バッド・バニー初来日公演を完全レポート 地元を愛してやまない世界の友人が証明した、“音楽は言葉の壁を超える”ということ
最初から最後まで貫かれていた、「プエルトリコと東京を繋ぐ」という想い
数多くのヒット曲で彩られたバッド・バニーの歴史を祝うために用意された、今回の『Billions Club Live』。その最後に選ばれたのは、「今のバッド・バニー」を最も象徴する楽曲である「DtMF」だった。
最後の瞬間を前に、バッド・バニーは改めてこの場に集まった一人ひとりに向けて語りかける。
「Aprovecho que estoy aquí con ustedes para también decirle lo que le digo a todo el mundo que veo. No pierdan su tiempo en lo negativo. No pierdan su tiempo haciéndole caso a comentarios de personas que no te conocen. Sé tú mismo, sin importar lo que digan los demás.
No desperdicies tu tiempo guardando rencor ni odiando por cosas que ya pasaron. No podemos cambiar el pasado. We can't change the past. We can learn from it, right?
And we don't know what's gonna happen tomorrow. What we can do is enjoy the present. Now this.
No es casualidad que estemos aquí. Y yo quiero que si tienes a una persona que quieres mucho al lado, dile lo mucho que lo amas, lo mucho que lo quieres.
(ここにいるみんなに、僕が出会うすべての人に言っていることを伝えたい。ネガティブなことに時間を費やさないで。あなたの知らない誰かの意見を聞いて、時間を無駄にするのをやめて。誰が何と言おうと、自分らしくいればいい。
過ぎ去った出来事に恨みや憎しみを抱いて、時間を無駄にするのをやめよう。過去を変えることはできないから。でも、そこから学ぶことはできる。そうだよね?
明日、いったい何が起こるか、僕たちにはわからない。今できるのは、この瞬間を楽しむこと。今、この時を。
僕たちがここにいるのは偶然じゃない。もし、あなたのそばに大切な人がいるなら、その人に、どれほど愛しているか、どれほど大切に思っているかを伝えてほしい)」
そう語ると、バッド・バニーは観客一人ひとりにカメラを下げて、特別で親密な瞬間を分かち合うように促した。愛で満ちた会場に響いた「DtMF」、その言葉では言い表せないほどにポジティブな景色は、一人ひとりの心の中に刻まれたのだった。
フロアが一体となって全員で大合唱した〈Debí tirar más fotos〉(写真を撮っておけばよかった)というフレーズは、アルバムのタイトルになっていることからも分かるように、今のバッド・バニーが抱え、伝えたい想いが凝縮されたものだ。「写真を撮っておけばよかった」というのは、かつて愛した人への想いを投影したものであると同時に、過去への郷愁を象徴している。それは、自らが愛してやまないプエルトリコの文化や景色が「さらに消えていってしまう」ことへの危機感の現れでもあるように思う(ちょうど同日、アメリカのトランプ大統領は、ラテンアメリカとカリブ諸国の首脳陣を前に「I’m not learning your damn language. I don’t have time.」(あんたたちの言葉なんて覚える気はないね。そんな暇はないんだよ)と発言したことで物議を呼んでいた)。
最後の大団円を写真に収めることはできなかった。だが、いつか「写真に撮っておけばよかった」と思う日が来ることがないように、また会えることを願って、日々を生きるのである。
ライブを終えると、クロージングDJがその熱狂を引き継ぐかのようにエネルギッシュな選曲で、なかなか帰りたがらない観客を踊らせていた。最初にプレイされたのは、2004年にリリースされた現代レゲトンのクラシックとして名高いダディー・ヤンキー「Gasolina」。次に繋いだのは、言わずとしれたTeriyaki Boyz「TOKYO DRIFT」だった。最初から最後まで貫かれていた、「プエルトリコと東京を繋ぐ」というバッド・バニーの想いは、ライブが終わってからも止まることはなかった。
......さて、本来ならばここでライブレポートを終わらせても良いのだが、冒頭で書いたように、今回の来日公演はあくまで招待制で行われたものであり、控え目に言ってもすべてのファンにとってオープンなものではなかった。今回のライブが、あくまで限られた人々のために用意された特別な公演だったということは強調しておくべきだろう。
だからこそ、本稿を書いている。これはライブレポートなので詳しくは書かないが、「DtMF」が海を越えた日本で歌われ、大合唱が巻き起こる光景は、恐らくは今の筆者がもっとも観ることを切望していた光景だった。もちろん大好きな曲であることは前提だが、それ以上に、(まさに彼が語ったように)これまでにないほどネガティブなエネルギーに蝕まれ続ける日々を生きるなかで、バッド・バニーが放つエネルギーが大きな癒やしとなったからである。そして、これは間違いなく、筆者だけではなく、もっと多くの人々に届くべきものだ。だからこそ、再びの来日公演が早いうちに実現する日が来ることを切に願っている。
もし、バッド・バニーの音楽を聴いたことがないという人がいたら、ぜひ聴いてほしい。YouTubeにアップされているハーフタイムショーには彼の魅力が凝縮されているし、最初に聴くなら最新作の『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』がオススメだ。
今回の公演には収録用のカメラが入っていたのだが、ステージ全景を捉える正面のカメラには、プエルトリコの旗が掲げられていた。つまり、バッド・バニーは常に地元の象徴を見つめながら、その前でパフォーマンスを繰り広げていたということになる。そう、彼はどこまでも地元を愛してやまない、世界の友人なのだ。
■セットリスト
1.EoO
2.Me Porto Bonito
3.No Me Conoce - Remix
4.Efecto
5.Neverita
6.Si Veo a Tu Mamá
7.Tití Me Preguntó
8.Safaera(Feat. Jowell and Randy)
9.Ojitos Lindos
10.La Canción
11.DÁKITI
12.Yonaguni
13.Callaita
14.MIA - Salsa Version
15.BAILE INoLVIDABLE
16.NUEVAYoL
17.DtMF