なぜ木村ミサはKAWAII LAB.を成功に導けた? 『情熱大陸』出演、アイドル戦国時代を体験した“新世代プロデューサー”の哲学

 2月15日放送の『情熱大陸』(MBS/TBS系)に、KAWAII LAB.総合プロデューサーの木村ミサが出演した。

 今、KAWAII LAB.はFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」、CANDY TUNEの「倍倍FIGHT!」、CUTIE STREETの「かわいいだけじゃだめですか?」といった楽曲が広がり、ふだんアイドルを追っていない人でも、曲名やサビの一部を耳にしたことがある状況になっている。SNSでダンスや音源の切り抜きが流れてきて、気づけば知っている。そんな形で入口が増えた結果、KAWAII LAB.という名前そのものも、少しずつ日常のなかに入り込んできた。

 もちろん、人気の理由は挙げようと思えばいくらでも挙げられる。耳に残るメロディ、覚えやすい言葉、画面映えする振付や衣装、SNSで拡散しやすい見せ方。だが、そこまでの“仕掛け”だけでは説明し切れない何かがある。

木村ミサの“魅力を引き出す”という意識

 放送をきっかけに初めてKAWAII LAB.へ辿り着いた人も、楽曲の広がりを追いかけるなかで関心を深めてきた人も、『情熱大陸』を観れば、これまで別々に見えていたヒットの理由が一本につながって見えてくるはずだ。何を基準に動き、何を守り、どこで決断しているのか。その積み重ねが、いまの広がりを支えている。木村の仕事は、単にヒット曲を作ることではない。複数のグループを束ねながら、メンバーそれぞれの魅力を立ち上げ、ファンの視線が集まる場所をつくらなければいけない。彼女が繰り返し口にするのは、“メンバーが最も輝く瞬間を第一に考える”という、驚くほど明快な基準だからだ。

 『AdverTimes.』のインタビューで木村は「その中で最も意識しているのは、どうすればメンバーが最も輝くかを第一に考えることです。私の考えるプロデュースの一番肝要なところも、この『どう輝かせるか』にあると思っています。言い換えれば、グループやメンバーがそれぞれ持っている魅力を、いかに引き出せるかです」(※1)と語っている。

 ここで言う輝きは、きらびやかな装飾を足して作る眩しさではない。本人のなかにある魅力を、いちばん伝わる形に整えて前へ出すことだ。そのとき軸になるのが、等身大を守るという考え方になる。等身大という言葉は、背伸びをしないとか、素朴でいることだと受け取られやすい。けれど木村の文脈では、むしろ逆だ。メンバーが元から持っている温度、癖、言葉の選び方、立ち居振る舞いを、途中で矯正せずにそのまま活かす。そこに楽曲や衣装、MV、SNSでの見せ方を合わせていき、魅力がきちんと届く状態に仕上げる。等身大を大切にするとは、本人が無理をせず、自分らしい振る舞いのままステージに立てる状態をつくることに近い。

 “かわいい”を掲げるプロジェクトは数多い。だがKAWAII LAB.がいまの時代に刺さっているのは、かわいさをひとつの型に当てはめていないからだろう。こういう顔、こういう声、こういう振る舞いが正解だと決めてしまうと、メンバーはその正解を演じることになる。すると表情も言葉も予定調和に寄っていき、本人の実感が薄れていく。木村が最初に置くのは、メンバーの気持ちと手触りだ。そこを起点にして、楽曲や衣装、MV、SNSまで、外に届く道筋を組み立てていく。だからこそ、共感が生まれ、そのまま応援の熱につながっていくのだ。

プロデュースにおける一貫したルール

 『情熱大陸』でも触れられていた通り、木村はどのグループにもセンターを作らないという方針を掲げている。全員が主人公で、容姿や性格、個性を肯定する姿勢が楽曲にも通っているという。センター不在は、ただ“平等に見せる”という話ではない。視線がひとりに集まらないぶん、曲や場面ごとに、誰がどこでどう光るのかを毎回組み立て直す必要がある。そこで大事になるのは、運営の都合で形を決めるのではなく、本人が納得して立てるかどうかという前提だ。

 その考え方が現場でどう扱われているのかを、FRUITS ZIPPERの東京ドーム公演のリハーサルでの一場面がよく示していた。リフターの高さに不安を抱く松本かれんに対して、木村は「やるべきだから」と押し切らず、本人の意思を確かめたうえで判断していく。メンバーを型にはめるのではなく、本人が納得して立てる条件を整える。等身大を守るという姿勢が、きれいごとではなく現場の判断として貫かれていることが、そこで見えてきた。

 木村のキャリアも、この考え方と無関係ではない。読者モデルとしてキャリアをスタートし、アイドルグループ・むすびズムのメンバーとしても活動したのち、2022年にKAWAII LAB.総合プロデューサーに就任した。表舞台に立つ側を経験してきたからこそ、現場で何が起きると人が萎縮し、何があると人が伸びるのかを、感覚として知っているのだろう。

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 『情熱大陸』ではその特殊なキャリアから「裏に誰かいるのではないか」と邪推される悩みも赤裸々に語っていた木村ミサ。しかし、新グループ MORE STARの楽曲の方向性を決める会議の様子が映されると、木村はリファレンス楽曲を次々と上げながら具体的なイメージをスタッフに伝達。また、歌詞の歌割りを決める上でも、メンバー全員にスポットが当たるようにと熟考する姿が映し出されていた。自身のアイドルとしての経験に加えて、熱狂的なアイドルオタクとしての卓越した知識が木村のプロデュースの基盤になっているのだと思う。

 木村は“理想のアイドル像”として、メンバー全員が結婚/出産を経てもなお愛され続けているNegiccoを挙げ、「ずっと続けられるグループがいいな」と語った。若さが求められ、限られた活動期間のなかで輝くことを求められていたのが従来のアイドル像だ。これに対し、木村のプロデュースは「長く続くアイドルを作る」という前提のもとに選択された手法だと考えられる。トップダウンで課題を与えながら成長を促すのではなく、アイドルと同じ目線に立つことで個性を引き出す。時代と並走する新世代のアイドルプロデューサーと言えるだろう。

 『BRUTUS』2025年12月15日号 No.1044(マガジンハウス)の特集「ブルータスのアイドル論2025」のなかで木村は「過去のブームで終わらせないで、文化として根づかせたい。原宿カルチャーが長い時間をかけて浸透したように。そのためにもメンバーと運営、一丸となって進んでいきたいです」と語っている。目指しているのは、流行として消費されて終わることではなく、時間をかけて残っていくかたちだ。

 木村がKAWAII LAB.を成功に導けた理由は、そのための軸を貫き続けたからだろう。流行の型にメンバーを当てはめるのではなく、本人たちの気持ちと実感を出発点にして、個性がそのまま活きる形へ組み立てていく。「どう輝かせるか」を最優先に置き、等身大を守る。その考え方が、楽曲や衣装、MV、SNSでの見せ方にまで一貫している。だからこそヒットは一度きりで終わらず、次のグループ、次の曲へとつながり、プロジェクト全体の強さになっていった。これからもその軸がぶれない限り、KAWAII LAB.は“かわいい”の形を更新し続け、広がり方そのものもさらに大きく変えていくはずだ。

※1:https://www.advertimes.com/20250729/article506628/

■関連リンク
KAWAII LAB.公式サイト:https://kawaiilab.asobisystem.com/
木村ミサ X(旧Twitter):https://x.com/misaxmas_
木村ミサ Instagram:https://www.instagram.com/misaxmas/?hl=ja

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