原因は自分にある。「俺たちはライブに命をかけてる」 輪廻の先で見つけた生き方の答え、『仮ノ現』のすべて
会場に入ると、浮遊感のあるサウンドがたゆたう。ここは最先端AIを使って原因は自分にある。の7人が創り上げた仮想空間「GEN」(GNJB Extended Noosphere)だ――。
兵庫と東京で全6公演が行われた原因は自分にある。のアリーナツアー『ARENA TOUR 2026 仮ノ現』。同ツアーよりファイナル公演となった7月5日夜の部、有明アリーナでのライブ模様をレポートしていく。
この世界を構築するシステムが流れ出すと、場内に「原因は自分にある。」のイントロへ滑り込んだ。同時に、ステージの下から王座に座った大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人の7人がゆっくりと姿を現す。レースのブラウスにナポレオンジャケットを重ねた高貴な出で立ちで椅子に深く腰掛け、7年前にリリースしたデビュー曲を余裕たっぷりに歌い上げる。笑顔を見せたかと思えば、次の瞬間にはシニカルに笑う。彼らの代名詞とも言える表情管理は、今日も一分の隙もない。それでいて、“あの頃”よりもたしかに厚みを増した歌声が有明アリーナに響き渡る。
続いて2ndシングル「嗜好に関する世論調査」、同シングルのカップリング曲「Joy to the world」を選曲。この仮想空間GENは原因は自分にある。の7人の「世界は完璧だった。僕たちはもっと良くできると思っていた。手を伸ばせば変えられる。願えば応えてくれる。その反応が嬉しかった。だから何度も世界を書き換えた」という思いから作られたもの。つまり、デビュー曲、そして2ndシングルでライブの幕を開けたことは、このGENという世界でもう一度原因は自分にある。を始動させる宣言というわけだ。
ジャジーなピアノの旋律がセンターステージに進んだ7人を優しく包み込む。小泉にスポットライトが当たると、デビューシングルのカップリング曲「ラベンダー」へ。7人はピアノアレンジされた同曲を、7人はマイクスタンドの前でしっとりと歌い上げる。息を呑むように見つめる観測者(ファンの呼称)。ビジョンには当時の初々しい姿が映し出され、7年という時間が7人にもたらした変化をいくつもの角度から浮かび上がらせた。
大倉が「まだまだ上がれんだろ!」と焚き付けると一瞬で空気が変わった。同じくデビューシングルのカップリング曲「ギミギミラブ」だ。ステージには火柱が上がり、7人はその勢いに負けじと、大きな笑顔やキュートなポーズを見せて沸かせていく。額装された演出のなかで届けられた「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」では、メンバー同士が戯れ合う愛くるしい姿が閉じ込められる。なかでも武藤が杢代の頬にキスをすると、客席は割れんばかりの歓声に包まれた。
ビジョンには、7人がシステムを操作する姿が映し出される。そしてプログラムの文字がステージにも降り注ぐような演出に誘われて視線はステージに。すると、ダンサーを引き連れたメンバーの姿が。混乱を誘いながら〈破壊と再生 何回も繰り返して〉〈寝ても覚めない夢を見て〉と歌う「in the Fate」、ラップを畳み掛ける「Paradox Re:Write」と昨年リリースのアルバム『核心触発イノベーション』収録曲が続けて放たれる。大倉の「見せつけてやれ!」の声からは、7人がデジタルチューン「余白のための瘡蓋狂想曲」のアレンジインストに乗せてソロでダンスパフォーマンス。序盤に見せていたあどけなさとはまったく違う顔で、またひとつ観測者を魅了していった。
息をつく間もなく9曲を駆け抜けたところで、MCへ。この日のライブはU-NEXTでも配信されており、7人は会場の観測者だけでなく、画面の向こうの観測者にも語りかけていく。カメラに映った桜木の頬を杢代がぎゅっと挟んで見せると客席が沸き、武藤が「ありがたいね」とつぶやく。すると今度は長野が武藤の頬をつまみ、大倉が「ありがたいね」と重ねる。そんな他愛のないやりとりからは彼らの自由さと仲のよさが溢れ、あたたかな空気が場内を満たしていった。
「1週間後は何があると思いますか?」との前振りから、バンドが「Happy Birthday to You」を奏で始める。7月12日に誕生日を迎える吉澤への祝福だ。バースデーケーキが運ばれてくると、場内はあっという間に紫一色に染まる。驚いた顔のままセンターステージへ進み出た吉澤は、「会場が紫色に染まっているのがうれしい。今年も頑張りたいと思います」と、喜びを噛みしめるように伝えた。一方でひとり、浮かない顔をしているメンバーが。7月16日生まれの長野だ。昨年の『ARENA LIVE 2025 序破急』では、吉澤の誕生日当日がライブと重なり盛大に祝われた一方、数日後にあった長野の誕生日(7月16日)は素通りされてしまったというのだ。あの時の不満を思い出した長野は、今年も同じ流れをたどりかけていることに隠しきれない不機嫌を滲ませながら「逆に気持ちいい」と苦笑い。その瞬間、大倉が吉澤の誕生日を彩るスクリーンを指差し、「後ろをご覧ください」と一言。すると、そのスクリーンが開き、長野の誕生日を祝う文字と長野のバースデーケーキが現れたのだ。客席のペンライトは一瞬で青一色に塗り変わり、長野は大喜びで投げキッス。さらにステージからは青色の銀テープが噴射され、これでもかというくらいの祝福を受けた長野は屈託のない笑顔でセンターステージへ向かう。「22歳は“にゃんにゃんの年”だった」と振り返りながら、「猫耳が取れてお兄さんになります。成長して、胸を張って立てるように、ちゃんとした大人になろうと思います」と23歳の抱負を語った。
