JUBEE「NOISEを取り戻す!」フロアとの共鳴が生んだ熱狂 『REBIRTH OF NOISE』リリースライブで立てた新たな旗

 間違いなくヒップホップ畑出身ながら、THE MAD CAPSULE MARKETSからの影響を公言し、Age Factoryの3人と共にバンド AFJBまで結成。面白いラッパーだと思っていたJUBEEのライブに足を運んだのは、彼が複数のロックバンドを招聘した自主企画『CROSSOVER』を始めたタイミングだった。

 『CROSSOVER』自体は珍しい言葉ではない。ただ、自分ひとりの看板で企画を始め、そこにフラッグとしての言葉を立てる、というのはなかなかの決意が必要だ。渋谷のクラブを拠点としてきたJUBEEの客層を考えれば、初めてモッシュやダイブといったカルチャーに触れる人も多いはずで、痛いしウザいし迷惑ですと言われてしまえば身も蓋もない。共演バンドにもフロアにも気を配りながら、JUBEEは「これ、いつかマジで伝説のイベントになるから」と熱っぽく語りかけていた。2024年春のことだ。

 同年、上田剛士(AA=)やJESSE(RIZE/The BONEZ)、Kj(Dragon Ash)らと次々コラボ曲を作り、アルバム『Liberation』のツアーを駆け抜けたJUBEEは、その後、なんだか急に空っぽになっていたらしい。馴染みある母校の先輩とは違う、遠い場所から「いつか認められたい」と憧れていた先輩や先生たちにまとめてハグされたようなものだから、夢や目標がすっかり叶ってしまったのだろう。言われてみればわからなくもない話である。

 リリースがなかった空白の1年を経て、彼の2026年は新曲「REBIRTH OF NOISE」から始まった。基本はサブスク配信だが、ダウンロード購入者限定のフリーライブも開催。1曲255円でライブがつくのは安い。ただ、いまさら音楽に課金という行為に面倒な壁を感じる人たちも多い。つまり、この企画自体が「お前はJUBEEにどれだけ本気であるか」という問いになっているのだ。

 蓋を開けてみればRuby Roomのフロアはパンパンだった。自撮りで盛り上がる若い女性たち、JUBEEコスプレのように額にサングラスを乗せている男性、さらには外国人観光客も少々。聞けば、入り口でフリーライブの事情を聞き、その場で新曲を試聴、いいねと購入して入ってきたそうで、コアファン9割、物見遊山の人たち1割、くらいの内訳だ。そんなフロアを掻き分けてステージに登壇したJUBEEは、いきなりAA=のカバー「PICK UP THE PIECES」からライブをスタートさせる。眩しいばかりのメロディ、力強い歌詞、かなり高音のキーも含めて、渾身の力でぶつからなければ成立しない曲だ。スカした態度を是としない、フルスイングから始める気概はすぐに理解できた。

 理解の範疇を超えていたのは客の反応のほうだ。サビを全員で唱和した後にはどこからともなく「オイ!オイ!」コール。上がる右手はひらひら揺れるヒップホップのそれではなくグッと握る拳の形である。Age Factoryとのコラボ曲、ことさらヘヴィなリフが吹き荒れる「AXL」が始まるとフロア全体が怒涛のヘッドバンギング。首を縦に振る、だけでなく、中腰になって上半身ごと振り下ろす、マキシマム ザ ホルモンのライブみたいな光景が目の前に現れる。1割の観光客はどうするかと思っていたが、彼らの手には歓喜のメロイックサイン、突然派生するモッシュピットに飛び込んでいく猛者もいる。そしてピットの中には真冬なのに上半身裸の男性までがいる。なんだこれ。

 考えを改めなければいけなかった。冒頭に書いた「初めてモッシュやダイブといったカルチャーに触れる人も多いはず」というのは一方的な決めつけに過ぎず、JUBEEのラップを愛しながらゴリゴリなロックのノリに馴染んでいる人たちは案外多いのだ。あるいは熱心にJUBEEの企画『CROSSOVER』に通ううち、モッシュやダイブにはビクともしなくなったコアファンが増えたのかもしれない。誰も迷惑顔を見せない、大喜びでもみくちゃになっているフロアに向けてJUBEEが声を放つ。「新たにRAP ROCKERSという旗を立てる!」「NOISEを取り戻す!」。

