【HANA】KOHARU&NAOKOが追求する理想の表現者像 「My Body」で深めた“在りたい自分”への確信とは

 デビューイヤーの2025年を大躍進で彩ったHANA。『第58回 オリコン年間ランキング 2025』の合算シングルランキングで『ROSE(Drop / Tiger)』が1位を獲得したほか(オリコン調べ/※)、Spotifyの年間ランキングでも「国内で最も発見されたアーティスト」にて堂々の1位に。数々の音楽特番に出演したのち、年末には『第76回NHK紅白歌合戦』での初パフォーマンスも控えており、2026年2月には1stアルバム『HANA』がリリースとなる。

 そんなHANAが10月にリリースした楽曲「My Body」について、KOHARUとNAOKOにインタビュー。ポップなトラック&キュートなビジュアルイメージとともに自己愛を肯定していく同曲には、強さとも弱さとも向き合いながら、自分だけの花を咲かせてデビューを果たしたHANAならではのメッセージがたっぷり詰まっている。とりわけ〈君のためじゃない my body〉というシンプルかつ真っ直ぐな意思の宿ったフレーズは、自己と他者の間の“揺さぶり”の中で悩みを抱える、現代のあらゆる境遇の人々の心を軽くするに違いない。

 今回はレコーディングやMV撮影での秘話はもちろん、「My Body」という楽曲をどのように捉えたのか、そして活躍の場が広がる中で自分自身とどのように向き合っているのか、といったことも語ってもらった。表現者としての理想をしっかり見つめながら、日に日に著しい進化を遂げていくKOHARU&NAOKOの“ありのままの今”をぜひ見逃さないでほしい。(信太卓実)

「周りの目に悩んでる子がいたら、私が取っ払いたい」(NAOKO)

――「My Body」はカラフルでポップなトラックに乗せて自己愛を肯定していく楽曲です。すでにたくさんの反響が届いていると思いますが、お二人にとってはどんな楽曲になってきていますか。

KOHARU:ちゃんみなさんが前々から「プリティな感じもやっていくからね」っていう話をされていたので、「おー、きたな」って(笑)。でも、歌詞を見た瞬間に「これは私たちが発信していくべきメッセージだ」と思いました。芯のある強いことを歌っているんですけど、それをポップでリズミカルな曲調に合わせることで、またHANAの表現が広がった気がします。

NAOKO:ともすれば重たい楽曲にもなり得ると思うんですけど、ポップな曲調でノッたりしながら、「よし、自分を大切にしよう」って気持ちをいい方向に持っていける曲だなって。そうやってネガティブに思っていることやコンプレックスをプラスに変えていけるし、私自身もすごく救われる曲だなと思いながら聴いてます。

HANA / My Body -Choreography Video-

――ご自身に落とし込んでみると、「My Body」を通して具体的にどんなところが肯定されたような感覚がありますか。

KOHARU:前にクラシックバレエをやっていた時、手足の長さとか細さ、ラインの美しさもコンクールでは得点に入るものだったので、海外の方の骨格のほうが有利だっていうのをずっと言われていて。心のどこかで「私、クラシックバレエ向いてないのかな」って少し思っていたんです。すごく楽しかった思い出でもあるんですけど、結局辞めることになって、辞めてからは自分の体型を気にすることなく、ただやりたい運動や体作りを続けて生きてきたんです。でも人前に出る機会が多くなると、体型がどうのこうのみたいなことを言われることもやっぱりあって。なので「My Body」が余計に刺さったというか。私はHANAになったからこそ、今この曲を歌うことができたのかなって思います。

――なるほど。今そうやって肯定的に曲を捉えられているのは、『No No Girls』を経験したことも大きかったんじゃないでしょうか。

KOHARU:すごくそう思います。私の中ではダンスと体って結びつきすぎていて、「やりたいことをやるために、自分の意思でこういう体でいる!」っていう考え方で生きてきたから、人からどうこう言われることに慣れていなかったんですよね。だけど『No No Girls』を経て、自分との向き合い方とか、「自分は自分でいい」ってことを精神面から教わることができたので。この曲の理解を深めることができたのは、ちゃんみなさんのおかげだなって思います。

