(sic)boyが『DOUKE』で見せる成熟と未来 圧倒的な熱量で今を届けた『DOUKE TOUR 2025』東京公演レポ

 (sic)boyが、最新作『DOUKE』のリリースに伴う全国7都市のツアー『(sic)boy DOUKE TOUR 2025』を開催。その最終地点、Zepp Shinjuku (TOKYO)公演が2025年12月28日に行われた。開演時間の18時を迎える前にサポートアクトのlilbesh ramkoが登場し、フレッシュに生々しい感情を炸裂させていく。2025年8月には初の自主企画『blacknails』を開催し、多くの若手アーティストをフックアップしてみせた(sic)boyらしい人選だろう。アウェイと言っていい会場の雰囲気を物ともしない、伸び伸びとした見事なパフォーマンスだった。

lilbesh ramko

 定刻を過ぎると、いよいよ主役の登場だ。(sic)boyファンにもお馴染みとなったVJのJACKSON kakiが手がける映像によって荒れ果てたサーカスへと誘われると、『DOUKE』のオープニングナンバーでもある「DOUKE」でライブの幕が切って落とされる。

(sic)boy

 (sic)boyは、まず最新作『DOUKE』がどのような作品だったのかを観客にリマインドしていたとも言えるだろう。そう、『DOUKE』とは、これまでの(sic)boyの集大成にして新境地を切り開いた作品であり、同時に2024年に回ったキャリア初の全国ワンマンツアー『(sic)boy Angel!! TOUR 2024』をはじめとしたライブの場からのリファレンスが大いに持ち込まれた作品でもある。何より『DOUKE』というタイトル通り、道化師=ピエロがサーカスという舞台を必要とするように、アルバムをステージ上で表現すること、つまりライブと切り離すことのできない作品になった。

 『DOUKE』のリリース時に筆者が行なったインタビューでも彼はこう話してくれた。

「ただ自分の内側をさらけ出すのではなくて、ちゃんと提示できるアーティストになりたい」(※1)

 では、どのようにそういった『DOUKE』の世界が提示されたのか。

 ライブは大まかに言えば、(sic)boyのバックDJを長年務めるsathiと組んだDJセットの前半と、sathiに加え、ギターにCÉSAR、ドラムにAyukaを招いたバンドセットの後半という二部構成で目紛しく展開された。

CÉSAR
Ayuka

 最初のハイライトであり、『DOUKE』を端的に象徴していたシーンは「lights on」だろう。(sic)boyはオーディエンスにスマホのライトをつけるよう呼びかけ、光に満たされたフロアを見つめて歌い出す。「lights on」はラジオを聴いて過ごす(sic)boyの落ち込んだオフの様子を歌った極めてプライベートな1曲だが、その瞬間、また違った意味合いを帯び始める。〈I wanna shine/でも君が暗いと/影すら無くなるから lights on〉。その一節はまるで会場に集ったファンへのラブレターのようだ。まさしく(sic)boyは“内側をさらけ出す”だけではなく、“提示”することでリスナーと深く繋がっていた。

 さらに、もう一つのハイライトを挙げるならば、アンコールなしと宣言した後に披露されたラスト2曲、「Life is nightmare」と「Akuma Emoji」だろう。「かかってこい!」というシャウトと共に始まった最新作の収録曲「Life is nightmare」は、バンドサウンドの強靭なグルーヴと共にこの日のクライマックスとも呼べる熱狂を巻き起こした。そして、その勢いのままなだれ込んだキラーチューン「Akuma Emoji」では今にも枯れそうな、でも力強く響く歌声を届け会場を一つに。その時間、後ろのモニターに映し出されていたのは2人のピエロと(sic)boy。これも一つのメッセージだったのだろう。要するに、(sic)boyは“ピエロ(道化)”であり、“彼自身”でもある。矛盾するように聞こえるかもしれないが、すなわち“提示”することがステージ上の(sic)boyの役割であり、そこで“提示”するもののコアには、いつも彼自身がいるということだ。

 6年ほど前からずっと、(sic)boyは気分の良い日も、孤独に落ちた日も、心の内側に深く沈み込みながら歌詞を書き、歌にしてきた。それは変わらない。だが、今では圧倒的な熱量でステージ上から“提示”することができる。さらにそれに対して湧き上がるあらゆるリアクションも、彼は引き受けることができる。『(sic)boy DOUKE TOUR 2025』のツアーファイナルは、あらためて(sic)boyが『DOUKE』という作品で示したアーティストとしての成熟と未来を実感できる機会に他ならなかったのだ。

 振り返ってみれば、この日は最新作の収録曲を中心としながら「Hype's」や「Heaven's Drive feat. vividboooy」といった過去の代表曲も含む全29曲(「Last Dance」と「Heartache」のマッシュアップは1曲としてカウント)をプレイ。純粋に、これだけの熱量でこの曲数を演奏するのは並大抵のことではない。最後に「SAY GOODBYE」でタイトなヴァースを熱演したOMSBの言葉を借りてこのレポートを締めよう。

「(sic)boy最高だぜ、マジで。熱い男!」

※1 https://spincoaster.com/interview-sicboy-douke

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