夏より、そんなHOVERBOARD,Incのプロ作曲家育成スクール「Dr.BROWN」に通い始めているのだという。

 今回、リアルサウンドでは佐々木と同事務所の主宰でもあるAkira Sunsetとの対談を企画。佐々木の“音楽作家”としての一面を掘り下げるほか、実際にスクールで学んでいる内容、プロの作家目線から見た音楽作家に必要なことなどについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)

佐々木さんの楽曲は、本当にメロディが良い(Akira)

――佐々木さんが“音楽作家”として取材を受けるのは今回が初めてだそうですね。

佐々木楓菜(以下、佐々木):はい、本当に初めてです! よろしくお願いします。

――佐々木さんが作詞作曲をすることになったのは、2024年の下半期に向けて各メンバーがやりたいことを発表する、という企画の中でご本人が希望されたのがきっかけですよね。その前から自分で曲作りはしていたのでしょうか?

佐々木:いえ、まったく……。ただ、ラフ×ラフは面白くて、可愛くて、歌が上手なメンバーがたくさんいて、それぞれ際立つ特技や突出したものを持っているグループで。だから、私は「自分には何もないんじゃないか」と、ずっと苦しんでいたんです。そんなときにマネージャーさんとじっくりお話しする機会があって、「ふーちゃんは作曲がいいと思うんだよね」と言ってくださったことが(作詞作曲をする)きっかけになりました。

――マネージャーさんからの提案だったんですね。そこからすぐに曲作りを?

佐々木:最初は「いや、私なんかに作曲なんてできるわけない!」と本気で思っていました。これまで楽器を本格的にやってきたわけでもありませんし、自分に才能があるなんて考えたこともなくて。でも、マネージャーさんが何回も根気強く「絶対にいいと思う」と言い続けてくださったんです。それで「そこまで言ってくださるなら、一度試しに作ってみようかな」と思って、自宅のリビングなどで思いついたメロディをアカペラでスマートフォンのボイスメモに録音し始めました。そうして生まれた1曲目が、作家デビュー作となった「君ときゅんと♡」です。

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――「君ときゅんと♡」は、王道のアイドルサマーチューンとして非常にクオリティが高い楽曲ですが、その裏には佐々木さんがそれまで培ってきた豊かな音楽的ルーツがあったように思います。幼少期から、音楽に触れる特別な環境があったのでしょうか。

佐々木:お出かけするときに、お父さんが車の中で流していた曲が大きかったと思います。お父さんのプレイリストには700曲くらい入っていて、車に乗るたびにそれがずっと流れていたんです。今振り返ると、そのときに聴いていたたくさんの曲たちが私の音楽的なルーツというか、ベースになっているんだなと感じます。

――では、佐々木さん自身が主体的に聴いていた楽曲は?

佐々木:中学生の頃はK-POPが大好きで、TWICEさんばかり聴いていました。そこから高校生になってからは、日本のアイドルソングに深くハマりまして、乃木坂46さんや=LOVEさん、そして他のアイドルさんたちの曲も、本当に幅広く聴くようになりました。

――そんな佐々木さんが作った動画や楽曲をサポートしているのが、HOVERBOARD,Inc所属の遠藤ナオキさんです。HOVERBOARD,Incの代表であるAkira Sunsetさんは、佐々木さんの楽曲をどのような経緯で知ることになったのでしょうか。

Akira Sunset(以下、Akira):実は最初、僕はこのプロジェクトが動いていることを全然知らなかったんです。遠藤ナオキがXでポストしているのを見かけて「あれ、遠藤が何かやってるな」と興味を持って、動画を観たのが最初でした。そうしたら、めちゃくちゃメロディが良くて。「え、これ本当に本人が作っているの?」と驚いて、そこからアップされている動画を何回も繰り返し観ましたね。

