ミーマイナーが鳴らす“自由”と“弱さ” メジャー1st EP『部屋とガラクタと私』に刻まれた4人の居場所

メジャー1st EP『部屋とガラクタと私』は「人生最期の曲でもいいクオリティ」
――1st EP『部屋とガラクタと私』が5月13日にリリースされました。完成してみていかがですか。
美咲:最高傑作だなと。自信を持って世に送り出したいなと思っています。どの曲をとっても、人生最期の曲でもいいと思えるクオリティ。大好きです。
さすけ:右に同じく。
葵:本当に右に同じく。
わたさん:墓場まで持っていきたいEPになりましたね。
――メジャーデビュー作として、ミーマイナーの名刺代わりになる作品ですよね。
美咲:そうですね。ミーマイナーのいろんな面が入っていると思います。私は“個人的であること”を大事にして曲を書いているんですけど、自分だけの話のはずなのに、誰かにとっても大事なものになる瞬間があると思っていて。今回のEPには、そういう曲がちゃんと入ったなと思います。
さすけ:失恋ソングを中心とした切ない楽曲と、バンドで音を鳴らすことに対する瑞々しい初期衝動。その両方が入っている作品だと思います。あと、作家がふたりいるのも大きいですね。美咲の曲と僕の曲で、見えている景色は違うけど、ミーマイナーとして鳴らした時にちゃんと同じ世界になる。それが面白いと思います。
――「部屋とガラクタと私」は、どんなきっかけから生まれましたか。
美咲:感情も部屋もグチャグチャで、自分ひとりでは片付けすらできないほど心が荒れていた実体験が元になっています。Bメロの〈私の心は足の踏み場がない〉と歌っているんですけど、“あの人がいたから保てていた自分”というテーマは、ミーマイナーがずっと描き続けてきたもの。今回の曲も、そういう部分をテーマに書きました。
――ギターもエモいですよね。
わたさん:ありがとうございます。この曲は不安定な音とか、ごちゃごちゃっとした音を入れるのが合うなと思いながら、ギターを入れていきました。部屋の散らかっている感じとか、心が整理できない感じが音でも出たらいいなと思いました。
群像劇のBGMとしての「レモンガール」
――「レモンガール」は、歌詞の言語化の才能がとんでもないですよね。どんなきっかけから生まれたのでしょうか。
さすけ:僕は歌詞で天下を取りたいって、2022年から宣言していて。とはいえ、「いい歌詞を書きたい」って想いだけで書く歌詞に、あまり魅力を感じないんです。衝動が先走っているあとに文才がついてくるという構図が美しいと思っているので、この曲も初期衝動の部分は大事にしています。
きっかけはふたつあって。ひとつは、江口寿史さんというイラストレーターさんの、レモンを齧って「酸っぱい」と言っている女の子のイラストを見たこと。それを見た時に、「そういえば学生時代もレモンを齧ってるやついたな」と思って。その仕草がすごくキャッチーだなって、頭にずっとあったんです。もうひとつは、東京の都会に住んでいて、いろんな居酒屋で学生や社会人の男女が酔っぱらって道路で寝ていたりもするんですけど、そういう青春の群像劇みたいなもののBGMになる曲があったらいいなと思って作った曲ですね。
――葵さん、ドラムでの“疾走感”の表現はいかがでしたか?
葵:ライブでも結構やっているんですけど、キメが多い曲なのでそこでリズムが途切れることがないように、楽曲の疾走感を残せるように意識して演奏しています。この明るくて切ない感じはミーマイナーの好きなところなので、そのまま活かせるように。ライブで聴いてもその気持ちがお客さんに伝わるように叩いています。
――歌詞の世界観について、美咲さんはさすけさんといろいろ話されましたか?
