歌声分析 Vol.19:Ms.OOJA ジャンルを横断する大衆性と普遍性 感情を“適温”に保つ表現力と引き算の美学
カバー曲から最新曲まで、新境地を見せる軽快なアプローチ
次に、泰葉のカバー「フライディ・チャイナタウン」(2022年)について。オリジナルでは、歌い出しから子音のアタックを強めにしてパンチのある歌唱が印象付けていた。一方Ms.OOJAは、歌い出しの〈It’s So〉の“So”の母音に、最初のインパクトをつけている。ここで光るのは、彼女の言葉の繋ぎ方だ。リズムで切らずに少し流すように繋いでいく歌い方をすることで楽曲の持つインパクトを踏襲しながらも、そこに対照的な柔らかさを加えている。歌謡曲としての湿度を保ちながらも、湿っぽさを感じさせないのは、やはりMs.OOJAの真骨頂と言っていい。感情を足し算しない歌唱で、まさに楽曲を適温にしている。その引き算が、洗練へと繋がっているのも確かだ。
そして「True」(2023年)では、Ms.OOJAのルーツであるR&Bが前面へ出てくる。近年のオルタナティブR&Bにも通じるミニマルで空間を活かしたトラックの中で、彼女はビートを追いかけるのではなく、サウンドレイヤーの最前列に声を置き、楽曲の繊細なリズムに豊かなグルーヴを加えている。R&Bシンガーらしいリズム感を持ちながら、日本語の響きを損なわない発音も印象的だ。この曲で彼女は、発声や母音のニュアンスで声音を使い分けるような歌唱を見せるが、どの瞬間も歌声の軸がまったくブレない。息継ぎをする瞬間さえ軸が一定で、ボーカリストとしての凄みを感じる。
最後に、最新曲「ハッピー&ラッキー」(2026年)。ボサノバを取り入れた軽快なサウンドであり、Ms.OOJAはこれまであまり見られなかった、実年齢より幼さを感じさせる可憐な歌声をあえて選択している。新境地と言っていいだろう。口笛の音も印象的なサウンドの中で、明るい中低音はこれまで以上に心地よく響いてくる。曲調に合わせ、これまで以上に力を抜いて歌うアプローチを採用したことで、持ち前の声質の明るさや言葉の響かせ方の美しさが際立っている。
Ms.OOJAが歌い続けてたどり着いた境地は、歌声そのものに“大衆性”と“普遍性”を宿したことだ。明るさを帯びた声質、多彩なスキル、そして感情の温度を適温に保つ表現の取捨選択。そのすべてを、曲ごとに最適なバランスで紡いでいく。だからこそMs.OOJAの歌声は時代やジャンルを超え、ふとした瞬間に触れたくなる音楽として、私たちの生活に溶け込んでいるのである。
※1:https://realsound.jp/2026/05/post-2407195.html


