――プロの作曲家であるAkiraさんの目から見ても、佐々木さんのメロディセンスは光るものがあったのですね。

Akira:本当にメロディが良いんですよ。僕もギターを弾きながら作ることもありますが、一番良いメロディが生まれるのは“鼻歌”だと思っているんです。鼻歌で作るほうが楽器のコード進行の制約に縛られない分、一番自由度が高くて、結果的に口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディが出てきやすいんですよね。佐々木さんの作り方はまさにその原点に近いもので、だからこそ耳に残る強いメロディが書けるんだなと納得しました。

――Akiraさんご自身も、やはり鼻歌から楽曲を生み出されることが多いのでしょうか。

Akira:そうですね。それこそ乃木坂46さんの楽曲をたくさん書かせていただいていた時期は、よくバイクに乗っているときや、お風呂に入っているときにメロディが降りてくることが多かったんです。なぜだろうと後から考えてみたら、その時間はスマホを触っていなかったからなんですよね。デジタルデトックスをしている状態というか、脳に余計な情報が入ってこない何もない空間だからこそ、フンフンと口ずさんでいるうちに「あ、これいいな」というメロディが自然と湧き出てくる。だから、佐々木さんがふと思いついたメロディをアカペラで録音する習慣というのは、作家として非常に理想的なスタートダッシュだと思います。

――機材を使いこなす前に、ピュアな“メロディの強さ”だけで勝負できているということですね。そして動画を重ねるごとに、佐々木さんの制作環境も驚くべきスピードで進化していきました。

佐々木:そうなんです。最初は本当にスマホ1台で、アカペラで歌ったものを送るだけだったのですが、「カラフルタイム」のときには、シンセサイザーの『YAMAHA MX49』とスピーカーの『Alesis M1 Active 620』を購入したり、「一期八会」や「消えたくなるほど君が好きだ」のタイミングでは、初めてパソコンを使って作業するようになったり「ときめきコレクション」の制作時には、遠藤さんからMacBookをお下がりでいただきました。

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――動画でも遠藤さんが「作家は代々先輩からお下がりをもらってきた」と話していましたね。

Akira:HOVERBOARD,Incには昔からそういう文化があるんですよ。僕自身、機材やガジェット、家電が大好きで、新しいものが出るとすぐに買い替えたくなってしまうんです。昔は古い機材を売ったりもしていたんですが、「売るくらいなら、これから頑張る若い子や後輩にあげた方がみんなのためになるし、喜んでもらえるな」と思うようになって。そこから、後輩たちがさらに下の世代や佐々木さんにあげていく、という素敵な循環が生まれました。事務所のメンバーは、みんなお下がりをもらっていますよ。今日も後輩がInstagramで「掃除機もらいました、ありがとうございます!」って投稿されていたくらいです(笑)。

――技術だけでなく、道具や環境も先輩たちがしっかりとバックアップしてくれる。これはモチベーションの向上に直結しますね。

佐々木:本当にありがたいです。自分ができることがどんどん増えていって、道具の使い方がわかっていくプロセスそのものが、自分の成長を実感させてくれます。「もっといい曲を作りたい」「もっと頑張ろう」という大きなモチベーションに繋がっています。

「この作業にはこういう意味があったんだ!」とわかる瞬間が楽しい(佐々木)

――そして2026年7月からは、いよいよHOVERBOARD,Incが運営するプロ作曲家育成スクール「Dr.BROWN」に特待生として通い始められたそうですね。この経緯についても教えてください。

Akira:これは本当にタイミングが完璧だったんです。うちのスクールでは、半年の「プロコース」のほかに、7月から「初心者コース」がスタートしていて。その1、2週間前くらいに佐々木さんから「スクールに通いたい」という相談をいただいたので、「それなら絶対に今から始めた方がいい!」とすぐにお誘いしました。同時に、若い世代の才能あるクリエイターを支援するために特待生制度を作ろうと考えていた時期でもあったので、「まさに今、一番欲しかった天才が来てくれた!」と、僕自身もめちゃくちゃテンションが上がりましたね。

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――スクールでは、実際にどのようなカリキュラムを学ばれているのですか。

佐々木:今はまだ「初心者コース」の授業を数回受けたばかりなのですが、本当に初歩の初歩から教えていただいています。オーディオファイルの「24bit/48kHz」といった概念や、BPMの仕組み、DAWの使い方など、何もわからない私に対して、先生方がゼロから優しく、丁寧に教えてくださっています。

