DAZBEEが考える、日本語を知る楽しさ 韓国における歌い手・ボカロの音楽文化としての広がりも明かす

DAZBEEが追求する「日本語での表現」

ーー「声の在り処」は、ご自身で作詞に挑戦された作品でしたよね。

DAZBEE:それまで韓国語での作詞も未経験でしたから、日本語での作詞にあたってとにかく知っている日本語の単語を全部書き出して……本当に大変だった記憶があります。でも、それこそ昨日のステージで「声の在り処」を歌いながら、そういった大変な思い出や辛い記憶も含めて幸せな気持ちになったというか。そんな不思議な感覚を感じていました。

ーー通常、外国語で作詞をしようとした際、一度自分の扱いやすい母国語で元の詞を書いてから変換する、というやり方もあると思うんです。ですが最初から日本語での作詞に挑戦したり、これまでのお話の内容からも、DAZBEEさんがものすごく「日本語での表現」にこだわっている気がしまして。

DAZBEE:学べば学ぶほど、日本語って本当に面白いなって思うんです。例えば、私が少し前に星野源さんの「恋」の歌ってみた動画を投稿した時に、〈似た顔も虚構にも〉という歌詞のところにコメントでご意見をいただいたんですよ。〈虚構〉という言葉のイントネーション、発音が少し違うというか……。韓国語では言葉を伸ばす音、長音があまり言葉の意味に影響しないので、 そのご意見にいい意味ですごくショックを受けたんです。伸ばす音が違うだけで、日本語ってそんなに意味が変わってしまうんだ、って。でも、そういった点をコメントで教えていただけてすごく勉強になりました。やっぱり日本語って面白いなと感じましたし、もっと上手くなりたいなって。

ーー同じ言葉でもイントネーションや長音の位置が少し変わるだけで、日本語は意味がまったく変わりますもんね。

DAZBEE:日本語って、本当に繊細な言葉だと思いますね。同じ意味の言葉でも言い回しが変わるだけで温度感が全然変わりますし、あとは余白で感情を伝えるような表現も多いですよね。だからこそすごく難しいですが、その曖昧さや繊細さが歌になるとより美しくなると思うので。そういうところが、日本語を知る楽しさに繋がっています。

ーーちなみに、直近で「これは難しかったな」「挑戦したな」と思った曲はありましたか?

DAZBEE:キタニタツヤさんの「ずうっといっしょ!」でしょうか。自分的にもとても早口の曲だったので、流れるように自然に発音する事をものすごく意識して録音しました。〈あんな歌の言いなりになっていたくないの〉のところが本当に難しかったです。スムーズに歌いたいんですけど、何回も噛んでしまって……かなりリテイクしました。

ーー先ほど「声の在り処」のお話も少しありましたが、自身の曲とカバー曲、それぞれを歌う際に意識や気持ちの差などもあったりするんでしょうか。

DAZBEE:カバー曲はまず、大前提に原曲へのリスペクトがあります。その上で、どう自分の持つ感情を曲に乗せるかを考えますね。オリジナルは逆に、自分の内側から生まれた感情を直接形にできるので……より裸に近い感覚があります。自分を曝け出すのは少し恥ずかしい気持ちもありますが、やっぱり楽しいです。歌いながら「ここにもっとインパクトを入れたいな」と考えたり、そういう試行錯誤にも楽しさがある気がします。

ーー今後挑戦してみたいことや、活動の中での抱負などもあればぜひ教えてください。

DAZBEE:最近はオリジナル曲や作品としての世界観づくりにも力を入れているので、音楽だけじゃなく、映像やストーリーも含めて作品体験として楽しめるものを今後は作っていきたいですね。

ーー具体的に、こんな世界観のものに挑戦したいというアイデアもありますか。

DAZBEE:よりファンタジーな世界観の作品作りには一度チャレンジしてみたいですね。ヴァンパイアのモチーフとか。改めて思い返すと昨日のステージもそうだったんですが、今までのライブでは白を基調とした衣装を着ることが多くて。黒を基調としたものや、ダークな雰囲気の衣装や作品作りにも今後挑戦してみたいですね。

