Mrs. GREEN APPLEが示す、報われない世界でも“帰れる場所” 新章告げる「lulu.」の音と言葉に宿る希望
Mrs. GREEN APPLEが日本を代表するアーティストとして大役を任される立場にあることに、もはや違和感を覚える者はいないだろう。5大ドームツアー『Mrs. GREEN APPLE DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』で約55万人を熱狂させた彼らは、『輝く!日本レコード大賞』で3年連続で大賞を受賞。期待や責任を背負いながらも、『第76回NHK紅白歌合戦』では白組トリという大役を見事に務めた。
そして2026年1月1日よりフェーズ3がスタート。その開幕を飾る楽曲としてリリースされたのが「lulu.」だ。
フェーズ2から3へ、架け橋として鳴り響く「lulu.」
「lulu.」は、前フェーズの集大成である『BABEL no TOH』と明確な連続性を持つ。ミセスは従来から、聖書や神話をモチーフにした“ストーリーライン”と呼ばれるライブシリーズを展開してきた。『BABEL no TOH』では、旧約聖書の「バベルの塔」を下敷きに物語を描いた。ライブの最後に披露された楽曲は「天国」。全曲演奏後、メンバーは白い光の中へと消えていき、ストーリーラインの新たなライブ『ELYSIUM』(ギリシア神話に登場する死後の楽園)の制作が発表された。さらに終演後には、「愛しのluluへ」と始まる、ミセスからファンへの手紙が来場者に配布された。この手紙で初めて「lulu」という存在が示唆された。
年が明けて、2026年1月1日。フェーズ3開幕とともに、第1弾楽曲「lulu.」が1月12日に配信リリースされると発表された。ここで、あの言葉は新曲のタイトルだったのだと明らかになった。リリース前日の1月11日には、バンドの公式SNSアカウントに大森元貴(Vo/Gt)の後ろ姿を映したモノクロの写真が投稿される。衣装から推測するに、『BABEL no TOH』のラストシーンの写真だろう。Xでは、大森による意味深な投稿もあった。
「バベルから続くのはエリュシオンだけじゃない、かも、なぁ。」(※1)
いったい、どういうことだろう? ファンによる考察の輪が広がるなか、同日22時には、公式YouTubeで謎の生配信「Prologue to」がスタート。雲の中を突き進むようなその映像には楽曲にまつわるヒントが隠されており、ファンはYouTubeのチャット欄やSNSでモールス信号の解読を始めた。そこで発見されたのは「REINCARNATION」(転生)、「DESCENDANTS」(子孫)といった言葉だった。
映像は約2時間続いたが、1月12日午前0時、楽曲の配信開始時刻になると、そのままMVがサプライズで公開された。そこに描かれていたのは、転生を待つ魂たちの待合場所とも受け取れる幻想的な世界だった。こうした一連の仕掛けは、「lulu.」が単なる新曲ではなく、『BABEL no TOH』の終幕からフェーズ3へと橋を架ける楽曲であることを強く印象づけた。なお、生配信「Prologue to」は内容不明のまま突如始まったが、最大同時接続数は20万を超えたという。年末年始の一連の盛り上がりの背景には、楽曲を起点にミセスが仕掛けるエンターテインメント、そしてそれを生み出すMrs. GREEN APPLEというブランド自体への人々の信頼があった。
〈終わりが来たら/なんて言おう/どうせなら ほら/哀しくない様に〉
「lulu.」の冒頭、藤澤涼架(Key)のピアノが紡ぐアルペジオパターンをバックに、大森はそう歌う。フェーズ3の“始まり”の楽曲であるにもかかわらず。この歌い出しから思い出されるのは、『BABEL no TOH』のラストシーン。メンバーやキャストが先に去り、一人残った大森の後ろ姿だ。私たちは「すべての物事はいつか終わる」という変えようのない事実の上で生きている。「lulu.」という楽曲も、そしてミセスが生み出すすべての楽曲は、「限られた時間を、少しでも楽しいものや美しいもので埋めたい」という、ある種の気慰みのような想いから生まれているのではないだろうか。そんなことを考えさせられる、実に大森元貴らしい歌い出しだ。