超難読バンド・ผ้าอ้อม99999「未来から見たら教典になるかも」 結成、ルーツ、ミームへの偏愛が生む“Junk Pop”を語る

ผ้าอ้อม99999が語るミームへの偏愛

“うんち”を議題に語り明かした3時間

――新ボーカルのカプリチョザさんは、どういう経緯で加入したんですか。

アブラ:彼は大学の仲間でも何でもなく謎の存在で、気づいたら入っていた感じです。前のボーカルは同じサークルの仲間だったんですけど、彼が脱退して、謎のボーカルとして入ったんです。去年の8月に正式加入して、まだ1年も経っていないくらいですね。

――CORE-TEXさんが留学しているあいだに、顔も合わせていない状態で加入したそうですね。

CORE-TEX:帰ってきたらいました。でも、めちゃめちゃいい感じになってた。

――ドラムの石山さんのルーツももう少し教えてもらえますか?

アブラ:インターネットやミームがめちゃめちゃ好きで、2ちゃんねるの野球スレとか、ずっとそういう話で盛り上がっていたから誘いました。音楽的にはHiatus Kaiyoteとかフライング・ロータスが好きですね。

――メンバー全員で、共通して好きな音楽でいうと?

アブラ:バンドを始める前に、DALLJUB STEP CLUBとかgatoとかのライブを、たまたまそれぞれで観に行っていたことはありました。(会場に)石山さんもCORE-TEXもいて。趣味が合う部分はあるんじゃないかと思います。

【MV】DALLJUB STEP CLUB『Future Step』
gato - ××(check,check) [Music Video]

――バンドのテーマを指し示す“Junk Pop”という言葉は、いつ頃から使い始めたんですか?

アブラ:カプリチョザが加入したくらいからだと思います。アルバムを作るにあたって、そのためのテーマやジャンルを打ち出したいな、と。それまで“カオスサンプリングダンスミュージックバンド”という名乗り方はしていたんですけど、もっといい表現があるはずだと思って。

――どういう考えからその言葉が出てきたんですか。

アブラ:最初はジャンルを決めるというより、僕らの「ミームやインターネットの断片を全部肯定的に取り込んで“ポップ”としてまとめよう」という態度を一言で表したい、という感じで。ジャンルっぽい名前でもあるし、“Junk Pop”を名乗るようになってから、ストーリーというかコンセプトも考えていきました。たとえば、今の時代から見たらどうでもいい内容でも、古典文学として残っているものがあるじゃないですか。「冬はつとめて」(『枕草子』)みたいに。それと同じで、今のどうでもいいミームも、未来から見たら教典になっていたりするかもしれない。だったら、文脈なく取り込んで、どんどん作品にしていったら面白いんじゃないかという考えで、テーマにすることになりました。

ผ้าอ้อม99999 - CAPTCHA (Official Music Video)

――「肯定的に取り込む」というのは、ある種、ミームがポジティブに捉えられない側面もあるからなんでしょうか。

アブラ:そうですね。ミームって、まだカルチャーとして認められていないと思っていて。最近で言うとイタリアンブレインロットとか、映画やドラマと比べたらあまりにも雑に扱われていると感じています。ラッパーが安直にミームをサンプリングしたり、歌詞に入れたりすると「しょぼい」みたいに思われることもあって。でも、僕らはもうそういう態度はやめて、どんどん取り込んで作品にしていこうという感じです。

――メンバー全員、インターネットカルチャーが根っこにある?

CORE-TEX:全員あると思います。みんな、家のパソコンを何千時間も見てきたような人たちなので。

アブラ:狙って集めたわけではないんですけど、仲のいい人がそういう人ばかりでした。サークルも、ちょっと隅っこにいるようなサークルだったので(笑)。

――CORE-TEXさんは、インターネットでどんなカルチャーを見ていたんでしょう。

CORE-TEX:2ちゃんのまとめサイトやニコニコ動画をずっと観たりとか、家でひとりでずっとパソコンを触っているような幼少期で。

アブラ:僕は今の新しいネットも好きだし、昔のコピペとか2ちゃんの古いスレを遡るのも好きで。おもしろフラッシュとか。今も昔も両方好きです。

アブラ(Ba/machine)
アブラ(Ba/machine)

――2010年代前半に、ヴェイパーウェイヴとかインターネットを取り込んでアウトプットするカルチャーがありましたが、ネットが完全に一般化した今、こういうバンドが出てきたというのが、すごく新鮮に感じるんですよね。

アブラ:ありがとうございます。バンド内でも、本当にインターネットカルチャーが共通言語というか、音楽以上に共通しているかもしれないです。

――楽曲制作のフローを教えてもらえますか。

アブラ:僕がパソコンでデモを作って、スタジオでアレンジを練って、みたいな流れです。僕と石山が作曲して、スタジオに持っていって、というのをずっとやっています。

――作詞はカプリチョザさんが担当しているんですか?

アブラ:今はそうですね。最初の頃は僕が書いていて。ミームを入れないと行間が埋まらないみたいなところはありました。

――そうしたミームの選定だったりは、メンバーでしっかりやるんですか。

アブラ:めちゃめちゃ厳しくやります。「これは伝わらなすぎる」とか「さすがに俺らだけが楽しいだけになっちゃう」みたいな話し合いは真面目にしていて。「うんち」って言葉を使うかどうかで揉めて、夜中に3時間くらい話し合ったこともありました(笑)。

――あはははは! アブラさんは「ハードオフ」でバイトしていたということで、機材オタクでもあると思うんですけど、ライブではNintendo Switchも使ったりしているとのことで。どういう音が出るんですか。

アブラ:なかにKORGが出しているDAWのゲームソフトが入っていて。アンビエントの音とか、雨の音が鳴るシンセとか、人の声が鳴るシンセとか、飾り付けの上モノの音を出すのに使っています。ちなみにSwitchだけは定価で買いました。品薄の時に。

――CORE-TEXさんはマシンを触っていた時期、どんなことを意識していましたか?

CORE-TEX:私は機材のことを何も理解せずに、アブラさんが「ここのボタンを押して」みたいに教えてくれる感じで。でも、ベースになってからも変なシンセの音を出したりしているので、やっていること自体はあまり変わらないかもしれないです。

CORE-TEX(Ba/machine)
CORE-TEX(Ba/machine)

――ビートについても聞きたいのですが、ジュークや南アフリカのダンスミュージックであるゴムなど、トライバルなリズムが多いような印象を受けます。ここにはどういう意図が?

アブラ:トライバルなビートが多いのは、シンプルに好きだからだと思います。シャンユーさんとか、めちゃめちゃ好きで。音作りについては、3000円くらいのヘッドホンで全部やっているので、その影響が出ているかもしれないです。

――ミックスはIllicit Tsuboiさんにお願いしているんですよね。

アブラ:Dos Monosや長谷川白紙さんのミックスもやられていると知って、頑張ってお願いしました。僕たちはバンドという編成をとっているんですけど、普通のバンドのミックスだと僕らの持ち味が出ないというか。普通の音にまとまっちゃうかなと思っていたので、攻めたミックスをやっている人を探すなかで、Tsuboiさんの名前が挙がりました。

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