歌声分析 Vol.18:UNISON SQUARE GARDEN 斎藤宏介 軽やかなグルーヴ、完璧なピッチとリズム感 卓越した技術を紐解く
歌声分析
アーティストの魅力を語るうえで、楽曲だけでなく“歌声”そのものに宿る個性にフォーカスする連載「歌声分析」。声をひとつの“楽器”として捉え、音楽表現にどのような輪郭を与えているのかを掘り下げていく本連載では、技術的な視点からさまざまなアーティストの歌声を紐解いていく。
第18回目は、斎藤宏介を取り上げたい。
高音でも力まない透明感、疾走感を支えるタイトなリズム
7月15日、千葉·幕張メッセ国際展示場で開催される『UNISON SQUARE GARDEN LIVE 2026「Sentimental Period」』をもって、UNISON SQUARE GARDENは現体制での活動を終了し、活動休止期間へ入る。2004年に結成され、2008年にメジャーデビューして以降、シーンの第一線を走り続けてきた彼らだが、そのライブを初めて観た人は、おそらく斎藤宏介(Vo/Gt)の歌声に驚きを覚えるだろう。レンジにかかわらず密度が変わらない声が、一音一音の輪郭を保ったまま会場の最後方までまっすぐ伸びていく。その響きは、しなやかなまま空間を満たすのだ。
斎藤宏介の歌声を特徴づける要素は、大きく三つある。
一つ目は、情報量の多いメロディを再現できる能力だ。UNISON SQUARE GARDENの楽曲は音符の数が多く、転調も複雑で、メロディの高低差も激しい。それでも難曲として聴こえないのは、斎藤が狙った音程へまっすぐ着地することができるからだ。多くのボーカリストは音程へ入るまでにわずかな助走があるが、斎藤にはそれがほとんどない。声を出した瞬間にピッチが定まり、言葉の輪郭まで完成しているのだ。だから、どれだけ早口言葉になっても、言葉が埋もれず、複雑なメロディを軽やかに聴かせることができるのだろう。
二つ目は、タイトでありながらしなやかな起伏を描く歌唱アプローチ。リズムに対してほぼ音符どおりに音を置いていくが、淡々とリズムを刻んでいるような堅苦しい印象を受けない。音程と言葉の両方を滑らかに繋ぐのが本当に上手いのだ。このスキルが、一音一音を軽やかにバウンドさせるような推進力を生み、UNISON SQUARE GARDEN特有の疾走感を支えている。
三つ目は、高音でも力みを感じさせないこと。斎藤は、柔らかなミックスボイスを軸に、無理なくトップトーンを維持する。ハイトーンでも、耳に刺さらない透明感を宿した声を響かせる。高音域が続いても緊張感より開放感が勝り、聴き手は曲の難しさではなく、口ずさめるような心地よさを先に感じるはずだ。
では、斎藤の歌声の魅力について、楽曲をピックアップしながら、改めて紐解いていきたい。
映画『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』の主題歌となった「harmonized finale」(2014年)で印象的なのは、言葉と言葉、もっと細かく言えば、一音と一音の間に隙間がほとんど感じさせないことだ。たとえば、サビの〈harmonized finale 星座になる〉の部分の〈finale〉の“le”=“れ”と〈星座〉の“せ”の繋ぎ。“れ”の語尾の母音の響きを最後まで保ったまま、“せ”の子音へ受け渡している。だからフレーズは途切れることなく一本の線を描きながらも、一音一音の輪郭は鮮明に浮かび上がる。この“線”と“点”を同時に成立させる歌唱こそ、斎藤宏介の真骨頂と言っていいだろう。
TVアニメ『血界戦線』(MBS/TOKYO MXほか)エンディングテーマとして大きな話題を呼び、「シュガーソングとビターステップ」(2015年)は、UNISON SQUARE GARDENの代表曲とも呼べる一曲だ。難曲でありながら、その難しさより楽しさが先に伝わる彼ららしさが溢れており、リリースから10年以上を経た今でも、世代を超えて歌われ続ける理由がそこにある。
本曲で斎藤は〈rambling coaster揺さぶられながら〉の部分にあるような、子音を起点にリズムを弾ませるような歌唱を随所で見せている。母音でなく子音を発声した段階から跳ねさせるところに、斎藤ならではのスキルを見出せる。また、彼の声質は、少し甘さもありながら、その甘さがくどくならない。鼻にかかったような響きではなく、クリアな音色を保っているため、UNISON SQUARE GARDENの楽曲の軸になる軽やかな疾走感を最後まで失わないのだ。