生田斗真と“アーティスト”として出会う衝撃と喜び なぜデビュー曲は岡村靖幸による「スーパーロマンス」だったのか?

 生田斗真が、芸能生活30周年の節目に歌手活動を本格スタートさせた。その1stシングルは、自身が主演するドラマ『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ系)の主題歌「スーパーロマンス」。スウィートでどこかノスタルジックなラブソングだ。このタイミングで、しかもこの曲で、こんな形で“アーティスト・生田斗真”に出会えるとは予想していなかったし、そのぶん初めて聴いた時はとてもフレッシュな喜びがあった。そして、そのフレッシュな喜びは、何回も繰り返して楽曲を聴いた今も、いまだに持続している。つまり、とてもいい曲なのである。

 この「スーパーロマンス」をプロデュースしているのは、ご存知、岡村靖幸。もしその情報を知らなくても、楽曲を聴けば、ある一定世代以上の人なら間違いなく彼の顔が浮かぶはずだ。それぐらい、どこを切っても“岡村ちゃん”なサウンドとメロディのディスコチューンになっている。曲の作りだけではない。生田の歌のファルセットの使い方(〈知らない言えないことばかり〉のところとかめちゃくちゃ懐かしい気持ちになる)からフェイクの入れ方、囁くような「カモン、ベイベー」に至るまで、楽曲の隅々にまで岡村ちゃんがいるのである。それにしても、生田はなぜ記念すべき始動一発目に、このタッグ、そしてこの楽曲を選んだのだろう。

 というのも、生田という人は本来めちゃくちゃガチのロックファンだからだ。マキシマム ザ ホルモンとの交流やコラボはよく知られたところだが、それも含め、リスナーとしてラウドロックやパンクロックを好んで聴いていることはいろいろなところで明かされている。ヘヴィメタル/ハードロックも好きで、Judas PriestやSLAYERのファンだという。すなわち、彼がMetallicaやGuns N' RosesのTシャツを着ている時、それはファッションではなく、愛とリスペクトの表明なのである。そんな彼が音楽をやるとなったら、ツインギターとツーバス全開の轟音チューンになっていてもおかしくない、とも思うのだ(それがラブコメドラマの主題歌として適切かはさておき)。

 あるいは、たとえばもっと若くてトレンド感のあるクリエイターと組んでまさに“今”な楽曲を作ることもできたかもしれない。岡村靖幸という才能の巨大さについては今さら語るまでもないが、トレンド最前線かといえば必ずしもそうではないだろう。ハイパーポップなダンスチューンでもHIPHOPでも、彼なら歌いこなせるはずだし、それもまたインパクトのあるトピックになっただろう。だが、生田はこの「スーパーロマンス」を歌手としての第一歩として定めた。そして、最高の楽曲に仕上げ、テレビに出て、バブリーな衣装に身を包んでキレキレのダンスをキメたのである。もちろん、大前提には「岡村靖幸が大好き」という大きな理由はあると思う。あるが、そのチョイスに、筆者はあらためて生田斗真という人を見る気がするのである。

生田斗真 「スーパーロマンス」MV Teaser

 現在はフリーランスの俳優として活動している生田だが、いうまでもなく、彼のキャリアのスタートはアイドル事務所である。ジュニアとして活動し、そのなかでのちに嵐のメンバーとなる松本潤、相葉雅紀、二宮和也とともにユニットを組んでいた時期もある。ちなみに彼らはほぼ同世代、つまり(関係ないが)筆者ともほぼ同世代ということになる(筆者は松潤世代である)。だが、所属タレントが基本的に歌とダンスを“本業”とするなかで、生田は異色のキャリアを歩んでいった。音楽ではなく俳優業に専念して、特に20歳を超えて以降、その評価をどんどん高めていったのである。それは事務所のなかではきわめて異質、言葉を変えればとてもオルタナティブな道筋だった。俳優としての生田斗真は、コミカルからシリアスまでなんでもこいの、芸幅の広さが武器。映画でも舞台でも、その役をしっかりと自分のものにしてざまざまなキャラクターを演じる、いわば憑依型の役者である。『パンダより恋が苦手な私たち』でも、実にクセのある動物学者・椎堂司を見事に演じている。ルックスだけを見れば超がつくイケメンなのだが、余裕で三枚目もこなしてしまうのが生田斗真なのである。

 そんな憑依型俳優としての能力と、そもそもオルタナティブな道で自分のキャリアを築いてきたこれまでの生き様、それが「スーパーロマンス」の上で交差している――何度もこの曲を聴いているうちに、筆者はそんな答えにたどり着いた。つまりどういうことかというと、人の敷いたレールに乗らず、未知の領域に飛び込んでそれをモノにしていく、この曲で生田が見せているのはそんな姿そのものだと思うのだ。

 すでに書いたとおり、この「スーパーロマンス」はきわめて、徹底的に、容赦ないほどに、岡村靖幸な楽曲だ。「イケナイコトカイ」でも「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」でも「カルアミルク」でもいいが、岡村ちゃんの曲をカラオケで歌ったことのある人がいればわかるだろう。キャッチーに見えて激ムズなのだ。テンションや勢いでは決して乗り越えられない、スキルとセンスを要求される楽曲である。生田はそれを、“演技力”という彼自身が持つ力で突破している。これまた先述したとおり、この曲での彼の節回しには、明らかに岡村ちゃんが憑依しているのである。そのエッセンスを呑み込み、自身のフィルターを通してアウトプットする――それは彼が長年、芝居の現場でやり続けてきたことだ。つまり、彼はこの1stシングルで、楽曲というよりも、“「スーパーロマンス」を歌う生田斗真”という“役”を選んだのである。

 今回のリリースに際して、彼は「新しい挑戦に、今とてもワクワクしています」とコメントしている。たしかにここには、予定調和のかわりに、意外性とサプライズだけが詰まっている。満を持して音楽活動を本格始動するにあたり、自分の好きな音楽を好きなようにやる――だけではきっと彼の欲望は満たされなかったのだろう。人の行かないほうに突き進み、自分の力でドアを開け続けてきた彼という人生を象徴するようにして、この「スーパーロマンス」は生まれたのだと思う。

 曲中で繰り返されるサビにこんな歌詞がある。〈チャンス逃さずに混ざり合えば 世紀のロマンスが始まるんだよ〉。“ロマンス”というのは何も恋愛だけに限った話ではないだろう。30周年というタイミングで彼らしくチャンスを掴み混ざり合っていく、そんな姿勢がこの曲には表れている。同世代として、なんだか勇気をもらう“デビュー曲”だ。

■リリース情報
Debut Single『スーパーロマンス』
配信中

配信URL:https://ikutatoma.lnk.to/SUPERROMANCE

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