早見沙織、2025年は異例な一年だった? 音楽活動の集大成と感謝をしっかり届けた10周年イヤーを振り返る

 早見沙織が、2025年にアーティストデビュー10周年イヤーを駆け抜け、12月10日には新曲「Last breath, Last record」をリリースした。

 シングル『やさしい希望』(2015年)でソロデビューして以来、コンスタントに楽曲リリースやライブを行い、いちアーティストとして音楽表現を深めてきた早見沙織。今年は10周年イヤーに相応しく、『HAYAMI SAORI Orchestra Concert 2025』や『セメ Live Vol.1』、そして『HAYAMI SAORI 10th Anniversary Live "HAYAPOP"』とコンセプトが異なるライブを複数開催し、例年以上に多くのファンに音楽を届けた。

 早見本人も“異例”と言えるほど、精力的に活動した2025年。そんな1年を振り返ってもらうと共に、新曲「Last breath, Last record」の制作について話を聞いた(編集部/ライブ写真=『HAYAMI SAORI 10th Anniversary Live "HAYAPOP"』より)。

“HAYAPOP”は「今の自分ができる音楽表現」

ーーアーティストデビュー10周年イヤーとなった2025年はどんな一年になりましたか?

早見沙織:今年はアウトプットだらけの年だったなっていう感覚がありますね。1月4日のオーケストラコンサート(『HAYAMI SAORI Orchestra Concert 2025』)から始まり、『セメ Live Vol.1』というバンド主軸のライブを行って、バースデーイベントやアコースティックライブを含むトークイベントもありました。ほかにも10周年の展示会やお渡し会、そして10周年ライブ(『HAYAMI SAORI 10th Anniversary Live "HAYAPOP"』)、先日は『リスアニ!LIVE TAIPEI 2025』にも出演させていただいたので、国内から海外まで本当に幅広く、全然違う構成のステージを毎回、その回ごとに作って行きました。お客様に見ていただきながらパフォーマンスをするっていう機会が、10年の中で一番多い年だったと思います。

ーー様々なスタイルのライブを1年を振り返ってどんなことを感じましたか?

早見:10周年ライブが終わったときに、改めて、これまでの10年でやってきた軌跡を拾い集めて、詰め込んだライブになったなと思いました。その軌跡に、今年の1つ1つのライブがとても色濃く足跡として残ったんじゃないかなと感じたんですね。今年1年というのは、自分にとってもチャレンジングな公演もありましたし、やったことないことに挑戦したことも多くて。収穫が多かった1年でしたね。

ーーやったことのないことっていうのは、例えば?

早見:『HAYPOP』に関して言えば、そもそも私、 3時間くらいのライブをほとんどやってなかったんですよね。

ーー24曲目後のMCで言ってましたもんね。「本来なら終わってる時間ですけど、10thライブはまだまだ終わりません」って。

早見:そうなんですよ(笑)。ゲネリハをやった時に、公演の3分の2ぐらいのところで、まだすごいあるなって思ったのを覚えていて。ただ、最初から多くしようと思ってこの曲数になったわけではないんですね。必然的に、導かれるように、この曲数、このセットリストになった。10周年ライブということで思い入れも強くあったので、曲数自体も自分にとってはすごく多くなりました。ただ、本番の高揚感と気持ちがアップアップしてる中で乗り切れるのかな? とか。声、飛ばないかな? とか、実際にやってみるまでは些細な心配もありましたね。でも本番は皆さんにパワーをもらえるから、全然ハードに感じなくて。それもやってみないと気付かなかった驚きではありました。

ーーこの曲数、このセトリだった意味というのは?

早見:これまでの10年の中でどの曲を入れようかとチームで話した時に、外せない曲が重なってきた感覚があって。シングル、タイアップ曲はもちろんなんですけど、それだけじゃなくて。例えば、1曲目に「NOTE」を選んだのは、1stアルバム『Live Love Laugh』の1曲目であり、1stライブの1曲目でもあった思い入れのある曲で始めたかったから。あとは、これからの曲も入れたいから、まだ音源化されていない曲を入れておきたいとか、リリースは決まってたけど発表していなかった「Last breath, Last record」をやりたいとか、アコースティックな歌唱も入れ込みたいとか。

ーー『セメ Live Vol.1』でしかやってない未発表曲とか、アコースティックライブで歌った曲も入っていました。そういう意味では、確かに10周年の集大成でありつつ、今年のライブも反映したセトリになってましたね。

早見:そうですね。「僕らのアンサー」も初期のライブだけでやっていた曲で、『セメ Live Vol.1』で久しぶりにガッツリやった曲でした。これも10年で考えたら、リリースはしてないけど、やっぱりやっておきたいなと思って。あと、HoneyWorksさんの曲で、自分がキャラクターソングとして歌わせていただいた「可愛くてごめん feat. ちゅーたん」を入れるっていうのも、あんまりこれまでのライブではやってなかったので。

ーー客席がざわめきましたよね。

早見:ふふふ。やっぱり入れましょう、みたいな話になりまして。セットリストの順番を組む前に集まってきたものが自然とたくさんあったのも、10周年にしかない体験ではあるかなと思っています。それも新鮮でしたし、演出として、途中で着ぐるみが出てきてましたけど、あれも今年に生まれたぬいぐるみですし。今年の3月に生まれたと思えないぐらい、皆さんに大事にしてもらっていて。

ーーグッズとして大人気の「(早)ぬい」が、あんなに本格的な着ぐるみになるとは思ってなかったです。

早見:早見チームの尽力のおかげで実現した奇跡の着ぐるみなんです(笑)。本当に皆さんにお目見えできるか、判断がギリギリだったんですよ。でも、今年生まれたキャラクターとしてアイコニックな存在になっていたし、シンプルに音楽を聴いてもらうライブとしてお届けすることが多い中で、いい意味での抜け感を作るというか、ポップな遊び心の要素を入れて、肩の力を抜いてもらう瞬間を作りたかったんですね。これはチームでもよく話していることなんですけど。

ーーそうなんですね。

早見:一生懸命聴く、真剣に観る以外のパートも入れ込んでいきたい気持ちがありました。そういう意味でも、皆さんに笑顔になってもらえる瞬間が作れてよかったです。チャレンジではあったんですけど、自分のぬいぐるみとして持ってくださってる方も多かったので、客席とステージをつないでくれる存在になったし、練り歩きもしてくれたので、ちょっと近く感じてもらえたのかなって(笑)。

ーー全32曲で約3時間に及んだライブを終えて、改めて“HAYAPOP”とは何だと感じましたか。

早見:私が歌ってきたジャンルをまとめてほしい、みたいな気持ちでタイトルをつけたところもありましたが、自分自身の中での一つの区切りというか、節目のライブになりました。ただ、演出も含めて、思っていたよりも新しい足跡も残せたなと。「これまでのもの」と「ここで生まれるもの」をあわせて、“今の自分ができる音楽表現”をこの1日でお届けすることができました。それと曲に対して「ありがとう」という気持ちをずっと持っていた公演でもありましたね。1曲1曲を大事に、愛おしく感じながら大切に歌うことができたような気がします。10周年の公演ができるのは今日が最初で最後だから、この1日しかない公演の中で歌い尽くしたいという気持ちが大きかったです。

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