美咲:さすけさんの曲に関しては細かくディレクションしてもらうので、「ここはこういうふうに歌ってほしい」と教えてもらいながら、その都度いろんなパターンを試していきました。私は「レモンガール」みたいな刹那的な青春を人生で一度も経験したことがなくて、居酒屋の雰囲気とか、こういう界隈を知らないんですよね。お酒を飲まなくて、打ち上げとかもあまり行ったことがないので。なので、想像で、もうちょっと歪んだ声のほうがいいのかな、とか相談しながらやらせてもらいました。
歌詞だけで何カ月も書いては直してを繰り返した「純文学」
――「純文学」もすごく練られた構成で。歌詞がまたとても素晴らしいです。
さすけ:めちゃくちゃ嬉しいです。ベースもギターもピアノもドラムも、自分ひとりで完パケした、このEPでは個人制作曲です。歌詞だけで何カ月も書いては直してを繰り返して、時間をとにかくかけて丁寧に作った曲になっています。
――美咲さんは、この楽曲を歌うにあたってどんな感情になっていきましたか?
美咲:もともとボカロの曲なので、人が歌えるはずのない難易度。とにかく難しかったです。レコーディングの時も、いつもだったらブースでディレクションしてもらうんですけど、隣にずっといてもらいました。ボイトレをしながらやるくらいの勢いで録った曲で、それくらい苦戦しながらやりました。でも、隣にいてもらったからこそこの温度感でディレクションも受けられたし、自分の知らなかった歌い方や感情を引き出してもらえた曲だと思っています。
「サンドウィッチ」に宿る、生活の細部から立ち上がる喪失
――「サンドウィッチ」は、どんなきっかけから?
美咲:私、めっちゃ偏食で野菜が食べられないんです。なので、サンドウィッチをひとりで食べられなくて。野菜を好きだった人と一緒にいた時に、その人が野菜を食べてくれていたので、サンドウィッチを食べられていたんですけど……その人がいなくなった時に、「私って、もうサンドウィッチも食べられないんだ」と思ったことがあって。その衝撃から書きました。
――葵さんはこの楽曲について、いかがですか?
葵:私が一番好きなのは〈私はあなたしかいなかった〉というロングトーンの部分です。最初に弾き語りで聴かせてもらった時に、「ここがサビなんだ」と思ったんですよね。そのあとに〈サンドウィッチも〉ってサビがきて、「ここサビじゃないんだ」と思うくらい印象に残るセクションで。ここに美咲ちゃんのすべてが詰まっているなと思っています。ドラムとしては、邪魔しないように。より歌がよく聴こえたらいいな、くらいの感じで演奏させてもらいました。
「君の言う通りだった」“あなたの正解”で生きてきた私の反撃
――「君の言う通りだった」は、ミーマイナーとしてもひとつの軸になりそうな曲ですよね。どのようにして生まれたのでしょうか。
美咲:私は人との境界線というか、距離感を保つのが苦手なタイプで。「その人が私の世界の中心です」みたいになっちゃうんです。そういう人がかつていたんですけど、その人が「黒髪がいい」って言っていたから、私は人生でまだ一回も髪を染めたことがないし、その人の“正解”で生きてきたんですよね。だから「さよなら」って言われた時も、その人の正解が「さよなら」なんだったら、そうするべきなんだと思った。でも、「それはやっぱり違う」ということを歌った曲です。それだけは違うと思う、って。私は、ふたりでいることがすべてだと思っていた、という感情を曲にしました。
わたさん:この歌詞を一番に届けたいという思いがあったので、言葉が際立つようなフレーズを考えました。それと同時に、この曲はノリがいい曲でもあるので、そのスピード感も大切にしたいなと思いながらギターを弾きました。
さすけ:具体と抽象のコントラストや、タイトルのフックに対する最後の一行の〈君は何にも分かっちゃいないよ〉という裏切り。文学的に素晴らしいクオリティが、たまたまなのか計算なのか出せているという……すごい奇跡的な歌詞だなと思っていて。これはもう、圧巻でしたね。神が降りてきたな、と思ったことを覚えています。この具体と抽象のバランスは、俺もここには到達できないんじゃないかっていうものがありますね。
美咲:嬉しい。最高の褒め言葉です。



















