宮野真守、束の間のバケーションへ誘った横浜アリーナ公演 遊び心と攻めの姿勢――笑顔を生み出す“表現者”の真髄

 8thアルバム『FACE』を携えてスタートした宮野真守のツアー『MAMORU MIYANO ASIA LIVE TOUR 2025-2026 ~VACATIONING!~』。『FACE』は、音楽だけでなく、声優、俳優、舞台、バラエティなど幅広く活躍する宮野自身がその“マルチフェイス"で“時代の顔となる”という意志を掲げて作り上げた作品だ。それは、ただ色々なことに挑戦するという意味ではない。どの角度から光を当てても強く輝く希有なエンターテイナーとして、さらに己を磨き上げるということ。ゼビオアリーナ仙台、ワールド記念ホールを回って辿り着いた国内ファイナルの地・横浜アリーナには、これまで以上に多彩な光を放つ宮野真守がいた。2日間で2万人を魅了したライブから、初日のレポートをお届けする。

 『VACATIONING!』というタイトルどおり、ライブはラグジュアリーホテルのロビーのような映像で幕を開けた。ロゴにあしらわれた鍵が扉を開けると、そこには青い空と青い海、楽園のような光景が広がっている。爽やかな青いシャツに短パン姿の宮野が映し出され、期待が高まったところで、なんとその雰囲気をそのまま纏った彼がセンターステージに登場! 軽やかなサウンドの「VACATIONING」とともに、一気に観客の心を常夏のリゾートに連れ去った。

 テンポを上げてよりダンサブルにリアレンジされた「DRESSING Tropical Remix」や、ロックナンバー「BREAK IT!」を畳みかけ、会場内の温度はどんどん上昇。外が今冬いちばんの寒さであることも、頭にこびりついた年末の忙しなさも、あっという間にどこかへ吹き飛んでしまった。季節に寄り添った演出を選ぶこともできるところ、あえて真逆の方法で夢を見せるーー宮野真守らしい遊び心と攻めの姿勢に脱帽である。

 メドレー形式でさまざまな楽曲を届けたあと、SNSで話題を集めた「ジャンプしてみて」へ。ギターのカッティングが牽引するファンクに乗せ、表情豊かな歌声で心を掴んでいく。中盤では、歌詞にあるとおり〈オニーチャン〉〈オネーチャン〉に続いて〈オトーチャン〉〈オカーチャン〉も順番に指名し、(「手を挙げるだけでもいいよ」とフォローも忘れず)みんなでジャンプ。最後にキュートな“アメちゃん”ポーズをキメ、ステージにも客席にも笑顔が広がった。

 魅惑のバケーションはまだまだ続く。バンドメンバー&ダンサーら“チームマモ”のソロを挟んで、今度は赤色のセットアップスーツで登場した宮野。ロンドンやパリの街並を背景に艶やかな声で魅了した「Kiss me now」、ピンスポットライトを浴びて切実に歌い上げた「零光」、「大人のデートしてみます?」と夕暮れの地中海に誘った「Apollo」など、曲ごとに切り替わる世界観はまさに旅行のよう。

「つかの間ですが、みなさんにちょっとでも旅行気分を味わってもらって、忘れられない思い出を僕と共有してもらいたいと思っております」

 幅広い楽曲を違和感なく楽しめるのは、『VACATIONING!』仕様にリアレンジされた楽曲が多いからだろう。横浜公演限定で披露された「ヒカリ、ヒカル」は、温かく包みこまれるバラードに、続く「繭」はしっとりジャジーな雰囲気に生まれ変わっていた。それにともなって、宮野の歌声も原曲とは違う『VACATIONING!』の仕様。現実ではないパラレルワールドに招かれたような気持ちで、ここでしか味わえない歌声と演奏に酔いしれた。

 2023年に『宮野真守×富士急ハイランドスペシャルコラボ FUJI-Q “MAMO”LAND』というコラボイベントを開催した富士急ハイランドにバケーションに出掛ける、という映像を挟み、後半戦に突入。光を反射するきらびやかなデニム衣装にチェンジし、高速ラップとハードなダンスを盛り込んだ「Mirror」でまた新しい表情を見せていく。ロングトーンのフェイクで圧倒した「IT’S THE TIME」から、ヘヴィなロックサウンドに切り替えての「Greed」、「R.P.G」でダンサーとコミカルなパフォーマンスを繰り広げたかと思えば、「Kiss×Kiss」ではトロッコに乗り込み会場の隅々にまでファンに愛を届ける。

 怒濤のセットリストに一切疲れを見せないどころか、声もダンスもファンサービスもどんどんヒートアップしているのが凄まじい。表現者としての圧倒的実力を見せつけると同時に、“チームマモ”のメンバーにいたずらを仕掛けたり、笑いも含めたエンターテイナーぶりこそが宮野真守の真骨頂だ。

「みなさんと一緒に休暇をすごしたい、そんな気持ちでこのライブを考えました。この思い出がいつまでもみなさんのなかに残る宝物になるように。そして、その宝物にはいつでもアクセスできます。みんなの心のなかに僕はいます! 最高の思い出を一緒に作りましょう!」

 エンディングが近づく寂しさを吹き飛ばすように、本編ラストにポップでエネルギッシュな「シャイン」が贈られた。たっぷりとコール&レスポンスを盛り込んで、最後の一瞬まで楽しみは尽きない。ブロックわけから始まり、最終的に横浜にちなんでシュウマイを食べた人/食べていない人に分かれてのコール&レスポンスまで敢行。即興のシュウマイダンス(?)で、宮野本人も“チームマモ”メンバーもオーディエンスも全員を爆笑の渦に巻き込んだ。

 アンコールでも、宮野の暴走モードは加速。「カノン」の熱唱で締め括ったのち、アウトロのキメで再びシュウマイダンスを引っ張ってはしゃぎ倒し、笑顔とアットホームな雰囲気に包まれてのフィナーレとなった。

 ラグジュアリーで艶やかなムードから、しっとり温かい優しさ、ファニーな側面まで、宮野真守の“マルチフェイス”を余すところなく詰め込んだ『VACATIONING!』。宮野の言葉どおり、オーディエンス一人ひとりがお気に入りのシーンを心に刻み、忘れられない思い出を日常へ持って帰ったに違いない。そして、ツアーは年を跨いで海外公演へと続いていく。2026年も、その先も、ますます色鮮やかに開花する彼のエンターテインメントに期待だ。

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