祝福の余韻をそのまま燃料に変えるように、ライブは新曲「火宴」で再開。ご機嫌な長野のボーカルが火をつけると、間髪入れずに「疾走」へ。観測者のコールをエンジンにさらに熱量を上げ、休む間もなく「ケイカクドヲリ」に雪崩れ込む。大倉と杢代が顔を突き合わせるようにラップを畳みかけるなど、7人のアグレッシブさは加速する一方だった。
するとここで、システムにエラーが発生。「ERROR:01 SOLUTION FAILURE」という無機質な文字がモニターに浮かび上がると、場内の空気は一瞬で張り詰める。白い衣装に身を包んだ7人は〈荒れ果てたシステム 嘲笑うストーリー〉と歌う「パラノイドランデブー」で混乱した世界を描き出す。しなやかなダンスと端正なビジュアルが、緊迫感をより際立たせていく。大倉が「俺たちが最高のグループ、原因は自分にある。だ!」と叫んだ「因果応報アンチノミー」では、舌打ちやコロコロ変わる表情などで原因は自分にある。らしさは全開だ。
曲が終わり、一瞬の暗転。再び明転すると、そこにはメンバーカラーのスタジャンにぬいぐるみがいくつもあしらわれたキュートな衣装に着替えた7人がいた。先ほどまでの緊迫感を微塵も感じさせない愛らしい表情でトロッコに乗り込み、「推論的に宇宙人」「トレモロ」「GOD 釈迦にHip-Hop」を届けていった。
舞台は夜のバーへと姿を変える。黒のジャケットに着替えたメンバーは、ステッキを手に「愛無常」、ビリヤードに興じながら「美しい人」、妖艶な振り付けで魅せる「フィナーレ」をメドレーで聴かせていく。そんな余裕たっぷりの表情も束の間、再びプログラムが作動した。センターステージには細い糸を張り巡らせたような照明が浮かび上がり、そのなかに囲われた7人が「Mania」で狂気を纏う。シリアスな緊張、愛らしい笑顔、艶やかなステージング、そして狂気……めまぐるしく表情を変えていくその姿は、まぎれもなく、原因は自分にある。の7人が積み重ねてきた実力と努力そのものだ。
自身のアバターと決別するような映像を挟み、場内は「303」からカウントダウンがスタート。何か切迫したことが起きるのかと身構えたところに待っていたのは、拍子抜けするほど和やかなMCだった。長野が「ヤバい、楽しすぎる。もう今日誕生日にしようかな」と声を弾ませ、「配信先でも盛り上がってほしい」というくだりから杢代が「日本中を騒がせる男たちになろうぜ」と言えば、桜木が「日本を超えて世界っしょ」とスケールアップさせる。「美しい人」でのビリヤードの出来を振り返る場面では、メンバーをボールやキュー、ポケットに見立てて説明するなど、ここにもまた小さな原因は自分にある。ワールドが広がっていくのだった。カウントダウンがゼロになると同時にMCは幕を閉じ、7人はステージから姿を消す。
場内に、緊迫感を帯びたストリングスの音色が響き渡る。ビジョンには、自分たちが作った仮想空間を見つめる7人の姿。そして視線をステージに戻すと、再び白い衣装に戻った7人の姿が。まるで世界を取り戻そうとするように、〈何度だって信じたっていいんじゃない!〉と「ニヒリズムプリズム」を歌い上げる。桜木は「急に、晴れたね」のセリフを、最終公演にかけて「また、会おうね」に変えて、再会を約束した。ここからはラストスパート。ひときわ激しいバンドサウンドが焚き付ける「遊戯的反逆ノススメ」では大倉が「俺たちはライブに命をかけてる」と叫び、メンバーも高いジャンプを決めたり、大きく体を振りかぶったりと、まさに全身全霊でステージを駆け巡る。「Museum:0」ではファイヤーボールが上がり、ひときわ熱量を持った“美術館”となった。
生バンドや多数のダンサー、システム演出など、目を惹く演出とともに届けられてきた『仮ノ現』。ただし、「貴方らしく」だけは違った。鍵盤の音に乗せたメンバーのまっすぐな歌声、歌詞だけが映し出されたビジョン、飾り気を削ぎ落としたシンプルな演出。メンバー同士で肩を組んで花道を進んだり、向き合って歌ったり、そこには飾ることのない、大倉空人、小泉光咲、桜木雅哉、長野凌大、武藤潤、杢代和人、吉澤要人の7人がいた。
歌い終えると、長野が「僕たちは僕たちらしく、あなたと僕たちで、僕たちらしく、あなたも生きていきましょう」と純粋な言葉を紡ぎ、7人は手を繋いでお辞儀。最後に「ネバーエンドロール」とともにツアーのエンドロールを流した。そして7人はステージに鎮座する『仮ノ現』という文字を後ろへと、姿を消した。メンバーが去ったあとのビジョンには「NEXT SCENE」の文字が浮かび上がり、11月11日にニューシングルがリリースされることが発表された。
『仮ノ現』とは、「現世は仮のものである」という考えを表す仏教用語だという。3月から4月にかけて全国のホールをまわった『輪廻の箱庭』というツアーで、原因は自分にある。は命が芽吹いてから還るまでの記憶をたどるような舞台を作り上げてきた。そうしてたどり着いた先が、この『仮ノ現』だったというわけだ。そこで彼らが歌ったのは、〈美しい世界で らしく生きていこう〉(「貴方らしく」)というメッセージである。そこが誰かの手によって作られた仮想空間でも、現世という仮のものでも、美しい世界に変えて、自分らしく生きていけばいい――。それが原因は自分にある。からのメッセージであり、7人自身の宣言でもあるのだろう。