――専門用語が飛び交う音楽制作の世界は、最初は少し難しく感じませんか。

佐々木:やたらとカタカナが多くて、最初は本当にびっくりしました(笑)。授業の中で先生方が「ニーヨンヨンハチ(24bit/48kHz)が〜」と話されているのを聞いて、「一体何のことなんだろう……?」って、頭の上がハテナマークでいっぱいになってしまって。

Akira:そうそう、音楽業界って専門用語やカタカナの略称がやたらと多いから、何も知らない状態から入ると戸惑いますよね。でも、佐々木さんはスポンジのように知識をぐんぐん吸収しているから、これからの成長が本当に楽しみです。

――DAWは何を使っているのでしょうか?

佐々木:「Fender Studio Pro」(旧「Studio One」)を使っています。これまでは遠藤さんのすごすぎるマウス捌きを後ろから眺めながら、「私にはこんなの絶対にできない……」と圧倒されていたのですが、スクールで一歩ずつトップラインの打ち込みなどを練習していくうちに、「こうやって地道に重ねていけば、いつか私にもできるようになるかもしれない」と少しずつ自信が湧いてくるようになりました。その「あ、この作業にはこういう意味があったんだ!」とわかっていく瞬間が、ものすごく楽しいです。

――直近の「ときめきコレクション」の制作動画を観ていると、パソコンでの作業ができるようになったことで、直感だけでなく“構成”を理論的に考えられるようになったからこそ、逆に選択肢が増えて迷ってしまったのかなと感じました。

佐々木:本当にその通りだと思います。アカペラだけで作っていた最初の頃は、ただ自分の気持ちいいメロディを歌うだけで完結していたんです。でも、パソコンを使って本格的な実作業に入り、BPMや小節の頭拍という概念、コードアレンジの仕組みを理解していくにつれて、「ここをこう展開させたらどうなるだろう?」と頭の中で理論的に考えすぎてしまって、直感だけで完結できなくなるしんどさを初めて味わいました。

Akira:その壁にぶつかるのはものすごく早いし、それってとても素晴らしいことだと思います。作曲を始めてまだ1、2年で知識が増えたことによる“葛藤”を経験できるのは、それだけ真剣に音楽と向き合って、打席に立ち続けている証拠ですから。

――プロの作家であるAkiraさんから見て、そのスランプを乗り越えるためのアドバイスなどはありますか。

Akira:やっぱり学ぶほど知識が増えていくから、最初は視野が狭くなってガチガチに考えちゃう時期がどうしてもあるんですよね。でも、そこを乗り越えると、知識と直感がうまく融合して、また一歩、曲作りが格段に面白くなる。そのときに一番大事なのは、やっぱり“初期衝動”を忘れないこと。最初にスマホに向かって、何の制約もなく気持ちいいメロディをアカペラで吹き込んでいた頃のピュアな感覚は、プロになっても一番の武器になるから、そこは大切にし続けてほしいかな。

――Akiraさんはコライトが多い作家さんであることも特徴ですが、実際にコライト形式を採用して複数人で作る楽しさも、そのスランプを突破する一つの鍵になりそうです。

Akira:そうそう。一人でパソコンに向かって黙々と作っていると、どうしても同じようなコード進行や、同じメロディの癖から抜け出せなくて、しんどくなったり飽きちゃったりするんですよね。でも、自分が苦手な部分をほかの得意な作家に任せて、自分は得意なトップライン(メロディ)作りに専念するようなコライトのスタイルなら、煮詰まることもないし、何より作っていて楽しいと思う。HOVERBOARD,Incはもう十数年そのやり方を実践しているから、佐々木さんにもぜひ、スクールのほかの作家やホバーボードの作家たちとどんどんコライトしていってほしいです。

佐々木:ありがとうございます。自分で全部作らなきゃと気負うのではなくて、誰かと刺激を掛け合いながら作るコライトの楽しさも、スクールを通して早く体験してみたいです。

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