NAOKO

――NAOKOさんはいかがでしょうか。

NAOKO:まず、MOMOKAの〈わたしだけの only one story〉から始まるリリックを聴いた時に、最高だなって思いました。私が目指している体型って、ビヨンセとかリアーナ、最近だとSZAみたいな方たちなんですけど、ものすごい存在感でダンスもめちゃくちゃかっこいいから、とにかく大好きなんです。ダンスを始めた頃からそこを目指していたので、それに対して何かを言われたとしても傷つくようなことはあまりなかったんですけど、疑問には思っていたというか。好きなものを否定されている気分ではありましたし、それを目指してる子もいっぱいいたので。もちろん周りの目を気にすることも時には必要なんですけど、気にしすぎて自分の好きなものがわからなくなる経験が私にもあったからこそ、もしそういうことに悩んでる子がいたら、私が取っ払いたいなって思います。

 〈わたしだけの only one story〉って聴いた時、「やっぱり私はこれが好きだな」って、もう一度自分への理解を深められたし、自分の体は自分のものであり、自分の人生や好きなものに対して他人から何かを言われても「私って変なのかな」なんて思わなくていい。自分を作るのは自分だよ、そうやって本当に好きなものを突き詰めればいいんだよって。それを私たちがパフォーマンスにしていくので、何も気にしなくていいんだよってことを伝えていきたいです。

――おっしゃる通りですよね。〈君のためじゃない my body/Even if you were my sweet honey〉というパートをお二人とも歌っていますけど、ここはどう捉えましたか。

KOHARU:ちゃんみなさんにこの歌詞を書いてもらえて、私も嬉しいなって気持ちです。体型のことに限らず、たとえ心を許した人からだとしても、自分を傷つけるようなひと言を言われたことに対して当たり前だと思ってしまって、「そういうものなんだ」「仕方ないんだ」って無意識に受け入れちゃおうとする瞬間って結構あるんじゃないかなって。だから、この1ラインでそういうことで困っていた人を救ったんじゃないかなって気がするし、私は本当に助かったなって思いました。

「“表現の理想像”に対する執着がものすごいことに気づいた」(KOHARU)

――一方で、どんなに自分らしくいようと思っても、どうしてもふとした時に自己否定に陥ってしまったり、自分を見失って塞ぎ込んでしまう人も世の中には多いと思うんです。お二人はそういう自分らしさを守るために、何か意識されていることってありますか。

KOHARU:自分らしさとか個性って、私もまだわからないところがあって、あとからだんだん作られていくものだと思っているんです。本当に好きなものとかやりたいことに忠実に生きて、努力して走ってさえいれば、どんどん尖っていって、自分らしさも勝手についてくるんじゃないのかなって。だから私は“追い求める”ことを大事にしています。周りに流されず、NAOKOも言ったように自分の好きなことを正直に認めてあげて……で、とにかく走る!

――それで言うと「My Body」のMVでのKOHARUさんは、めちゃくちゃ追い求めてますよね。

KOHARU:ありがとうございます!

KOHARU

――本当に『No No Girls』の頃からイメージも変わって、ここまで表情で魅せるアーティストになるとはって驚かされました。個人的には「Burning Flower」あたりからKOHARUさんの“表情力”が覚醒し始めた印象なんですが、ご自分ではどうしてだと思います?

KOHARU:『No No Girls』で急に人前に出て、HANAとしてデビューして、それからの流れが本当にあっという間すぎて。このスピード感の中で自分を見失いそうになる瞬間が何度もありました。周りからの評価があって人前に出られるので、どうしてもそこを気にしてしまって自分のことに集中しきれなかったし、とはいえ「一人の自分としてもちゃんと成長したい」っていう慌ただしい生活を送っていて……。けど、その中で「自分の表現って何だろう?」「これからどうすべきなんだろう?」ってことを私自身が見逃さなかったのかなと。

――と言いますと?

