アイドル×スポーツ大会はなぜ相性がいい? 櫻坂46、ハロプロ、AKB48……定番コンテンツとなった4つの理由
櫻坂46が、グループ史上初となるスポーツイベント『SAKURAZAKA46 SPORTS FESTIVAL supported by AEON CARD』を1月30日にTOYOTA ARENA TOKYOで開催する。通常のライブとは異なるスポーツイベントとして告知されており、櫻坂46の新しい顔を観ることのできる1日になりそうだ。
もっとも、アイドルとスポーツ大会の組み合わせ自体は、昔から定番コンテンツとして受け継がれてきた。女性アイドルの文脈では、ハロー!プロジェクトが2001年から2006年にかけて『ハロー!プロジェクトスポーツフェスティバル』を開催し、グループ横断のお祭りとして成立させた。48グループも、2009年に幕張イベントホールで『AKB48 チーム対抗 大運動会~絆よ 永遠に~』を行い、2015年には東京ドームで『第1回AKB48グループ対抗大運動会』を開催。アイドルの運動会を東京ドームで行うというスケール感を現実のものにした(なお翌年には、さいたまスーパーアリーナにて第2回大会が開催された)。さらに海外に目を向ければ、韓国では放送局MBCが主催する『K-POPアイドルスタースポーツ選手権』が2010年から続く長寿番組として定着しており、アイドル運動会が“毎年の風物詩”になっていることも象徴的だ。
では、なぜアイドルとスポーツ大会は、ここまで相性がいいのか。まず押さえておきたいのは、スポーツというフォーマットそのものが、人間の喜怒哀楽をわかりやすい形で引っ張り出すという点である。スポーツ大会は、ルールと勝敗が前提としてあり、展開は相手や状況次第でいくらでも揺れる。うまくいけば思わず笑ってしまうし、ミスをすれば悔しさが顔に出る。息が上がれば余裕はなくなり、格好よく見せる以前に、目の前の一手に反応せざるを得ない。それは、観客にとっても同じだろう。だから、スポーツの場では人間の感情がとてもわかりやすく伝わる。点が入ったら喜ぶし、負けそうになったら焦るし、ミスをしたら悔しがる。しかもそれが勝っているのか、負けているのかという状況と一緒に見えるから、観ている側も同じ瞬間に気持ちが動きやすい。
スポーツは“今目の前で起きている出来事”がそのままドラマになる。ライブも似たような側面を持っているが、アイドルにとってライブのフィールド=ステージというのは、自分たちの完成された姿を見せる場所だろう。曲ごとの世界観に合わせて表情を作り、視線や所作まで含めて完成形を提示する。そこにプロフェッショナルとしての魅力がある。だが、スポーツ大会は、同じように見せ方を整えることが難しい。だからこそ、ある意味では正反対とも取れるスポーツ大会は、アイドルシーンで何度も繰り返される定番コンテンツとして成立してきたのである。
ライブやバラエティを通じて、ファンはメンバーの性格やキャラクターを知ることになる。しかしスポーツ大会では、そこで見えていた人物像が別の角度から更新されることもあるだろう。運動神経の良し悪しだけではない。勝負がかかったときの強さ、瞬間の判断、チームのなかでの立ち回り――そうした要素は、ステージとは違う条件のなかでこそ表に出る。たとえば、普段はおっとりしている印象のメンバーが、ふとした瞬間に負けず嫌いな面を露わにする。クールに見えていたメンバーが、仲間に向けて大きな声を出し、前向きな空気を作り出す。スポーツは、メンバーの得意/不得意だけでなく、素の部分を映し出す、そこに面白さがあるのだ。
また、筆者がこうしたスポーツイベントを観ていて感じるのは、ファンが「一緒に参加している」と感じやすいイベントでもあるということ。ライブではコールやペンライトで気持ちを重ねられるが、スポーツはもっと反応が直球だ。走っているメンバーに「いけ!」と声を飛ばし、失敗しそうになったら「大丈夫!」と叫び、勝利した時には一緒に喜び、敗北してしまった時には悲しみを共有する。状況が一目でわかり、勝敗もはっきりしているから、気持ちをその場でぶつけやすい。
もうひとつ大きいのは、スポーツ大会がグループをひとつにする力を持っていることだ。メンバーを支える、勝った瞬間に全員で駆け寄る、悔し涙を見て肩を叩く。そうした場面は、言葉による説明よりも強い説得力で、グループがひとつになっていく過程を見せてくれる。スポーツ大会の魅力は、勝敗そのもの以上に、ひとつの出来事を全員で乗り越えた記憶が、グループにもファンにも残るところにある。
櫻坂46の場合、その期待はすでに冠番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京系)の体力測定企画が下地を作ってきたと言えると思う。番組のなかでメンバーの運動能力や身体の特性が見えるたびに、ライブとは違う顔が立ち上がってきたからだ。今回のスポーツイベントでは、その片鱗がよりはっきりと形になるのではないだろうか。
たとえば、三期生の運動能力チェックでは、村井優が50m走や反復横跳びで好成績を残し、俊敏性に定評のある森田ひかるを上回る場面も生まれた。数字として結果が出たことで、「運動ができそう」という印象が確信に変わった瞬間だったと言っていい。一方で、村山美羽は体幹の強さが目立ち、谷口愛季は柔軟性で存在感を放った。速い/強いだけでなく、そのメンバーの得意分野の違いによって魅力も変わってくる。
四期生の運動能力チェックでは、50m走で山田桃実が7秒73を記録し、これまで最速だった増本綺良の8秒02を上回った。こうした記録は、番組ではワンシーンで終わるが、スポーツイベントは、その強みがさまざまな競技を通して何度も発揮され、チームの流れや勝敗までを含めて影響を与えていく。つまり、すでに見えていた才能が、別の形で魅力として広がっていく可能性があるのだ。
『SAKURAZAKA46 SPORTS FESTIVAL』では、『そこ曲がったら、櫻坂?』で見えていたメンバーそれぞれの運動の才能や得意分野が、より具体的な強みとして浮かび上がってくるだろう。ライブとは違う角度から、櫻坂46の個性を確かめられる時間になるはずだ。