時代に愛された麻倉未稀の歌 「大人の歌が歌えるような歌手」を追いかけた日々……45年の歩みと魂の行方

“遺書”としての受け取られ方も「ああ、確かにそうね」――麻倉未稀版「My Way」

――歌手デビュー45周年という大きな節目に届けるこのアルバムを制作するにあたり、麻倉さんは当初どんなイメージを持っていましたか?

麻倉:前作にあたる40周年記念アルバム『人生はドラマ これからも続く私のヒーロー物語』(2022年)もそういうところはあったんですけど、今回は私が小中高校ぐらいの頃に好きで聴いていた曲だったり、それこそ高校の頃はすでに練習生として事務所に所属してレッスンしていたので、当時練習曲として歌っていた大橋さんの曲だったりを、レコーディング作品として取り上げたことがなかったので、そういうテイストを入れたいなとは漠然と考えていました。

――ある意味、ご自身の原点をあらためて振り返るような一枚でもある、と。そこにレベッカ「フレンズ」やプリンセス プリンセス「M」のような1980年代後半の楽曲も含まれていて、昭和のよき時代の音楽……歌謡曲というよりはニューミュージックと呼ばれた時代の名曲たちが、今の麻倉さんの目線で表現されているわけですね。

麻倉:まさにそのとおりです。私はたまたまそういう時代を、若い頃に過ごすことができたけど、今の若い方たちはリアルタイムでは経験できていない。私と同じ世代の人たちは、このアルバムを聴いて懐かしいなと思うかもしれないけど、リアルタイムで知らない世代の方々はちょっと新鮮に感じてもらえるんじゃないかなと、少し期待しているところもあります。

――ここ数年、このアルバムで取り上げられている時代のニューミュージックの多くがシティポップとしてもてはやされていることもあり、幅広い世代にアピールするんじゃないかと思いますよ。

麻倉:そう言ってもらえて安心しました。あの時代の音楽ってメロディも歌詞の内容も素敵ですけど、何よりもアレンジが今聴いてもすごくおしゃれなんですよね。それを活かさないのはもったいないので、なるべく原曲にあったテイストは残したいなと思っていました。

――アルバムのオープニングを飾るタイトルトラック「My Soul」は、富田京子さんとの出会いがあってこそ生まれた1曲かなと思います。

麻倉:そうですね。作詞家としてのきょんちゃん(富田)ではなく、ひとりの人間としてのきょんちゃんが私と一緒にがん啓発活動に取り組んできたという経緯がまずあり。そのなかにもちろん音楽活動もあったわけですが、彼女の前ではこれまで普段の私の姿を見せてきたので、そういった意味では今回のようなコラボレーションまでに8年もの歳月を要したのは、逆によかったのかなと思っています。でも、きょんちゃんは「いつ作詞家として呼んでくれるのかな?」と思っていたらしくて(笑)。今よりも前だったら、ちょっと早すぎるかなと思っていたし、このタイミングを逃すとちょっと違うかなというのもあり、満を持してお声がけしました。

――先に音楽活動以外の場で出会っていたこともあり、言い出しにくいのもあった?

麻倉:それもありました。なので、今回はディレクターさんから「富田さんに作詞をお願いすることできないですか?」と言ってもらえたことは、私的にもすごく大きくて。その場で「できます!」って即答しましたから(笑)。そのあとすぐにきょんちゃんに連絡したら、「やった! ぜひやらせてください!」とすぐに返事がきました。

――その富田さんが作詞をするための曲選びに関しては、どのように進められたんですか?

麻倉:以前から「麻倉さんくらいのキャリアになったら、特定の誰かに決め打ちというよりも、いろんな作家さんから曲をエントリーしてもらって、そこから選んだほうがいいんじゃないですか?」というアドバイスをいただいていたので、それを実際に試してみたんです。なので、誰が書いたかわからない状態で、何曲かのなかから選んだんです。あとは、きょんちゃんがその曲を聴いて、歌詞を書きやすいかというのも大切じゃないですか。なので、私も何曲か選んで、きょんちゃんも何曲か選んだなかから、私とディレクターさん、きょんちゃんがチェックマークを付けた共通の曲が実際に選ばれたもので、そこで初めて吉野ユウヤさんというお名前を伺ったんです。

――なるほど。

麻倉:きょんちゃんからは、最初「歌詞が完成するまでに、ちょっと時間がかかるかもしれません」と知らされていたんですけど、とても素敵な曲だったからか、2週間とかからずに歌詞が上がってきて。きょんちゃんも「すごく書きやすかった」と言っていました。

――歌詞のテーマに関しては、事前に富田さんと共有していたんですか?

麻倉:きょんちゃんが思う私をイメージして書いてもらうことだけを決めて、あとはお任せしました。最初は「レクイエムを歌ってほしい」と言われていたんですけど、個人的にはそうじゃないほうがいいかもしれないと思って。とはいえ、歌詞のなかに〈Will〉という言葉が出てくるので、ある意味ではレクイエムと受け取ることもできるかもしれませんよね。

――〈Will〉には「意志」や「決意」という意味から転じて、「遺言」という意味もありますものね。

麻倉:そうなんですよね。どなたかのコメントに「これは遺書なのか?」という声もありましたし、そう言われて「ああ、確かにそうね」と思ったりもしましたし。今まで私が歩んできた道と、これからもきっとこういう道を歩んでいくだろうっていう将来の構想も踏まえつつ、きょんちゃんのなかで「未稀さんはこの先も、こうやって生きていくんだろうな」って想像しながら書いてくださったんだろうなと、私はとらえています。そういう意味では、麻倉未稀版「My Way」みたいな曲かもしれませんね。

――このゴスペルを思わせる深みのあるボーカル含め、今の麻倉さんだからこそ表現できる、生き様がダイレクトに反映された楽曲だなと思いました。

麻倉:ありがとうございます。私的には本当に歌いやすいメロディでしたし、歌詞も歌いながらスッと入ってきましたし。そういう意味では、きょんちゃんと一緒に過ごした8年があったからこそ生まれた曲だと思いますし、この「My Soul」を経たことで「またちょっと違うものも書いてみたい」とも言ってくださっているので、この縁をまた次に繋げていけたらなと思います。

――MVも拝見しましたが、麻倉さんがレコーディングブースで歌うシーンの合間に、過去の思い出の写真がたくさんフィーチャーされていて、あらためて45年の重みが伝わってきました。

麻倉:私もあれを観て、「やっぱり45年も経ったんだな」と実感しました(笑)。40周年の時は「こんなに長く歌えると思ってなかったです」ってふわっととらえていたんですけど、45周年になった途端に急に重みが加わって。それは66歳という、現在の年齢も大きく影響しているのかもしれませんね。

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