Lucy、突出した個性が鳴らす最新のロックンロールで圧倒 20年ぶりのツアー最終公演で迎えた幸福感に満ちたステージ

 今井寿(Gt/Vo)、Kiyoshi(Gt/Vo)、岡崎達成(Dr/Vo)の3人が組んだバンドLucyが20年ぶりに新作『ROCKAROLLICA III』を発表、さらに全国8カ所9公演を回ったツアーは、東京・EX THEATER ROPPONGIで最高のフィナーレを迎えた。

 言うまでもないが、今井はBUCK∞TICKのほかSCHAFT、SCHWEINで活動、Kiyoshiはhide with Spread Beaver、machine、MADBEAVERSのメンバーだ。そして岡崎はM-AGEとAGE of PUNKの一員であり、さまざまな場で活躍している。Lucy結成以前から親交のあった3人が酒の席でバンドを組もうと意気投合し動き出したのが2004年。1stアルバム『ROCKAROLLICA』をリリースしツアーも行った。その2年後に2作目を出しツアーをして以来ほとんど動きがなかったのだが今年に入り活動再開、この盛り上がりになったと言うわけだ。ちなみに、バンド名はKiyoshiの提案で漫画『多重人格探偵サイコ』の登場人物、ルーシー・モノストーンに由来する。この作画を手がけている田島昭宇が最新作のジャケットのイラストを担当、そのイラストはこのステージのバックドロップにも使われていた。

 ドリス・デイの「Que sera sera」が流れる中、サングラスに黒で揃えたコスチュームの3人に加えサポートベーシスト・リウ、Kiyoshiが「コンピューター」と呼ぶマニピュレーター・横山和俊がステージに登場すると、満杯のフロアは一気に温度があがった。オープニングは最新アルバムの1曲目「PUNK THE LUCY」。今井が「六本木、ここからだ、Lucy Show!」と声をかけ、Kiyoshiが「Lucy Showへようこそ! いつも通り踊って歌って叫んで騒いでロックンロールしよう!」と呼びかけるとオーディエンスは大きな歓声で応えた。

今井寿(Gt/Vo)
Kiyoshi(Gt/Vo)
岡崎達成(Dr/Vo)

 Lucyのキーワードは“ロケン”。軽快なステップを誘うロックンロールナンバーもあれば、ヘヴィなビートで腰を揺らすロックンロールもある。これでもかというぐらいストレートなロックンロールをぶつけてくる彼らだが、それぞれがパンクからオルタナティブロックにポストロックと、変遷し進化してきたロックの最先端を常に走ってきていることを思うと、このシンプルさは意外なほどに小気味いい。それは決して原点回帰ではなく、今の彼らというフィルターを通したロックンロールという新しい音楽になっているからだ。さらに彼らならではのユーモアや風刺もさりげなく加えられている。そうした曲を百戦錬磨の面々が歌い演奏するのだ。楽しくないわけがない。

 今井が歌い出したかと思えばKiyoshiがギターを鳴らし、Kiyoshiが歌を受け継ぎ今井のギターが遊び出す。しかも曲によって持ち替えるギターは二人とも同じ機種で、今井がレフティだからギターを構えた姿は綺麗なシンメトリーになる。視覚効果も考えて遊び心を発揮する彼らのステージングは秀逸だ。同じ機種のギターでも二人の個性がくっきりと音やフレーズに現れるのも面白い。ギタリストの中でも突出した個性を発揮する二人ならではの妙味に、思わず引き込まれるというものだ。Lucyの代名詞とも言える通称“棺桶”と呼ばれる白黒2種類のギターにフライングVと、次々にギターを持ち替えながら二人は弾きまくり、それぞれの腕を見せつけるものだから、ロックンロールの一言で片付けられない曲になる。弾き語り風に今井が歌い出した「月光ブギ」はロマンチックなミッドバラードになり、「Black hole widow」は今井のフリーキーなギターソロがダークなサイケデリアを描き出す。最新作でも中盤の句読点的なインストナンバー「Halo」から「ヒツジの夢」への流れは、ゆったりとしたテンポの中に緊張感も漂う不思議な空気感を生んでいた。曲の終わりでKiyoshiが「ヒツジの夢、宇宙のギター、今井寿」とコールすると大きな拍手が送られた。

 後半に向けてはダンサブルな曲で攻めてきた。Kiyoshiの歌う「I so heavy」から今井がメインで歌う「BULLETS-Shooting Super Star-」に繋ぎ、今井が「ディスコだ、行くぜギロッポン!」と呼びかけて「GAGA DISCO」へ。これは22年前の1stアルバムの曲だが、これをギロッポンで聴くことができるとは! さらに今井は「踊ろうぜ六本木!」と「かっちゃんコーリング」に突入。ブギのビートを日本語のリズム感で解釈した新手の和洋折衷ナンバーに思わずステップを踏みたくなる。そしてカントリーフレイバーの「犬とカウボーイ」からLucyの最新テーマ曲とも言える「ROCK THE LUCY SHOW」で思い切り盛り上げて、Kiyoshiは「あー楽しい、お前ら最高、東京最高六本木最高EX最高!」と笑顔を見せた。

 Lucy流ロックンロールをこれでもかと畳み掛けた本編に続き、アンコールではもう一つのLucyの顔というべきものも見せてくれた。今井が「もうちょっとやるから、たっぷり楽しんでくれ、エンジョイ!」と言い、3回に及んだアンコールは何と9曲を演奏。スピード感たっぷりの「Hey!」やこのバンドの起点とも言える「Rolling Lucy」とともに、2ndで取り上げていた「バリウム・ピルス」をはじめ今井が敬愛するルースターズナンバーに、ロッカーズの「可愛いアノ娘」や岡崎が歌ったシーナ&ロケッツの「レモンティー」など、めんたいロック勢の曲をカバー。これらの曲もLucyにとっては重要なロックンロールであることを示しているように思えた。

 全ての曲を演奏し終えて、5人が一言ずつ挨拶。ベースのリウは「夢のような時間をありがとう!」と喜びを語り、マニピュレーターの横山は「ツアー最高でした、本当にみんな最高、ありがとう!」と手を振った。岡崎は「めちゃ最高“今日はいい日だ”!」と歌詞を引用し、今井は「すげー気持ちよかった、最高ギロッポン、また会おうぜ!ギターKiyoshi」とバトンを渡した。最後を締めたKiyoshiは「最高の曲作って最高のアルバム作って、こんなに盛り上がってくれて、ありがとう。個人的には、今井くんにいっぱいギターを弾いてもらいたかったんだ、今回は。それが叶ったから感無量です」と語った。

 ステージから彼らの幸せな空気感が流れてきているようだった。このライブの模様はLive Blu-ray & DVD『Lucy Show 003 〜Shout, Speed, Shake Your Rockarollica〜』として9月30日にリリースされることが発表された。

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