Mrs. GREEN APPLE、ドームツアー『BABEL no TOH』で示した圧倒的な音楽の力 祝祭と混沌ーー壮大な物語が導く先

 Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)初の5大ドームツアー『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』、最後の地・東京ドーム。その2公演目(2025年12月16日)をレポートする。

 『ARENA TOUR “EDEN no SONO”』『ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE”』『DOME LIVE 2023 “Atlantis”』に続くミセスのライブの系譜のひとつ=“ストーリーライン”である『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』。会場の外にも『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』の舞台・バビロンの街を思わせるセットが置かれており、さまざまな催し物も。ライブが始まる前からすでに『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』の世界に足を踏み入れた感覚になる。

 雰囲気たっぷりの街が形成されたステージセット。『ARENA TOUR “EDEN no SONO”』からのストーリーを想起させるオープニング映像を経て、貴族のような衣装の大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)が登場。バビロンの街を彩るさまざまな格好をした数十人のキャストの姿も目に入った。「Love me, Love you」が演奏され、一斉にオーディエンスのライトスティックがオレンジに光る。大森が、「バビロン! 会いたかったぞ! 最高の日にしようぜ!」と叫んだ。ここではオーディエンスはバビロンの街の住民だ。サビで藤澤とキャストが腕を左右に振ると、オレンジのライトも一斉に揺れる。アリーナエリアの外周にもたくさんのキャストがいて、まるでアミューズメントパークのパレードのようだ。ライブでこのような光景は初めて観た。

大森元貴(Vo/Gt)
若井滉斗(Gt)
藤澤涼架(Key)

 「CHEERS」はよりチアフルなアレンジになり、バンドのアンサンブルに合わせて数十人のキャストが踊る。約6年前にリリースされた楽曲だが、まるでこのたくさんのキャストが踊る祝祭感溢れるオープニングのために作られたような楽曲に思えてくる。ミセスのライブを観ると、いつ制作された曲であろうと“今”ここで聴かれるための曲として鳴っている必然性を感じることが多いが、今回のセットリストは『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』だからこそのアレンジが大胆に施され、まさに今ここで鳴らすための楽曲となっていた。「アンラブレス」には華やかなストリングスが加わり狂騒感が生まれ、「Feeling」では大森を囲んで数十人のキャストが輪になって踊った。大森が高校2年生の時に書いた「パブリック」も、キャストが華やかなダンスを踊るという新たな見せ方に。だが、大森の「涼ちゃん!」という掛け声から藤澤のキーボードソロも、若井のシャープなギターソロも披露され、ロックバンドとしてのカタルシスも存分に発揮されていた。音楽はどこにどう光を当てるかで全く違う表情を放つが、「おもちゃの兵隊」もゴージャスに変化し、『The White Lounge』や『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』などで独自に音楽の楽しみ方を豊かに広げてきたミセスの信念を『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』でも強く感じることができた。

 「Soup」を穏やかに聴かせた後、バビロンの街は混乱に陥る。キャストが逃げ惑う中、なんとアリーナ中央の花道の上に、巨大なバベルの塔がステージ奥からせり出してきた。塔中段のバルコニーにガウンをまとった大森が現れ、ありったけのエネルギーを宿した「絶世生物」を熱唱する。眩いレーザーが舞い、ライトスティックはパープルに発光。雨や雷鳴の音が聴こえ、バベルの塔がビカビカと発光したかと思うと「Ke-Mo Sah-Bee」へ。ヘヴィでカオティックな音像を描くと、大森がバルコニーで片手を上げて「ア・プリオリ」に突入。〈君が言うその考えは/誰かのものね/恥さらし者ね〉と歌って手をゆっくりと上げていく大森の姿は神のようだ。シームレスに「Loneliness」になだれ込むと、鬼気迫る大森の歌が響く。「バベルの塔」は人類が天に届く塔を建てようとして神の怒りを買う物語だが、バベルの塔を出現させ、他者とのわかり合えなさや人間のどうしようもない業や孤独を描いた曲を続け、神の怒りを滲ませたこの流れには特にミセスの“ストーリーライン”の醍醐味が凝縮されていた。また、それを表現する大森の歌の説得力が尋常ではない。

