「叩いて音が出ればなんでも面白い」 THE SPELLBOUND、Dos Monos……大井一彌が追求する“電子音楽×生演奏”の可能性

大井一彌が追求する“電子音楽×生演奏”

「音楽のことを考えずにはいられない病に侵されている」

――Dos Monosのライブのセッティングだと、上手側に置かれたバスドラが存在感を放ってますよね。

大井:THE SPELLBOUNDは帯域的に上の方に情報量が必要で、ハイハットとかライドとか、パルスが緻密に分割されていくような方向性の楽器選びがあるんですけど、Dos Monosはもっと重心が下がるから、低周波を出す楽器により特徴とか分類が欲しくなるようなグルーヴをしてるんです。なので、今やろうとしてるのは、足元に置いてあるキックとは別にもう1個小っちゃいキックを置いて、それをツインペダルで踏み分けて、さらに右側にめちゃくちゃでかいキックを置く。パッドだけのキックも使うから、4種類のキックのムードを使い分けられたらいいなと思って。アーティストの個性が楽器にも表れてくるんですよね。

――Dos Monosの音楽はいろんなジャンルが混ざっていて、ハードコアもあればジャズもあるけど、やはりヒップホップであり、ダンスミュージック的な要素もあるから、低音域が大事になりますよね。

大井:Dos Monosは音楽ジャンルみたいなものを飛び越えすぎちゃっていて、その目まぐるしさについていかないといけない。僕が目指してるプレイヤー像は、ドラマーというよりパーカッショニストなんですよ。ドラムセットが体系化された楽器群の総称だとすると、それだけをやってるのは飽きちゃう。僕は、パーカッションの一環として電子ドラムを叩いたりもするし、面白いものならなんでも叩きたい。最近買ったいちばん新しい楽器は、200リットルのドラム缶です(笑)。叩いて音が出ればなんでも面白い。Dos Monosはそういうマインドもしっくりくるんですよね。そのうち要塞みたいになっているかもしれない。

――Dos Monosのライブではマニピュレーターも兼ねてるんですよね。

大井:はい。一応バンマスとしてやらせてもらっています。コードとか音階に関しては松丸が指南してくれるんですけど、僕は基本的には全ての楽曲のパラメーターを管理する。マニピ兼ドラマーでやらせてもらってます。

――そういう意味でも、もう今のDos Monosには欠かせないメンバーですよね。

大井:そう思ってもらえると嬉しいですけど、でもフルバンドじゃないセットもそれはそれですごく魅力的なんですよ。Dos Monosの3人だけでトラックを出して、オーセンティックなラップミュージックのスタイルでやる場合もあるし、THE SPELLBOUNDにしても、完全に2人だけでやるセットもあって、それも最高なんです。サポートメンバーがいない状況の彼らの音楽も素晴らしくて、じゃあ自分だからこそ作り出せる美しい状況はなんだろうと、より深く考えるようにもなりました。

大井一彌

――そんな2バンドが『BIG LOVE』で対バンするわけですけど、両方に参加している大井くんから見て、2組の共通点はどんな部分だと思いますか?

大井:THE SPELLBOUNDにしろ、Dos Monosにしろ、全員が音楽のことを考えずにはいられない病に侵されている、深く音楽に蝕まれてる人たちだなと思いますね。ときにはちょっとゾッとするぐらい。音楽にかけているものがめちゃくちゃでかい人たちなんです。そうではない人もたくさんいて、もっと音楽と戯れてるような人でも、それはそれで魅力的な表現者はたくさんいるけど、THE SPELLBOUNDとDos Monosに関して言えば、しゃかりきに音楽に没頭するような人たちで、僕はそういう人がすごく好きだから、居心地がいいなと思う現場です。

――きっと大井くん自身もしゃかりきに音楽に没頭するような人だからこそ、居心地がよいのかなと。

大井:そうだと思います。彼ら2組の共通点で言うと、大音量というものの美しさの捉え方が近いのかもしれない。でかい音を出すって、音楽においてかっこよくなる要素のひとつですけど、一口に「でかい音」と言っても、どのように音がでかいのかはいろいろあるわけですよね。THE SPELLBOUNDとDos Monosは、でかい音で精神が高ぶる。その仕組みのあり方、高揚感の得方が似てるというか、同じ神経が反応するような感じがする。だから繋がりが生まれるんじゃないかなと思います。

――最後に大井くん自身のことをもう少し聞かせてもらうと、3月にNNULL(MONJOEとのユニット)のライブがあって。かなり久々でしたよね?

