ONE OK ROCKがこの世界に存在する意味 未来を掴み取るために“諦めない”4人の旅=『DETOX TOUR』完結へ

 ONE OK ROCKの映像作品『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025 AT NISSAN STADIUM』が7月29日にリリースされた。この作品は、2025年8月31日に神奈川・日産スタジアムで開催されたライブを収録したもの。春に劇場公開され大きな話題となった映画『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025 AT NISSAN STADIUM IN CINEMAS』では映像化されていなかった部分も含めた、文字通りの“完全版”である。

 筆者はこの日のライブを現地で目撃していた。その記憶は1年近くが経つ今も鮮やかなままだが、今回映像を観返してみて、あらためてあのライブの凄まじさに興奮を隠せない。こういう言葉を容易く使うのはあまり好きではないが、“伝説のライブ”というのはきっとこういうものをいうのだろう。それがいったいどんなライブだったのかは、ライブレポート(※1)を読み、今回の映像作品を観て確認してほしいが、あの夜には、ONE OK ROCKというロックバンドが世界を相手に音を鳴らし歌い続ける意味、もっと言えばバンドとしてこの世界に存在している意味が間違いなく詰まっていたと思う。

Photo by 橋本塁

 ONE OK ROCKにとって11作目のアルバム『DETOX』は、2005年の結成から20年という節目に、彼らの根本的なありかたを問い直し、提示するような作品となった。居住するロサンゼルスで世界の混乱と分断を目の当たりにしたところからアルバムの構想を得たTaka(Vo)は、いざ制作を開始するにあたって、まずは40ページにもなる“バイブル”を作ったという。その内容をプロデューサーやソングライター、映像監督などあらゆるスタッフに共有するところから、『DETOX』はスタートした。今何を伝えたいのか、何を伝えるべきなのか、そしてそのテーマに対して本当に共鳴できるパートナーは誰なのか。「できること」ではなく「成し遂げたいこと」という理念と思想から出発したのがこの『DETOX』であり、だからこそ、その内容はこれまでの彼らのアルバムと比較しても圧倒的に重厚で、骨太で、迷いのないものになった。アルバムのどこを切っても、Takaが、ONE OK ROCKが、世界の現状をどう見ているのか、そこに対してどんなふうにアクションをしようとしているのか、そしてその先で世界にどんな理想を描いているのかというビジョンが溢れ出してくる。それは彼らにとっての正義の表明であり、ロックバンドという表現形態を背負った以上果たすべき使命でもあった。

ONE OK ROCK - Puppets Can't Control You [DETOX JAPAN TOUR 2025 AT NISSAN STADIUM]

 〈Even if you never win/You can’t pretend/You’ll never be happy again〉――〈たとえ決して勝てなくても/君は自分を偽れない/再び幸せになんてなれないだろう〉。日産スタジアムでも1曲目として鳴らされた「Puppets Can’t Control You」でTakaはそう歌っている。その言葉は、自らの心に従って立ち上がれとリスナーを煽っているように、筆者には聞こえる。デトックスとは“浄化”という意味だが、ONE OK ROCKの言う“浄化”とは、見かけだけをきれいにしたり、臭いものに蓋をしたりすることではない。世界で何が起きているのか、現実とはどういうものなのかを暴き立て、人々に気づかせること。そして、そこで起きている対立や争いを乗り越えていくために本当に重要なものを取り戻すことだ。そんな、あまりにも壮大で切実なテーマを、彼らは一枚のレコードに詰め込んでみせたのだ。

Taka(Vo)(Photo by 伊藤滉祐)

 それほどのアルバムを作り上げた以上、そこから始まった旅が壮絶なものになるのもまた必然だった。2025年4月、メキシコから始まった『DETOX TOUR』は、バンド史上最大のスケールで展開しながら、地球上の各地でアルバムに込めたメッセージをこれでもかと伝える圧巻のものとなった。チリ、アルゼンチン、ブラジル、ペルーをめぐり、5月には北米へ。カナダ、アメリカの各地で合計15公演を重ねたのち、8月、彼らは日本に戻ってきた。

 大分・クラサスドーム大分、神奈川・日産スタジアム、北海道・大和ハウスプレミストドーム、そして大阪・ヤンマースタジアム長居。ONE OK ROCKにとって最大規模のスタジアム/ドームツアーとなったこの日本ツアーは、全7公演での総動員数約36万人という破格のものになった。しかし、この日本ツアーはかなりタフなものでもあった。今回映像作品としてリリースされた日産スタジアム2日目、8月31日のライブ中にTakaが足を骨折したのだ。一度舞台袖に引っ込んだ彼が車椅子に乗って現れた時には驚いたが、それでもバンドはツアーを続行した。

Toru(Gt)(Photo by 伊藤滉祐)

 そんな満身創痍のONE OK ROCKを助けたのが、各公演に駆けつけたゲストたちだった。札幌公演にはAwichとNovelbright・竹中雄大、大阪公演1日目には佐藤健が率いるTENBLANK、WANIMA・KENTA、そして国内最終公演となった大阪公演2日目にはB’z・稲葉浩志とUVERworld・TAKUYA∞が登場、それぞれTakaとマイクを分け合い、歌声を響かせた。もちろん、負傷したTakaを救ったのはゲストたちだけではない。日産スタジアムで満身創痍の彼をToru(Gt)はじめメンバーたちが支える姿も、その様子を大歓声とシンガロングと拍手で後押ししたオーディエンスのエネルギーも、強烈に印象に残っている。世界と対峙し、なりふり構わず戦いを挑むONE OK ROCKの姿が多くの人を惹きつけ、『DETOX』の旅は文字通りの総力戦となっていったのだ。

