the god and death stars、なぜ今新メンバーを迎えたのか? 音楽への敬意とバンドの真実――『林檎に剃刀』を語る
それぞれヴィジュアル系シーンを軸にキャリアを築きながら、化粧なし、虚構も装飾もなし、生身のロックンロールを鳴らすスリーピースとして我が道を進んできたthe god and death stars(ゴッドアンドデススターズ)。2010年代はコンスタントに制作やツアーを続けてきたものの、コロナ禍以降、なんとなく活動が停滞気味になっていたのだが、このたびバンドから新メンバー加入、そして5年ぶりのEP『林檎に剃刀』リリースというニュースが届けられた。実は名前を変えることも考えていた、というだけあって、リフレッシュ効果は抜群。間近に控えた新体制お披露目ライブを前に、初の4人全員インタビューを行った。(石井恵梨子)
やりたかったロックバンドにやっとたどり着いた達成感、godのはじまり
――バンドの成り立ちから聞いていきます。プロフィールを見ると結成は2010年ですけど、それ以前からaie(間瀬の通称)さんのバンドはあったとか。
間瀬大(Vo/Gt/以下、間瀬): deadmanが解散した2006年、僕と当時のドラムとベースでthe god and death starsの名前で始めて。バンドのつもりだったんですけど、のちに僕はthe studsを始めて、結局そのgodで作ってたデモをそのままやることになったから、自分のデモを試す場所、セッションをやってる感じ……に見られることが多かった。
kazu(Ba):うん。本チャンのバンドが始まるまでの準備期間なのかな、って。
間瀬:そういうぬる〜っとした始まり方です。で、the studsが休止したあとも、またthe god and death starsの名前を使おう、と。その時に大嵩潤と知り合ったんですよ。居酒屋でいきなり声かけられて。「あれ? 前にMUCCのイベント、出てた人ですよね?」って。
大嵩OJ潤(Dr/以下、大嵩):うん。ちょうど僕もそのイベントに出てたんですよ。
間瀬:MUCCのメンバーがそれぞれセッションバンドを作って、4個のバンドでやるイベント。そこで会ってるんですよ。それで「あぁ久しぶり」って話して、「なんかドラムやる?」「やりますー」みたいな。
大嵩:最初、スケジュールが合えばやりましょうって感じだったよね。
間瀬:そう。だから、初期は大嵩潤じゃない日もあった。あと、当時は別のベースがいたんだけど、彼がだんだん忙しくなってきて。その時kazuくんとは一緒に別のバンドのサポートをやってたから、「来月ライブあるんだけどスケジュール空いてます?」「空いてるよ」って。それが2010年。
――3人メンバーが揃ったタイミングが正式な結成となった。
間瀬:そう。で、kazuくんがわりと旗振ってくれるから、そこからCD出したり、コンスタントに動くことが増えてきて。
kazu:でも、最初はボーカル探したりもしてたよね。曲も弾き語りが原曲で、ちょっとルーズな感じだったりして。だから、この3人になって2年くらい経って、ようやくタイトなスリーピース、aieさんがボーカルっていうのがちゃんと固まっていったと思う。
――最初から明確なコンセプトがあったわけではない?
間瀬:その時にやりたいことをやる、っていうくらいかな。売れようとはしてないし、お客さん増やすためにどうすればいいかって頭を使ったこともなくて。自分たちが憧れていたスタイルに近い。ロックンロール、やりたかったロックバンド。そこにやっとたどり着いた達成感はちょっとあったかな。
――それはどんな意味で、ですか?
間瀬:生、手作り、血の通ってる人間の音。鍵盤がいるならもちろん生で弾いてほしいし、実際に鍵盤入れてみたこともあるし。だから、結局はその時に思いついた面白いことをやるっていうだけ。
――あえてこの言葉を使いますけど、ヴィジュアル系の様式を考えることって、このバンドでありますか。
間瀬:(god and death starsは)ヴィジュアル系って言われること、まずないよね。
kazu:キャリアはそうだけど。
――今精力的に動いているdeadmanは、ある程度様式を意識してると思うんです。ダークだったり、シリアスな世界観を作って。
間瀬:そういうの、まったくないですね。どっちかって言うと、笑いに近い。
――バンド名がそうです。これ、どこまで本気ですか?
