世界が熱狂するJ-POP人気のリアルな内情とは Spotifyが現地の“生の声”を届けるビデオポッドキャスト番組を聞いて
近年、日本の音楽が国境を越え、かつてない規模でグローバルチャートを席巻しているのは周知の事実だが、実際に「海外のリスナーが日本のアーティストをどう見ているのか?」「なぜその曲がその土地の人々に刺さっているのか?」といったリアルな内情は、意外と私たちに伝わってこない。そんななか、そういった海外におけるJ-POPを取り巻く状況を知ることのできる、待望のビデオポッドキャスト番組『J-POP PASSPORT』の配信が開始された。
この番組は、Spotifyが今年1月より新たに始めたもので、世界各地で日々音楽カルチャーの最前線に立つSpotifyの現地社員(エディター)たちがゲストとして登場し、それぞれの国・地域のチャート動向や、彼ら自身が魅了された楽曲を語るというもの。
第1回では「香港」をフィーチャーし、香港のエディターが現地のJ-POPチャートについて解説している。そこで語られているのは、日本人からするとやや意外とも言えるような、しかし極めてリアルな現地の熱狂だ。例えば、現在の香港のJ-POPチャートを席巻しているYOASOBIは、日本でも圧倒的な人気を誇る存在だが、一方で香港の人々にとってYOASOBIがどのような存在であり、どのように現地に溶け込んでいるのかという“生の声”は、日本国内にいるだけではなかなか知ることができない。
番組では、YOASOBIの音楽のどんな点が現地リスナーに響いているのかを指摘し、なぜこれほどまでに香港で愛されているのかを解説。自分たちが当たり前に聴いている音楽が「海を越えた先ではこんなふうに愛されている」という視点は、まるで鏡越しに自分たちの文化を覗き込むような新鮮な発見があった。
また、単なるランキング紹介に留まらないのが、この番組の重要な点だ。ゲストのエディターは、単に「流行っている」と話すだけでなく、なぜその現象が起きたのかというポイントをわかりやすく整理して解説してくれている。
音楽のヒットには、アニメとのタイアップをはじめ、SNSでのバズ、あるいはその土地特有の文化的背景など、必ず理由が隠れている。これらをSpotifyならではの専門的なデータと、現地の肌感覚の両面から解説してくれるため、情報の解像度が非常に高いのが、この番組の最大の強みと言えるだろう。その点においては、日本のアーティストやクリエイター、業界関係者にとっても、今後の海外展開を見据える上での戦略的なヒントが詰まった番組だとも言える。
ただ音楽シーンや市場動向を語る番組と聞くと、「小難しい」「堅苦しい」という印象を持つかもしれない。しかし、この『J-POP PASSPORT』にはそのハードルを下げてくれる存在がいて、それが番組のナビゲーターであり、インタビュアーを務めるSpotifyオリジナルキャラクターのスポッティだ。
4カ国語を操れるクワドリンガルなmikako(Nagie Lane)が声を担当するスポッティは、その可愛らしいビジュアルと軽快な語り口で、専門的な話をライトで親しみやすい会話へと昇華させてくれる。このキャラクターの存在があることで、コアな音楽ファンだけでなく、普段なんとなく音楽を楽しんでいるようなライトなリスナーも身構えることなく楽しむことができるのではないだろうか。
そして番組のもう一つの魅力が、エディター個人の熱量だと感じる。第1回では、香港のエディターが個人的に好きなアーティストとしてガールズグループのHANAについて語る場面があった。単なるビジネスライクな紹介ではなく、「ここが堪らなく好き」という個人の愛がこもった語りは、視聴者の心に強く響く。海を隔てているとはいえ、実際にその熱量に触れると、これまでHANAをそれほど聴いたことがなかった日本のリスナーであっても、「海外の人にもこれだけ愛されているなら、自分も聴いてみよう」という気持ちにさせられるはず。母国のアーティストを海外の有識者がアツくなりながらプレゼンしてくれるという、この逆輸入的な体験こそ、本番組ならではの醍醐味だ。
『J-POP PASSPORT』は隔週木曜22時に最新話が配信され、全5話が予定されている。第1回の香港を皮切りに、世界中のさまざまな地域と繋がることで、現在のJ-POPが持つポテンシャルが浮き彫りになっていくことだろう。世界が熱狂するJ-POPの最前線を、ぜひSpotifyで再発見してほしい。