KOHARU:「私は絶対こういう表現をしたい!」という理想像があって、それに対する執着がものすごいってことに最近気づいたんです。言っていただいた「Burning Flower」あたりから、日を追うごとに成長してそこに近づいていこうっていう意識が強くなりました。

HANA / Burning Flower -Music Video-

――その“執着”に気づいたのは何がきっかけだったんでしょう?

KOHARU:映画の『国宝』を観た時かな。NAOKOと一緒に観に行ったんです。そしたら、食らっちゃって。周りを捨ててでも無我夢中になって1つの夢を掴み取るみたいな、主人公の“芸を尖らせることへの欲”がすごくて。それを観ていたら、ぶっちゃけ私もそっち側かもしれないなと思ったんです。以前の私だったら、「そんな手まで使う?」「絶対それはないだろう」みたいな感じだったと思うんですけど、今の私の“HANAとして夢を勝ち取りたい”っていう状況が『国宝』の主人公とものすごく重なって、「この気持ちわかるかも」って思いながらめっちゃ主観的に観ていました。それで家に帰ってから一人で日記に映画の感想を書いているうちに、「あ、私って意外と向上心が強いほうなんだな」って気づいたんです。

――映画にのめり込んだ理由を言語化してみたら、そういう気づきを得たわけですね。

KOHARU:そうです。主人公が味わっていた孤独も、「そりゃあ夢を掴むためにはね」みたいに納得しちゃって。私の中にもそういう一面があるんだなと思って、ずっと泣きながら、めっちゃ汗かいて観てました(笑)。

NAOKO:帰り道でも盛り上がったよね。

――KOHARUさんがそうしてでも叶えたい表現者像ってどういうものでしょうか?

KOHARU:メッセージがストンと人の心に入っていくような表現を一番目指していて。そのためにはパフォーマンスを含めた実力はもちろん、歌う時の心持ちとかモチベーションとか、いろんな要素を高めていかなくちゃいけないなって。どんどんスキルアップして、自分を磨いて、考えずにただ“感じる”パフォーマンスができる人間になりたいです。

――では、NAOKOさんは自分らしさを守るために意識されていることってありますか。

NAOKO:正直、それが一番難しいなと思っていて(苦笑)。KOHARUとも重なりますけど、私って「この人のこういう考え方わかるな」って結構いろんな人に感情移入しちゃうタイプで。その人の考えを周りの人が「なんで?」って疑問に思ったとしても、「こういうことを思ったからそうしちゃったんだろうな」ってわりと理解できてしまうというか。そうやって私はすぐいろんな人に“なってしまう”し、どんどん心を消費して疲れていってしまうので、ふと思い返した時に「えっ、私どこいった?」みたいになってしまうことがあるんです。3カ月に1回ぐらいはそうやって自分がわからなくなって苦しむんですけど、そうなった時は1回、頑張ることを全部やめてしまおうと。どうにかエネルギーを回復できるように、頑張ることを一旦やめて、ただその時に思ったやりたいこと――寝たいなら寝る、映画を観たいなら観る、漫画読みたいなら読むっていう、そういう時間をちゃんと取るようにしています。

――どんなに些細なことだとしても、自分の現在地を確かめるための行動をするっていう。それによってNAOKOさんの目指す自然体が出るわけですよね。

NAOKO:そうですね。「やりたいと思ったことを行動に移せた。大丈夫、まだちゃんと自分がある」みたいに思い込めるっていうか。それを1つでも多く持つことで、いつでも“NAOKO”に戻れるし、人間として息できるなって思うんです。これを何回も人生の中でやってきているんですけど、アーティストと呼ばれるようになってからは、めちゃくちゃ大事なことだったなって思うようになりました。

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