日向坂46「クリフハンガー」はなぜ刺さる? 節目を刻む“未完”の余韻、グループと共に育つ杉山勝彦楽曲の真髄

日向坂46、新章の幕開けに「クリフハンガー」が必要だった理由とは?

 もうひとつの理由は、グループの節目と結びつきやすいことだ。乃木坂46で言えば、「制服のマネキン」はそれまでのグループの印象を変えた象徴であり、「君の名は希望」は代表曲のイメージを決定づけた。「きっかけ」は歌われるたびに意味を増し、歌い継がれていく楽曲になった。近年の例としては、「歩道橋」(2024年)がわかりやすい。季節の冷たさをまとったメロディが、グループが次のフェーズへ移っていく空気をそのまま音にしていて、聴き手に“ここから先”を自然と意識させる。つまり杉山作品は、良曲として消費されるだけではなく、グループの時間の流れと一緒に価値が育っていくタイプの楽曲なのだ。

乃木坂46『歩道橋』

 日向坂46にとって「クリフハンガー」が置かれた位置も、まさにそこにあるだろう。2025年のアリーナツアー『日向坂46 ARENA TOUR 2025「MONSTER GROOVE」』を経て放たれるシングル表題曲であり、この作品がグループの現在地を提示する1枚であることを物語っている。新しいセンターが立ち上げる物語を、杉山の節目を歌にする力が支える――。この楽曲を聴いた瞬間に「ここから何かが始まるのではないか」と反応してしまう理由はそこにあるのだ。

日向坂46『クリフハンガー』MUSIC VIDEO

 タイトルの「クリフハンガー」は、物語をいいところで止めて、続きが気になって仕方なくなる終わり方を指す。MVもまた、葛藤を抱えたまま未来へ踏み出す姿を描き、どこか“未完”の余韻を残して終わる。視聴後に残るのは、完結した満足感というより、「この先を見届けたい」という感情だ。杉山のメロディは、この感情と非常に相性がいい。サビでしっかり解放しながらも、そこで気持ちよく終わり切らず、次の展開へ向かう余白を作る。聴き終わった瞬間に残るのは安心よりも、少し前のめりな期待である。

 日向坂46は明るさや一体感を武器にしてきた一方で、必然的に起きる“変化”も引き受けてきた。五期生が表題曲センターに立つことは、その変化がいよいよ中心にきたというサインだ。だから「クリフハンガー」は、ただの新曲ではなく、「ここから先の日向坂46」を前提に聴かれていく曲になると思うのだ。杉山がこの曲で鳴らしているのは、再スタートの祝福であり、次章への予告。おひさま(日向坂46のファンの総称)が熱狂するのは、メロディが強いからだけではない。日向坂46の未来を、今この瞬間の音として提示してくれるからだろう。

日向坂46、転換期を“前進”に変えた希望の2025年 一期生卒業の節目を越え、五期生が示した新しい強み

2025年の日向坂46は、グループにとって大きな転換期だった。デビュー6周年を迎えつつも、一期生全員の卒業という節目を経て、二期…

日向坂46、三作ぶりの選抜制が映すものとは? 『クリフハンガー』五期生 大野愛実のセンターがもたらす変化

日向坂46が2026年1月28日にリリースする16thシングル表題曲「クリフハンガー」のフォーメーションが発表された。三作ぶりと…

関連記事