 日本ツアーを終えたONE OK ROCKは、休む間もなく今度はヨーロッパに上陸。10月6日のスペイン・マドリードを皮切りに、フランス、イギリス、ベルギー、オランダ、ドイツ、ポーランド、チェコ、ハンガリーと、西欧〜中欧をぐるりと巡る。そして、年が明けた2026年2月からはアジア/オーストラリアツアー。途中の香港と上海でのライブが中止となるという事態に直面するなか、5月のインドネシア・ジャカルタ公演までを駆け抜けた。なかでも、彼らが以前から何度も足を運んできた台湾では、台北ドームで2日間にわたる公演を開催。同会場で日本のアーティストがライブを行うのは史上初めて。すでに高雄でスタジアムライブを成功させていた彼らだが、2日間合計で6万6000人という動員規模は、長きにわたるONE OK ROCK海外挑戦の歴史においてもエポックとなった。

Ryota(Ba)(Photo by 橋本塁)

 全49都市54公演、累計動員数は66万人以上。日本国内での動員数が先述の通り36万人であることを踏まえると、それと同じくらいのオーディエンスが、世界中でONE OK ROCKを待っていたことになる。筆者は台北公演も観に行ったのだが、当然ながら客席は現地のファンで埋め尽くされ、巨大な会場の周辺はライブが始まる遥か前から熱気に包まれていた。その大観衆を前に英語はもちろん、日本語でも丁寧に話すTakaの姿は、「音楽は国境を越える」という通りいっぺんの決まり文句にリアルな説得力を与えるに十分なものだった。長いツアーの道のりは決して平坦なものではなかったどころか、肉体的にも精神的にも試練の連続のようなものだったはずだ。特にTakaにとっては。だが、ONE OK ROCKはそれを乗り越えた。8月31日の日産スタジアム、最後の最後にTakaが発した言葉が去来する。「あなたたちが諦めないから、僕らも諦めない。信じてください、自分を」――。ONE OK ROCKは諦めなかった。そのアティテュードこそが、『DETOX』というアルバムに込められた、最も重要なメッセージだったからだ。

 『DETOX』に描かれるのは、一貫してディストピア的な世界観だ。ツアーのオープニングでも、ウイルスやテクノロジーによって人間が思考や心を奪われていく様が寓話のように語られていた。そんな世界にあって、人と人とをつなげるものとは何か。それは“知らない”ということを知ることであり、他者を“許す”ということであり、自分と異なる考えや立場が存在することを“認める”ことだ――日産スタジアムのステージで、Takaは『DETOX』に込めた“裏テーマ”をそう口にした。台北ドームでも彼は「どんな時でも音楽でつながっていることが大事なんだ」と訴えていた。

Tomoya(Dr)(Photo by ヤマダマサヒロ)

 考えてみれば、Taka自ら「政治的」と公言するアルバムのツアーでありながら、ステージ上でもそれ以外でも、彼らが直接に政治的なステイトメントを発することはなかった。それは彼らが奥ゆかしいからでも、ましてや臆病だからでもない。ロックバンドである以上、鳴らされる音と歌われる言葉がすべてだからだ。彼らが日本人として、日本のバンドとして、地球規模で見れば極めてユニークでマイナーな日本語という言語で歌い、語りかけること、そしてそのまま世界に打って出ること自体がデトックスへの道であり、ONE OK ROCKからのメッセージだった。それが彼らが20年かけてたどってきた挑戦の歴史に対する回答だったのだ。

 世界中を巡ってきた『DETOX TOUR』は、8月から始まる『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR FINAL 2026』で完結を迎える。しかし、それはアルバムから始まった物語の“結論”ではないだろう。彼らが『DETOX』をリリースしてから1年半、最悪なことに世界はますます混迷を極め、分断と対立はますます激化しているように見える。それはつまり、ONE OK ROCKの戦いはまだまだ終わらないということだ。思い描く未来を掴み取るために、“諦めない”彼らの旅はこれからも続いていく。

※1:https://realsound.jp/2025/09/post-2157609.html

■リリース情報
Live Blu-ray & DVD『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025 AT NISSAN STADIUM』
発売中

販売URL:https://oor.lnk.to/DETOX_DVDBD

・Blu-ray:QYXL-90007/7,920円(税込)
・DVD:QYBL-90008/6,820円(税込)

<収録内容>
01.Puppets Can’t Control You
02. Save Yourself
03. Make It Out Alive
04. Cry out
05. NASTY
06. Living Dolls
07. Party’s Over
08. Tiny Pieces
09. This Can’t Be Us
10. All Mine
11. Renegades
12. C.U.R.I.O.S.I.T.Y.
13. One by One
14. The Beginning
15. Delusion:All
16. Dystopia
17. Tropical Therapy
18. The Pilot</3
19. Stand Out Fit In
20. +Matter
21. We are

・2025年8月31日に行われた日産スタジアムでのライブを収録
・ライブフォト、メンバーインタビュー、Ryota、Emil Öhlund、Junji Kumaharaのインタビュー&撮り下ろしフォト、『DETOX』デザインラフスケッチ、などを含む100ページの豪華ブックレット封入

■ツアー情報
『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR FINAL 2026』
2026年8月11日(火)愛知・IGアリーナ
2026年8月12日(水)愛知・IGアリーナ
2026年8月18日(火)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年8月19日(水)福岡・マリンメッセ福岡A館
2026年8月25日(火)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年8月26日(水)宮城・宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
2026年9月5日(土)千葉・ZOZOマリンスタジアム
2026年9月6日(日)千葉・ZOZOマリンスタジアム

ツアー特設サイト:https://oneokrock-pf.com/feature/detoxjapantourfinal

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