lynch. 夢に突き進み、たどり着いた結成20周年ライブ なぜ唯一無二であり続けるのか――その理由を観た
20年を振り返ると決して順風満帆な道のりではなかった。メンバーの言葉を借りれば「山あり、谷あり、谷あり」。それでもlynch.というバンドは歩みを止めることなく、少しずつ規模を拡大し、ひとつずつ夢を実現してきたのだ。そのなかで、たどり着いた結成20周年を彼らは「lynch. 20th ANNIVERSARY PROJECT XX」と銘打ち、一年を通してこの20周年イヤーを盛り上げるべくリテイクアルバム2作のリリースに加え、2本の全国ツアー、年間で42本ものライブを行った。そして、来たる12月28日、このプロジェクトの締めくくりとして43本目のライブの舞台に選ばれたのが、バンド史上最大規模に匹敵する収容人数を誇る東京ガーデンシアターだ。『lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」』と題した一夜の模様をここに記したいと思う。
定刻を少し過ぎ、暗転した場内にこれまでの歴史を振り返るような映像が投影され、映像を映す紗幕の向こう側でステージインするlynch.の面々を割れんばかりの声援が出迎えた。機は熟した。その刹那、この日の火蓋を切って落としたのは公演名の由来にもなっている「ALL THIS I’LL GIVE YOU」だった。そして、彼らのレパートリーのなかでも有数の凶暴さを持つこの楽曲で幕を開けた意味はのちにわかることとなる。
「この日は“ベスト・オブ・lynch.”なセットリストで臨む」(※1)と公言していたように「斑」、「GREED」、「EVOKE」とライブの定番曲を新旧織り交ぜながら立て続けに披露する。葉月(Vo)が「すげえ集まったな!」と感嘆の声をあげ、あえてMCでは内容を決めずに、ステージに上がった時の気持ちのままに話そうと思っていたと前置きしながらも「最高です! ありがとう!!」と満面の笑みで語ると、「素晴らしいライブハウスへようこそ!」とド派手なパイロとともに「CREATURE」を投下。そう、この日のlynch.は会場の広さを変に意識することなく、20年間ライブハウスで培ってきた彼らのスタイルを、そのまま東京ガーデンシアターにぶつけるつもりなのだと確信した瞬間であったし、それは続いて演奏された「I BELIEVE IN ME」もそれを物語っていた。
しかしながら、lynch.は前述の激しさを前面に押し出した“動”の部分だけでなく、彼らの楽曲の持つ美しさや歌心を堪能できる“静”のセクションが必ず設けられていることもまたライブのスタイルのひとつである。そういった意味で、悠介(Gt)の神秘的なディレイサウンドとVJによる映像美が会場を飲み込んだ「KALEIDO」や、アリーナ公演ならではの幾重にも重なるライティングが神々しかった「A FOOL」など、本来持つ彼らのスタイルをさらに引き上げるような演出面での大幅なアップデートを感じることができたセクションでもあった。
また、彼らの積み上げたものはライブ以外でも発揮されたことも忘れてはならない。この日は、機材トラブルによって「MIRRORS」で曲が途中でストップ。さらに原因となった特効の使用も中止となったのだが、lynch.はそんなことで狼狽えるバンドではなかった。むしろ、この逆境を逆手に取り、楽しんでいるようにも見えたし、この大舞台での度重なるトラブルに、メンバーが誰ひとり気持ちを切らすことはなかった。ライブハウスで評価され、ライブハウスで名を挙げてきた叩き上げの彼らの歴史と底力を見たように思う。
ここからはラストスパートと言わんばかりに「THE FATAL HOUR HAS COME」、「GALLOWS」をプレイ。さらに、明徳(Ba)の超絶スラップと晁直(Dr)のパワフルなドラムが炸裂した「INVADER」、ムービングライトとレーザーライトのコンビネーションが会場を照らした「OBVIOUS」、そしてlynch.のライブの名物と言っても過言ではない「PULSE_」で最高潮に達したフロアにとどめを刺したのは、この日のために作られた「BRINGER」だ。
ライブの冒頭に葉月が「この20年を振り返るようなライブになるかもしれませんが、僕はそれよりも今後の未来が楽しみになるようなライブを、今日皆さんにブッ刺したいと思います!」と話していたように、この曲をもってまたここから新しい未来を始め、命が果てるまでlynch.を続けるという決意をあらためて宣言し、本編を締め括った。
アンコールでは各メンバーがマイクを取るなかで、葉月が語った「やりたいことや夢や目標があるならば、そこに向かうことを止めずに続けていけば叶う」という話が印象的だった。さらに玲央(Gt)は「言いたいことを葉月に全部言われちゃった」とはにかみながらも、ひとつ付け加えるならば、「諦めなければ可能性はゼロにはならないということを持ち帰ってほしい」と話し、一つひとつ夢を叶えていったlynch.の姿を成功例として、「誰かの励みや勇気になれればいい」と自身が遅咲きだったことも踏まえて語る。その言葉には、大きな拍手が送られた。
2011年、満を持してメジャーデビューしたlynch.が今はなきSHIBUYA-AXでワンマンライブを行い、そこで「何年かかるかわからないけど、(日本)武道館でやります!」と宣言した時、このバンドはいい意味で諦めが悪いし、憧れに貪欲でしぶといから、きっといつか本当に日本武道館という場所に立つだろうと思ったのをはっきりと覚えている。そして2022年、彼らはその夢を実現した。lynch.というバンドはそういうバンドなのだ。
そして、着実に一歩ずつ夢を叶えてたどりついた20周年が、夢でも幻でもなく現実であり、死ぬまで止まらない。それを彼らのアンセムである「ADORE」で叩きつけると、「JUDGEMENT」、「EVIDENCE」というメッセージ性の強い楽曲をドロップ。さらに「EUREKA」の大合唱をもってアンコールのラストとした。
それでも鳴り止まないアンコールに応えステージに舞い戻った彼らは「THIRTEEN」で未来を見据えながら新たな約束を交わし、ラストを飾ったと思いきや、不意打ちでバンド随一の極悪ナンバーである「TIAMAT」をプレイ。会場を地獄の底に叩き落とし、「メイクしてるロックバンド、舐めんじゃねえ!」という言葉とともに正真正銘ラストナンバーとした。
つくづく唯一無二なバンドだと感じる。その出立ちや楽曲のヘヴィさも含め、圧倒的な闇属性でありながらも、バンド本来の性根の部分に少年漫画の主人公のように、地で行く力強さがあるのがlynch.の面白さだ。夢を公言して、そこに向かってがむしゃらに突き進む。そうやって小さな目標も大きな夢もひとつずつ叶えてきたからこそ、そこには「lynch.ならやってくれそうだ」という信頼と期待が生まれる。闇が深ければ、そのぶん光が強く射すように、バンドのさらなる成熟とともに、彼らがさらに大きな光を掴む未来を想像しないわけにはいかないのだ。「夢を諦めなれば可能性はゼロにならない」――この言葉をlynch.というバンドをもって体現すべく、これからの未来も持ち前の諦めの悪さでどこまでも突き進んでいってほしいと願うばかりだ。
なお、本公演を収録した映像作品『lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」25.12.28 TOKYO GARDEN THEATER』は数量限定で4月22日に発売される。
※1:https://natalie.mu/music/pp/waive01/page/3