大井:2年ぶりですね。あのライブは僕とMONJOEのいい意味でのお遊びなんですけど、友達の映像作家から「NNULLで作品の音楽作ってもらえたら嬉しい」みたいなことを言われたりして。やってれば何かが生まれていくし、動くことが燃料を生んでいくんだなと強く思いました。だから今年はNNULLももっとやりたいし、yahyelもやりたいし、僕はやりたいことまみれなんですよね。ひとりで考えて音楽を作ることももっとやってみたいですし。

大井一彌

――ソロを作るとしたら、なんとなくの構想はあったりするんですか?

大井:たとえば、10人に声をかけて10曲作るとか。誰かとの共作で作る音楽を極めてみたい気持ちもあるし、完全にひとりで閉じこもって作れる音楽も研究してみたい。僕の趣味としては、ニューエイジ音楽みたいなことをやりたいのかもしれないです。“ヒーリングミュージック”とかって、これまでバカにされてきた側面もあると思うんですけど、癒しはすごく強烈な毒にもなり得ると感じていて。イージーリスニングではなくて、言葉の本来の意味に沿ったヒーリングミュージックをやってみたいなって。

――“ニューエイジ”も少し前まではちょっとバカにされていたかもしれないけど、今はリバイバルを経て、ちゃんと音楽として評価されていますもんね。

大井:概念だけ抽出した宗教音楽みたいなものもやってみたいですね。打突音って、人間の陶酔を生むために作られてるんですよ。古来では、原始の人間が動物の皮を張って、太鼓にして叩いていて。そういったものが今僕がやってる生業の祖になっているから。やっぱりドラムは、人間を鼓舞したり、陶酔感を生んだり、意識に何か衝撃を与えるような楽器だと思う。その打突音とか打楽器とか、そういうものが精神にもたらす効果を研究していくと、やっぱり宗教っていうテーマに行き着く気もするんです。

 父方の祖父の家が仏教徒で、法事に行くとハイハットみたいな楽器をジャリジャリやってたり、木魚も太鼓みたいだし。前にDATSのメンバーと川崎大師に行ったときも、火をバンバン焚きまくって、太鼓をガンガン鳴らしていて、「これトランスじゃん」と思ったりして。意識的に変革をもたらす仕組みがあると思う。音を使って、人の精神を揺さぶる、影響を与えるような行いに僕はすごく関心があるので、そういったことにアプローチしてみたいなと思ってますね。

――さっきのTHE SPELLBOUNDとDos Monosの共通点の話とも近いかも。どっちのバンドもただ音がでかいだけじゃなくて、陶酔感やトランス感を強く感じる。特にTHE SPELLBOUNはそうで、圧倒的で、宗教音楽を聴いてるような感覚にもなる。それは今話してくれた大井くんの根本にある部分ともリンクしてるんだろうなって。

大井:そうだと思います。僕はもとからそういう音楽が好きだったんですよね。yahyelもそういう自分の特性というか、心の奥底にある趣味嗜好と合致していたから、楽しくやってきたんだなと思う。ブルガリアンボイスとか、イスラム系のクワイアとか、そういうのも家で親が聴いていて、好きなんですよね。

――じゃあ、いずれは大井くんのソロ作品を聴ける日がくるのかもしれない。

大井:やっていきたいですね。自分の表現したい音楽を表現するために、この世にいるんだなと思うし、ミュージシャンとして活動しているからには、最高に楽しく遊ばないともったいない。これからも自分がやりたいと思うことを、ずっとやっていきたいです。

※1:https://realsound.jp/2020/03/post-531100.html
※2:https://realsound.jp/tech/2019/12/post-460314.html

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