EBiDANはなぜ人々の心を掴んだのか? Webメディア「QuizKnock」の元編集者山森彩加氏と考える全力な人を応援したくなる心理

EBiDANはなぜ人々の心を掴んだのか?

前から続けていた“準備”が結実し現在へ

――他にEBiDANのグループやファンについて、こういう面白さがあるなと分析していることはありますか?

EBiDAN「前略、道の上より」MV

山森:ここ3年くらいで、グループ単体じゃなくてEBiDANが好きな人がすごく増えたなと思っていて。EBiDANは合同ライブである『EBiDAN THE LIVE』を毎年やっているんですけど、2023年からそれがガラッと変わったんです。23年に「ソイヤプロジェクト」という、一世風靡セピアのカバーをEBiDAN全体でやっていて。そのプロジェクトの一環で、ファン投票でユニットを作るみたいな企画があったんですよね。高身長ユニットとか目がいい人たちとか、兄弟ユニットとか西日本ユニットとか、韓国好きユニットとか。それまでの『EBiDAN THE LIVE』はそれぞれのグループのパフォーマンスの時間があって、その合間に例えばM!LKの楽曲をM!LK以外のグループのメンバーでパフォーマンスするみたいな時間が少しあったくらいだったんですけど、2023年以降はグループの垣根を越えたユニットを作ってパフォーマンスをする時間がかなり増えたんですよね。「EBiDANに所属しているグループの合同フェス」から、「EBiDANのライブ」みたいな印象に変わったんです。2024年にはEBiDANとしての冠番組が始まったりしたので、一つのグループを好きになった人が他のグループにアクセスするきっかけがすごく増えてたと思っていて。EBiDAN全体のファンになる流れみたいなのができたような感じがあります。

――世の中的にはここ1、2年のブームのような気がしますけど、実はその前くらいからEBiDAN全体として下地ができていたような気もします。

山森:そうなんですよね。ソイヤプロジェクトで音楽番組とかバラエティに出たり、レコード大賞の企画賞を取ったりして、EBiDANという肩書きでテレビに出ることが増えたんです。雑誌でもEBiDAN特集があったりして、EBiDANとしての露出がすごく増えていったことが今に繋がっていると思います。他にも、超特急のタクヤさん主演のドラマ主題歌がICExだったり、M!LKの山中さん主演のドラマ主題歌がSakurashimejiだったり、推しとは別のグループの楽曲でも、自然に耳に入ってくるような環境ができているんですよね。今M!LKとか超特急にアクセスした人が、簡単にEBiDANに行きやすい下地はもう出来上がってたことが、ちょうど今のM!LKの波と相性がすごく良くて。準備バッチリだったなと思います。

EBiDAN、夢に向かって全力な姿勢が人々を惹きつける?

――EBiDANが持つ“全力さ”も人々を惹きつけているように感じます。なぜそこまで熱中できるのだと考えていますか?

山森:これは自分がそうというだけなんですけど、自分のためだけに頑張るのって結構難しいと思っていて。例えば一人暮らしの家の片付けをするのって、自分にしか関係ないからいくらでもサボれちゃうじゃないですか。自分の部屋が綺麗になって嬉しいのって自分だけだし。でも会社とか学校とかを綺麗にするのって、自分のためでもあるけどみんなのためでもある。みんなが嬉しくなることの方が、総合的な幸福度が高いなって私は思っちゃうんです。だから私、家めちゃめちゃ汚いんですよ(笑)。自分のためだけに頑張れないんですよ、私は。なんかいいなって思うアイテムがあったら、あの人に似合いそうだなとか、あの人にプレゼントしたらいいなとか思うんですけど、自分のために買うにはちょっと高いなとか思ったりする。そういう心理があると思っていて。

 自分がライブに行ったりCDを買ったりするのにお金や時間を使うのって、自分一人のためだけじゃないんですよ。もちろん自分もすごく楽しいけど、そこに行くことによって推しが喜ぶっていう前提があるから、自分の満足のためだけにやってるんじゃないっていうことが行動のしやすさにつながるのかなと。

 だからCDを買ったりするときも、「これは私のためのように思えて超特急のためのお金だし、私がコツコツ働いて稼いだお金が超特急の財産になる」とか思えるんですよね。自分のためだけにやるより、誰かのために行動する方が、人って動きやすいんじゃないかなって思うんですよね。もちろんそういう人が全てではないんですけど、割と大多数の人ってそうなんじゃないかなって思っていて。そういうところが夢を掲げている人を応援したくなる一つの理由かなとは思います。

――そういったファンとしての経験が仕事に活きることやモチベーションになることはありますか?

山森:自分は生産者の顔が見えるものが好きなんです。この人はこういう思いでこのイベントを作ってるんだなとか、盛り上げようと頑張ってるなとか、そういう作り手の熱い思いが伝わってくるものがすごく好きで。書店に丁寧に書かれたポップがあるとか。そういうのって、EBiDANが夢を大きい声で言うとか、MCでアツい思いをぶつけてくれるところに通ずるものがあるなと思うんです。私は自分がものを作る根底として、自分が作ったものに触れた人の視野が広がって、外を歩いているだけでも楽しく思えるような知識を身につけたりできればいいなと思っているんです。電柱一本見ても楽しいと思えるような人にみんながなれば、幸福度がめちゃくちゃ上がるんじゃないかなと。そういう思いを作り手がまっすぐ伝えてくれるものに人は惹かれやすいと思っているので、そういうものを自分が作ろうという意思はすごくあります。

――では、EBiDANの何が人々を引きつけていると思いますか?

山森:先ほども言ったように、全力なところが一つの理由だと思っていて。EBiDANメンバーって誰も「一人で売れよう」としていなくて、「自分が売れることでグループに還元しよう」とか「グループが売れることでEBiDANに還元しよう」「アイドル界、音楽界を盛り上げよう」「世界中を元気にしよう」みたいなスケールの大きい気持ちを持っているように感じていて。その思いがちょうどいま見つかり始めているんじゃないかなと思いますね。最近だと、私がEBiDAN好きっていうのを方々で言っているので、「最近M!LK興味あるんだよね」みたいなことを本当にいろんなところから言っていただくんです。何がきっかけなのかを聞くと、彼らが色々な番組に出ていたからという人ももちろんいるんですけど、年末『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)のあとに渋谷から赤坂まで走って『CDTV』(TBS系)に向かうとか、さらにその後『ニノなのに』(TBS系)で自転車で横浜まで初日の出を見に行くとか、そういうのを見て気になった人が多いみたいで。その全力さは各グループにあるなと思います。つい応援したくなっちゃうエネルギーを感じますね。

【祝】「NHK紅白歌合戦」M!LK初出場決定の瞬間!

 あとは夢を掲げているというのも大きいと思います。自分の力で推しの夢を叶えたいとか、推しにもっといい景色を見せてあげたいみたいな気持ちがある人って多いと思うんです。そこで、どこを目指せばいいのか、何を目標にして応援すればいいのかが分かるというのは応援する第一歩になりやすいんじゃないかなと思っていて。YouTubeで話題になっていた動画で、M!LKに『紅白』出場の発表をする瞬間の動画があるんですけど、そういう動画を見て「この人たちって本当に紅白出たかったんだ」とか、「こんなに頑張ってきて今やっと夢を叶えたんだ」というのがダイレクトに伝わると感動しちゃうし。そんな純粋な子たちを次はドームツアーに連れてってあげようみたいな気持ちになれるんじゃないかなと思っていますね。そういうのがどのグループにもあるんじゃないかと思います。

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