 できたての新曲「REBIRTH OF NOISE」がスタートする。ビートメイカー KMがプロデュースするトラックのBPMは90台、途中で押し寄せる重低音は90年代のラウドロック風だが、緩急がクリアに分かれているのでメタル的なクドさはなく、ハットの使い方はトラップ風でもある。さらに新鮮なのは歌詞。〈血統書付きのMIXTUREキッズ/濃いBLOOD継承〉〈DO THE RIGHT THING〉などと双方のルーツを開示し、コーラスでは〈RAP ROCKERS〉と繰り返す。ちょっと聞き慣れない言葉だ。いや、どちらも単語としてはよく見聞きするが、この2つを組み合わせて何かのフラッグとする人を初めて見た、と言うべきか。

「ラップかバンドマンか、白の俺か黒の俺か。どこでも器用に立ち回れる自分もいるけど、全部ひっくるめて今はグレーを選ぶ」

「JUBEEはラッパーだから面白い、ラッパーであること忘れちゃダメだよ、みたいに言われるけど、そんな括りがどうでもよくなった」

 終演後に少し話を聞いてみれば、返ってきたのはこんな答えだった。なかなかリリックが出てこなかった時期を越え、2026年一発目を「REBIRTH OF NOISE」から始めるのは、「自分が何を好きで何を考えているのか、思想を深く掘ったら出てきた言葉。俺の解像度がもっと上がる、選手宣誓みたいな曲だから」。

 ライブに話を戻す。モッシュ&ダイブ上等の爆音を繰り出しながら、ただの暴動で終わらせないところがJUBEE流のエンターテインメント。同時に、文字通り肉体を使い、なんなら裸一貫でぶつかり合って一体感を高めていくファンたちの約束でもある。後半には「Vision」、未発表新曲の「Underdog」など、チルなムードのポップソングが続き、フロアには笑顔とハンドクラップが溢れ出す。全員の距離が驚くほど近い。主役は決してJUBEEひとりではない。なるほど、彼が“RAP ROCKER”に複数形の“S”をつけた理由がよくわかる。

 ひとりの宣言なら高い志だが、複数で共有すれば、それは思いもよらないうねりを見せていくものだ。後半、昔わくわくしながらTSUTAYAに通っていたことを明かし、「リリースの予定を知ること、その音楽を購入すること自体が楽しみだった」と語り出すJUBEE。「わかる!」と誰かの声。「だからストリーミングが一般的な今、あえてこういう形式でライブを開催した」と続ければ、フロアからは賛同の拍手。これが〈RAP ROCKERS〉の最初のうねりである。

 自分のスタンスを示す企画『CROSSOVER』を始めた時よりもさらに明確な意思のもと、今のJUBEEは新しい旗を振り始めている。ラスト直前には5月1日、自らスカウトしたメンバーたちと初のバンドセットでSpotify O-WESTワンマン公演を行うことを発表。ついに来たかという感覚だが、もちろんこれがゴールのはずはなく。締めに届いたのは、10年、20年先の未来を楽しみにしているような言葉だった。

「まだRAP ROCKERSってどういうものか俺もわかんない。やっていくうちにカルチャーって色がついていくものだから。俺だけじゃない、みんなと一緒に作っていく。これからもよろしく」

◾️リリース情報
 「REBIRTH OF NOISE」
配信:https://jubee-cds.lnk.to/REBIRTH_OF_NOISE

◾️ライブ情報
『JUBEE & DA RAP ROCKERS ONE MAN LIVE “RAP ROCKERS”』
日程:2026年5月1日(金)
会場:渋谷 Spotify O-WEST
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
出演:JUBEE
DA RAP ROCKERS:DAIKII (Gt. / AWSM.) / KOKI (Gt. / The BONEZ・TEARS OF THE REBEL) / KOSUKE (Ba. / Knosis・Survive Said The Prophet) / Bunta (Dr. / TOTALFAT) / DJ BAKU (KAIKOO)
金額:Adv. ¥5,500 / 2F ¥6,000 / U20 ¥5,000 ※ドリンク代金別

購入:https://sakuticket.jp/event/raprockers
受付期間:2月14日(土)12:00〜2月19日(木)23:59
当落発表・入金期間:2月21日(土)15:00〜2月23日(月祝)23:59