 一転してバビロンの街は静寂に包まれた。鳥の鳴き声のような音が聴こえ、マントをまとった大森は怒りを鎮めるかのように「ダーリン」をしっとりと歌い始めた。〈悲しくて堪らない 人はとても弱いから/「誰かの私でありたかった」/彷徨ってしまうから ひとりにしないでよね。〉ーー『Mrs. GREEN APPLE 18祭』のテーマソングとして制作された同曲だが、ここでは人間の弱さも孤独も抱きしめて、神の怒りを収めるための曲としか聴こえないのが凄まじい。約5万人の「Darling」のシンガロングが響いた後、「コロンブス」へ。人間は昔から臆病で弱いけど、でも小さな宝箱を探し、前向きに歩んでいく。『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』の物語が新たな章に足を踏み入れたことが伝わってきた。

 大森と若井がオーディエンスに感謝を伝えた後、どのカメラに抜かれているかを当てる「感謝チャレンジ」というゲームを展開。若井は見事に当てるが、藤澤が不器用さを発揮するというミセスらしい和やかな光景が広がった。大森は「来年1月1日からのフェーズ3でいろんなことが待ってると思うとすごくワクワクします。見たことのない景色を見に行きたい。ちゃんと今見てる景色も大事にしたい」と言った後、再度感謝を伝えた。さらに、大森は『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』に込めた想いを丁寧に話した。

「大事に作っていたものが崩れたり、やりきれなかったり、果たせなかったり、傷ついたりすることは生活する中でたくさんあると思います。でも『まだ終わりじゃないんだぞ』『私はこんなもんじゃない』って自分に言い聞かせて日々を過ごしていくこと、大事にできなかった時間すら改めて大切に思うことを体験できないかと思いました。僕も若井も藤澤も人間なので、情けなくなる日も自信をなくす日もあって。それでもどうにか自分や相手や社会を好きでいようと尽力したいっていうのが今年のタームでした。情けないんだけど愛おしい。そんなものをミセスは歌ってる。今日がどこかに繋がっていたらいいなって祈ってます」

 大森が「情けないところも弱いところも一旦俺が愛してやる!」と指を差して宣言し、「ANTENNA」へ。傷つきやすく、気疲れもしやすい敏感な自分のアンテナを強みにして、どこまでも行ける気がする。フェーズ2のミセスのテーマ曲のような同曲を歌いながら、「愛してるよ!」と叫んだ。フェーズ2最後の新曲「GOOD DAY」でバベルの塔にはカラフルなバルーンが映し出され、しゃぼん玉が噴き出されると高揚感が爆発。冒険心をくすぐるギターフレーズが鳴り響き「Magic」へ。約5万人の〈Hey!〉という声が轟いた。

 藤澤の静謐な鍵盤の音がしばらく続いた。「天国」だ。ピンスポットが当たる中、睨むような表情で〈貴方の事が許せない〉と歌う大森。その後は、憎しみに翻弄され投げやりになったような表情と動きを見せるなど、一挙手一投足からありありと感情が伝わってくる。苦しみにのたうちまわるように全身を使って悲痛な歌を届け、やがて照明が明るくなり、ライトスティックの光が広がった。花道の先端で膝をついていた大森は救済されたかのような表情で立ち上がり、スモークが焚かれた花道をゆっくり歩いてメインステージのほうへ進んでいく。その先には人々のシルエットが見え、大森はそのまま眩い光の中に消えていった。直後、ビジョンに先ほどの大森の歩く後ろ姿を思わせる映像が投影され、「TO BE CONTINUED」の後、『ELYSIUM』という文字が映った。『ELYSIUM』はギリシア神話に登場する死後の楽園で、神々に愛された英雄たちの魂が死後に永遠の幸福を享受する場所と言われている。「天国」の次は『ELYSIUM』に向かうということだ。

 完璧なストーリーを紡ぎながらも音楽の力をさらに広げて見せた『DOME TOUR 2025 “BABEL no TOH”』の次は、どんな景色を見せてくれるのだろうか。さらに、フェーズ3とは何なのだろうか。これからのMrs. GREEN APPLEへの興味も尽きない。

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