間瀬:これはZIGZOの曲からいただいて……。“ごっつぁんでした”(=god and death stars)っていうだけ(笑)。
――笑いと皮肉、喜劇と悲劇のバランスがいちばん面白いです。
間瀬:そうですね。もちろん曲はちゃんと真面目に作りますよ。音楽に対しては、ものすごく敬意を持って作る。そこはずっと変わらない。でも、それ以外は冗談ばっかりやってます。
――今回の新作も、たとえば一曲目の「近眼女王」、笑っていいのかよくわからないタイトルと歌詞で。
間瀬:そういうのが好きなんです。最初は「近眼王子」で“キンガンプリンス”って読ませようと思ったけど……これはTiara(KIng & Princeのファンの呼称)たちが怒るかなと。
――そういうダジャレの発想なんだ(笑)。
間瀬:そう。これ、移動の車のなかで思いついた。あと、もともとは布袋(寅泰)が『King & Queen』ってアルバムで赤、青のカラーケースで出してるから。今回も青と赤のCDなんですよ。それは布袋から(アイデアを)いただいたところ。
――いろんな引用がgodの作品になっていく。
間瀬:うん。でも、『King & Queen』って名前だと俺らっぽくないから……っていうところからの発想。こういうことで頭使って、悩みながらやってる。
――かっこいいことがしたい。面白いことがしたい。しいて言うならどちらの感覚が強いですか。
間瀬:それはね、両立すると思っていて。ある人から見たら冗談のようだけど、でもある人から見たらかっこいいことやってる。ユニコーンとかBARBEE BOYSもそうだと思う。あとは歌詞。ギリギリなんだけど絶対自分じゃ使わない言葉とかは決まってるし、ここは茶化しちゃいけない、みたいなラインもあって。だから、ライトな笑いを取ることは絶対ない。面白くないボケをするくらいなら、誰にも伝わないボケのほうがまだいい。
――それってaieさんの匙加減? それともみんなで練り上げていく?
大嵩:いやいや、もうaieさんのセンスです。
間瀬:でも、大事なのはみんなが笑ってくれるかどうかだから。今度の春のツアーも、中島みゆきの「春なのに」をSEにして『地獄(ヘル)なのに』ってタイトルにするのはどうかって話してて。で、俺がトイレ行ってる時に思いついて、「いや、待ってください。『もうすぐ地獄(ヘル)ですね』っていうのもありますね?」「うわ、そっちだー!」って(笑)。だから、誰も傷つかなくて、対象に愛があることが大事。あとは先輩たちの――当時は別に誰かを笑かそうとは思ってないんだけど、今見ると笑ってしまうキャッチコピーとか。X(JAPAN)の「Standing Sex」のコピーが「座ってられねぇんだよ」とか、最高じゃないですか。ああいう痺れるやつが好き。「やっぱBOØWY、かっこいいよね」みたいな感覚もあるし。
――ロックバンドって、得てしてかっこつけがちじゃないですか。
間瀬:かっこつけることは、俺たち20代でやりきってるから。
――でも、かっこいいものは見方を変えたら笑える。どんな熱唱も「笑ってはいけない……」っていう気持ちで見たら面白くなるわけで。
間瀬:そうそう。フランク・ザッパとか(カルロス・)サンタナもそうだと思う。サンタナがギター弾いてる顔、俺は大好きなんですよ。あれに憧れるし、ロックンロールってダサくてかっこいい、っていうところにスポットライトを当てたいのかな。美しくいたいわけじゃなくて。みっともないオジさんがかっこいいことやってるほうがいい。だから、20代でこのバンドやってなくてよかったと思いますよ。若い時だったらもうちょっと厨二病入ってたかもしれない(笑)。