ベスト盤リリース記念! 有識者4名で語り合う“つば男の音楽”の真髄 継承される、聴けるボーイズユニットのDNA

SMAP、つんく♂、東京事変……“音楽好き”に刺さるつば男サウンド
ーーここからは各グループや個別の楽曲についてお伺いできればと思います。まずはCUBERSから、あらためて魅力を教えてください。
高橋:僕はSMAPが1995年にリリースした『SMAP 007~Gold Singer』が大好きで。このアルバムでは1970~80年代のR&Bやソウル、ジャズ/フュージョンの屋台骨を支えてきたアメリカの凄腕ミュージシャンを起用して本格的なアーバンファンクを打ち出していますが、そこに乗る歌自体は歌詞も含めてまったく“本場”のマナーを踏襲したものではなくて、拙いながらも誠実なボーカルで当時の平均的な若者が日常生活のなかで抱くささやかな理想を歌っていました。CUBERSはそういう『SMAP 007』に象徴される90年代のSMAPが標榜した世界観の正統継承者という認識でしたね。
南波:僕も同じ印象を持っていて、完全にSMAPをロールモデルにしているグループだと思っています。インディーズの頃から曲が面白かったし、メジャーに行く時期にネームバリューのある作家と一緒にやっても音楽性を変えることなくアップデートしていって。見ていてスリリングで楽しかったですよね。メジャーデビュー曲の「メジャーボーイ」なんかは、「この音楽性でやっていくぞ!」という宣言にも聴こえましたし。CUBERSが結成された2010年代中盤は、男女問わず音楽にこだわったアイドルグループがたくさん出てきた時期で、「音楽からアイドルに入る」という人がすごく増えたタイミングだったんですよね。だから音楽をきっかけとしてCUBERSのファンになった人も多かったと思います。
ーー「メジャーボーイ」は、つんく♂さんによる楽曲提供ということも注目を集めました。
南波:メジャーデビュー曲に「メジャーボーイ」って言葉を持ってこれる人、つんく♂さんぐらいしかいないですよね(笑)。Aメロ/Bメロ/サビみたいな分かりやすいものじゃない構造もつんく♂さんらしい筆致だなと思います。あとこの時期のアイドルソングとしては、BPMが遅い感じもしたんですよね。「いかにライブ現場を盛り上げるか」ということに多くのグループも注力していた時期だったので、そこに対するカウンターとしても新鮮に響きました。振り付けも夏まゆみ先生だったので、ハロプロ(ハロー!プロジェクト)好きは聴いていたんじゃないでしょうか。最高のメジャーデビュー曲だったと思います。
ーー楽曲の幅広さもCUBERSの魅力ですが、「あたらしい生活」は本アルバムの収録曲でも珍しいミディアムバラードです。
坂井:大好きですね。等身大のCUBERSの空気をとても繊細に汲み取っている1曲だなと思っています。歌詞の内容は誰にでも通じる汎用性があるんですけど、一方でCUBERSにしか歌えない内容にもなっていて。コロナ禍のリリースだったこともあって、「前に進みたいけど進めない」という世界の状況やCUBERS自身のことを思い返しながら聴くとうるっときてしまいますし、そんな感情を何度でも反芻してしまう曲ですね。
小林:いしわたり淳治さんの作詞ということもあって、本当に真っ直ぐ歌詞の意味がメロディに乗って入ってくるし、「CUBERSはこんなこともできるんだ」って発見もありました。シンプルにめちゃくちゃ良い曲ですよね。
ーー現在のつば男メンバーと元CUBERSのTAKAさんの歌唱で新しく生まれ変わった「Samenaide」についても聞かせてください。
南波:スネア1発からサビで始まるという構成が秀逸です。あとこの曲には間奏があるんですけど、ベースソロが主役なんですよ。これって本当に音楽で勝負していないとできない選択で、CUBERSというグループの在り方をこのソロが端的に示していると感じます。「CUBERSは音楽でやっていくんだ」と高らかに宣言しているような楽曲ですね。再録ver.はアレンジはそのままでミックスが変わっていると思うんですけど、今回の方が音がパキッと前に出ている印象があって。インスト盤では、そこの違いも楽しんでほしいです。
