Fire EX.主催フェス『FireBall Fest. 火球祭』 野球愛と『AIR JAM』リスペクトから生まれた台湾の“Wonderland”
Fire EX.がHi-STANDARD、『AIR JAM』から受けた影響
土井:日本からもAge Factory、ELLEGARDEN、WANIMA、YOUR SONG IS GOOD、04 Limited Sazabysが出演していましたね!
Sam:実は、毎年たくさんのアーティストをお招きしています。そもそも『FIREBALL Fest.』が生まれた背景には、2000年にHi-STANDARDが主催した『AIR JAM』の存在が大きく影響しています。Fire EX.は2000年に結成されたバンドで、Hi-STANDARDから非常に大きな影響を受けてきました。「いつか自分たちもフェスを主催したい」「しかも野球場という場所で」という思いは、どこかで当時、先輩たちの音楽祭から受け取った刺激への憧れでもあったと思います。そのため、フェスの形式や美学においても、Fire EX.自身の好みや感覚を大切にしています。私たちはもともと日本の音楽がとても好きですし、2012年以降、日本の音楽シーンとは長年にわたって深い交流を続けてきました。だからこそ、多くの日本のアーティストをお招きすることは、とても自然な流れであり、特別な目的があるというよりも、私たちにとってはごく当たり前の選択です。『FIREBALL Fest.』という場所で、台日友好の関係性が自然な形で表現され、台湾のリスナーが日本の音楽をより深く知るきっかけになり、そして日本のアーティストにとっても、台湾でのステージが「第二の故郷に帰ってきた」ように感じられる、そんなフェスでありたいと思っています。
土井:ステージ後方にスケボーのランプがあったりして、音楽の隣にあるようなカルチャーも合わせて、ストリートカルチャーを提案しているのが素敵だなと思いました。今後どんなフェスにしていきたいですか?
Sam:ステージ上でも話しましたが、私たちは成長していく過程で、さまざまなサブカルチャーの影響を受けてきました。サブカルチャーは、いわゆるメインストリームではない文化です。中学・高校時代にロックが好きだと、当時の主流の音楽が好きな人たちとは、少し距離があったりもしました。でも、ロックが好きな人は、スケートボードやグラフィティなど、他のサブカルチャーに関わる人たちとも自然とつながり、すぐに仲良くなれる。少数派ではあるけれど、とても強い仲間意識がありました。主催者として、若い頃にジャンルを越えて仲間と混ざり合って過ごした時間は、今でもとても大切な思い出です。だからこそ、こうしたフェスを開催できる立場になった今、音楽だけでなく、それぞれの分野で長年努力してきた仲間たちを招きたいと思っています。40代になっても、子どものように一緒に遊び、現場で形にしていく。それは、年齢を重ねても「自分たちが本当に好きなもの」を変わらず大切にし続けるという、私たちの原点でもあります。今の『FIREBALL Fest.』の在り方には、とても満足しています。このまま存在し続けてほしいと思っていますし、同時に、時代とともに進化していくことも必要だと感じています。時代がどんな新しい刺激を与えてくれるのかを受け取りながら、一方で、最初に大切にしていた純粋さは失わずにあり続けたい。そんなフェスでありたいと思っています。
土井:日本の音楽ファンにも来てほしいですね。
Sam:『FIREBALL Fest.』は、台湾のバンド・Fire EX. が主催する音楽フェスです。ここには、台湾で最高だと思う音楽、最高のアーティストたちが集まっています。同時に、私たちが心からリスペクトしている、日本の素晴らしい音楽家たちもたくさん出演しています。とても楽しくて、居心地のよい場所です。ぜひ一度、『FIREBALL Fest.』に遊びに来てください。きっと、このフェスを好きになってもらえると思います。皆さんを心から歓迎しますし、しっかりおもてなしします。会場でお会いできるのを楽しみにしています!
Modern Cinema Master、The Crane …現地でグッときた台湾アーティスト
さてここからは、今回見ることができた中で、グッときた台湾アーティストを紹介させてください。まずは、「當代電影大師 Modern Cinema Master」。2019年に結成された4人組のバンド。権威ある台湾のインディロック音楽アワード『金音創作賞』の常連アーティストでもあります。今年も最優秀ライブパフォーマンス賞を受賞し、パフォーマンスも披露していました。飾りっけが全くない。ポストパンクでノイジーで、ちょっとセンチメンタルなインディロック。男っぽくゴツゴツしていて、とってもかっこいいライブバンドでした。全ロックファンに見てほしいです。
続いて「鶴 The Crane」は、日本では2023年にSIRUPとのコラボ曲で出会った方も多いのではないかと思います。今回やっとライブを見ることが出来たのですが、歌声が素晴らしくとってもエレガントなんだけど、ユーモアもあって素晴らしかったです。なんとロマンチックなバラード曲でクラウドサーフしたんですよ! あんなにエレガントでロマンチックでゆったりとしたクラウドサーフを初めて見ました。ライブ後に少しインタビューできたのですが、スタジアムでのパンクバンドが多いフェスに出るというので、楽しんでもらえるようにと工夫をしたのだそう。しかもそれが、告別式のようなイメージだったというのも興味深いです。
このフェスはPIZZA OF DEATHリスペクトなムード漂うフェスなのですが、そんな中に登場していた「普通隊長 Captain Ordinary」。実は見れなかったんですが今回出会って、触れさせて欲しい曲があります。それは「短褲精神」という曲。意味は「短パンスピリット」。英語タイトルが「Stay Gold」なんです。愛が過ぎる! シャレが効いてる! 聴いてみてください。彼らのことが愛おしくなりますよ。
他にも、韓国からはSe So Neonとイ・ラン(feat. 鄭宜農)、香港のGDJYB 雞蛋蒸肉餅、UKからWhile She Sleepsが出演。さらに台湾のアーティストもパンク色の強いアーティストだけではなく、R&Bやソウル寄りのアーティストも多くて、イメージより色々な広がりのあるフェスで素敵でした。また、その幅のある音楽性を、そのまま全部楽しんでいるお客さんたちが素敵! 目の前のパフォーマンスが素晴らしければ、グルーヴに完全に身を任せて自由に踊って楽しむ。その音楽の楽しみかたが最高でした。音楽に対してめっちゃオープンマインドだし、フィジカルを解放するのが得意なお客さん達なんだなと思いました。この素敵なお客さんたちには、きっと主催のFire EX.のマインドが反映されているのだと思います。それが一番感動しました。言葉が分からなくても、なんだか心打たれて、目頭が熱くなってしまうFire EX.の曲のパワーとボーカル・Samの歌のパワー、触れた人をファンにしてしまう魅力。そして共鳴しているお客さんたちに、痺れました。Wonderlandは、決して誰かが作って用意してくれるものではなくて、集まる人全員で作るものなのだと実感した2日間でした。日本のロックファンにも親しみやすいフェスだと思いますので、おすすめします!
公式サイト:https://fireballfest.com/