韓国でも歌い手やボカロを知っている人はかなり増えた

ーーちなみに、DAZBEEさんの歌い手時代とメジャーデビュー以降を比べると、VOCALOIDや歌い手といったインターネットカルチャーを取り巻く環境も大きく変化しました。日本では文化自体がかなりメジャーになった体感もありますが、DAZBEEさんが暮らす韓国ではいかがでしょうか。

DAZBEE:昔は韓国でも好きな人だけが深く知っているものという印象でしたが、今は配信サービスやSNSのおかげで、本当に世界へ自然に届くようになったと思います。韓国でも、歌い手やボカロを知っている人はかなり増えましたね。以前よりも特別なサブカルチャーではなく、一つの音楽文化として広がっている感覚はあります。特にここ1~2年は、それをすごく感じることも多いですね。最近はTikTokでも、いろんなチャレンジ動画に日本の音楽が使われていますし。

ーー直近で特に、韓国現地で流行っている日本の音楽はありますか? ネットカルチャー以外のものでも、もしあれば教えていただきたいです。

DAZBEE:少し前にCUTIE STREETさんが韓国の音楽番組に出ていて、「かわいいだけじゃだめですか?」を韓国語で歌っていましたね。最近本当に人気の高いイメージがあります。あと、今一番ホットなのはやっぱりサカナクションさんの「夜の踊り子」でしょうか。あれもInstagramでかなり見かけるので、そうやって広がる楽曲が韓国でも増えた印象はあります。

ーー流行の発端になった動画を投稿したのも韓国のユーザーでしたもんね。ちなみに、DAZBEEさんが個人的に今注目している曲やアーティストさんはいますか?

DAZBEE:楽音(ささね)さんの「mosi mosi?」は最近かなり聴いていますね。あとはヨルシカさん。元々好きだったんですが、最近出された『二人称』というアルバムが本当に素晴らしくてずっと聴いています。新曲の「あぶく」はMVも素敵で、とても衝撃を受けました。元々ボーカルのsuisさんの歌は本当に素晴らしいと思っていたのですが、繊細さや表現力、ボーカルテクニックがさらに磨かれているように感じて。聴いていて勉強になります。

mosi mosi? (楽音) /ダズビー COVER
千鳥 (ヨルシカ) /ダズビー COVER

ーー同じように歌を歌うからこそ気づく、suisさんのすごさを実感されているんですね。

DAZBEE:ヨルシカさんは韓国でもすごく人気で、ライブはもちろんですが、少し前に公式イベントでファンの方が集まれる企画も開催されていたんですよ。ソウルのカフェで、ヨルシカさんをテーマにした展示コラボが行われていて。

ーー韓国でもそういった、日本のアーティストとのコラボショップやポップアップ的なイベントはよく開催されているんですか?

DAZBEE:結構ありますよ。日本のアーティストに限らず、K-POPアイドルや俳優さんの誕生日を飲食店でお祝いする「誕生日カフェ」というイベントも韓国ではよく行われています。いろんなコンテンツや有名人のファンが、リアルに集まって楽しむ文化がかなり盛んな気がしますね。

ーー本来K-POPなどの韓国カルチャー内で楽しまれていた文化が、今はインターネットカルチャーを始めとした日本のコンテンツの中でも広がっている気がします。駅などに掲示されるVTuberやアイドルの応援広告も、元は韓国の文化ですしね。

DAZBEE:韓国でも日本の音楽やカルチャーがそうやって楽しまれているのは、私もすごく嬉しいです。あとは最近だと、サカナクションさんが韓国語の字幕をつけた動画を作ってくださっていて、それも本当に嬉しかったことのひとつですね。今までは全部自分で歌詞の意味を調べないといけなかったので、公式動画で韓国語の字幕がついているとすごく特別感があるというか。

ーー日本のアーティスト側も、そういった海外リスナーを受け入れる細かな体制の充実が求められているタイミングなんだと思います。そういった点に注力することでまだまだ裾野も広がるでしょうし、DAZBEEさんのように海外を拠点にしながら日本の音楽を発信するアーティストさんが増えると、きっともっと面白くなりそうです。

DAZBEE:そうですね。YouTubeの外国語字幕などがより当たり前になることで、日本の音楽はまだまだこれから海外にたくさん広がっていくと思いますよ。

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