坂井:再録ver.は今のつば男のメンバーが歌っているんですけど、歌い方やメロの乗せ方はCUBERSを踏襲していて。リスペクトが感じられてすごくいいなと思いました。〈夢で誓った君の中へ〉というフレーズをTAKAさんが歌い、そのあとのフレーズを後輩たちが引き継ぐように歌っている。フレーズだけじゃなく、つば男の夢が先輩から後輩に引き継がれていくようなイメージが湧いてきて、本当に感動しました。
ーー次は、THE SUPER FRUITについて聞かせてください。
小林:先ほどもお話しした“本人たちの個性と歌っている内容が一致している”という点が、特に強いのがスパフルだと思っています。「チグハグ」でデビューしたときも本当にチグハグな状態で出てきたし、以前、メンバーの田倉暉久さんが「かわいいコンセプトでやっていた時期は、自分のなかでしっくりきていなかった」「あるとき『こうじゃない』と思って金髪にして自分を見つけた」といった話をしていたことが印象的で。自分らしさを見つけて、自分らしく生きていくことを歌っている彼らのメッセージ性が、私のパンク心にぶっ刺さるんです。
坂井:本当にメンバー一人ひとり好きなものが違うんですよね。どんなグループもメンバーそれぞれに個性があるんですけど、はたから見るだけではなかなか見えてこない部分もあるじゃないですか。でもスパフルは、声もビジュアルも表現の仕方も一発で違いが分かるくらい個性的で。グループとして“ひとつの正解”みたいなものに向かうのではなく、それぞれが個性を発揮しているところが魅力的だなって。
ーーそんな彼らを象徴する「チグハグ」の魅力について教えてください。
坂井:ザ・代表曲ですし、楽曲のメッセージ性がやっぱり良いですよね。歌詞も読めば読むほど理解が深まってきますし、スパフルの始まりの楽曲でもあり、帰ってくる場所でもある。この曲があることで、スパフルはどこにでも行けるんじゃないかなって。
南波:2020年ごろからTikTokを中心に始まった“自己肯定”のムードとも、ぴったりはまりましたよね。彼らの個性と時代がマッチした楽曲だったんだと思います。
ーー数々の名曲があるなかで、最多得票だったのは「御伽話」でした。
高橋:THE SUPER FRUITの楽曲はCUBERSで得た収穫を土台にしながら、作り手の赴くままに音楽的冒険心を注ぎ込んだようなワクワク感がありますね。「御伽話」はその好サンプルです。東京事変を想起させる変則的なコード進行とタイトなグルーヴがとても新鮮でした。
小林:歌詞に〈一か八か 2択じゃなくて/ずっとそのちょうど間の話〉というフレーズがありますけど、音的にもビッグバンドとロックバンドのちょうど間のような絶妙なサウンドで。これに気づいたときにはハッとしました。
南波:今の時代には珍しく、トラックにお金がかかっているなと(笑)。生楽器でレコーディングされているんですけど、だからこそのゴージャスできらびやかなサウンドが素晴らしいですね。歌詞に関しては「日常と奇跡のあいだを行くことが人生である」というメッセージだと解釈しているんですけど、これって“アイドル活動”ともリンクするなと思っていて。楽器のようなイメージで歌われているボーカルも素晴らしいですし、色々な面で良くできている楽曲だと感じます。
ーーアイドルソングの名手・前山田健一(ヒャダイン)さんとのコラボとなった「どーぱみんみん あどれなりんりん」についてもお聞かせください。
坂井:ヒャダインさんの個性とスパフルの個性が、見事に重なった楽曲だと思っています。中毒性の高い歌詞とメロディはもちろん素晴らしいですし、自己肯定の流れもちゃんと汲んでいる。どんな自分でもナンバーワンだって励ましてくれる、最高のチアソングですね。
小林:私、本当にこの曲が大好きで。よく無意識に口ずさんでいるんですけど、無意識に口ずさんじゃう曲の歌詞が「自分のこと大好き」ってすごいと思って。ひとりでお風呂上がりに気づいたら歌っているような曲が、そんなメッセージを持っているなんて素晴らしいですよね。こんなにいい曲なのに、タイトルが全然意味わかんないところも好きです(笑)。



















