12月31日に放送される『第76回NHK紅白歌合戦』（NHK総合）にFRUITS ZIPPERが初出場することが発表された。その知らせは、単なるブレイク中のアイドルグループがついに紅白に届いたというニュース以上の意味を持っている。2022年のデビュー当初から「紅白に出たい」と公言し続け、2024年には落選の悔しさも味わいながら、それでも歩みを止めずに活動を積み重ねてきた7人にとって、この決定はひとつの夢の実現であり、同時にここまでの3年間で積み上げてきたものが公に認められた瞬間であるとも言える。

　そんな2025年のFRUITS ZIPPERを振り返ると、この『紅白』初出場は決して偶然でも、話題性だけのサプライズでもなかったことがわかる。ファンクラブツアー『FRUITS ZIPPER OFFICIAL FAN CLUB TOUR 2025 - WINTER -』からスタートし、3rdシングル『KawaiiってMagic』で初のオリコン週間シングルランキング1位を獲得（オリコン調べ）。『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』での最優秀アイドルカルチャー楽曲賞受賞（※1）。アイドルとしては最多となる夏フェス出演（アイドルフェスを除いたクロスジャンルの大型フェス出演数）。そして、さいたまスーパーアリーナ公演の成功から東京ドーム公演発表へ。それぞれが独立したトピックでありながら、1年を通して綺麗なストーリーラインを描き、『紅白』から東京ドームという大きな物語へと収束していった1年だった。

“バズ”のその先へ　J-POPシーンに刻んだ存在感

　まず象徴的なのは、5月にリリースされた3rdシングル『KawaiiってMagic』だ。初週22.7万枚という数字は、FRUITS ZIPPERにとって初のオリコン1位という快挙をもたらした。サブスクリプションサービス／動画プラットフォームが主流となった現在の音楽シーンにおいて、フィジカルCDの20万枚超という数字は、単にヒット曲が生まれたというだけではない。楽曲が好きという層だけではなく、「作品を手元に残したい」「活動を支えたい」と願うファンが確かなボリュームで存在している証拠である。

　「わたしの一番かわいいところ」で知名度を一気に押し上げ、“バズのグループ”というイメージで語られることも多かったFRUITS ZIPPERだが、『KawaiiってMagic』で可視化されたのは、楽曲の世界観に共感し、ライブやイベントに足を運び、CDやグッズを買うことを通して活動を支えるファンダムの存在。のちのさいたまスーパーアリーナ公演、さらには東京ドーム公演へとつながっていく動員力は、このシングルの結果によって、春の時点でほぼ証明されていたと言っていい。

　そのうえで、FRUITS ZIPPERは『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』で最優秀アイドルカルチャー楽曲賞を受賞することになるわけだが、音楽のプロフェッショナルたちが選考にかかわるこのアワードでの受賞は、単なる人気投票ではない。「作品として価値」「今の音楽シーンもたらした影響」といったポイントが真っ向から問われる場で、そのクオリティと影響力がきちんと認められたということになる。

　“NEW KAWAII”を掲げてきたFRUITS ZIPPERは、現代的な価値観と、王道のアイドルソングの高揚感を両立させてきたグループだが、その音楽性が「アイドルファンを楽しませるためのもの」にとどまらず、「今の時代のポップカルチャーをどう描くか」という地点にまで届いていることが、この受賞によって裏打ちされた。『紅白』が1年の音楽シーンを象徴するアーティストが選ばれる番組であることを踏まえれば、こうした活動姿勢が認められたことは、選考において非常に重要な意味を持つ。FRUITS ZIPPERの楽曲が単なる“バズソング”ではなく、その年のJ-POPシーンを語るうえで不可欠なピースとして認識され始めていたことは、このタイミングで明確になったと言えるのではないだろうか。

夏フェスで残した爪痕――地道な努力の果てに夢の東京ドームへ

　そして2025年のFRUITS ZIPPERを語るうえで、もっとも重要なトピックのひとつが夏フェスだろう。『SUMMER SONIC 2025』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025』、『MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2025 ～SAVE THE SEA, SAVE THE SKY～』など、ロックフェスや地域密着型のイベントに至るまで、FRUITS ZIPPERはこの夏、アイドルとして最多の出演本数を記録した。夏フェスのステージにおけるFRUITS ZIPPERは、アイドルイベントでの姿とも、単独公演ともまた少し異なる顔を見せていた。バンドやロックアクトが中心に並ぶタイムテーブルのなかで、「わたしの一番かわいいところ」や「KawaiiってMagic」のようなポップな楽曲がどのように響くのか。オーディエンスの多くが必ずしも“ふるっぱー目当て”ではない状況のなかで、どれだけ自分たちの色に会場を塗り替えられるのか。そこには、毎回小さくないハードルが存在していたはずだ。

　しかし、実際に現場で目にするFRUITS ZIPPERのパフォーマンスは、そのハードルを楽しむかのようにたくましかった。全員でこれでもかと手を振り、ステップを揃え、サビでは客席に向けて大きくクラップを求める。MCでは、フェスの空気に寄り添いながらも、自分たちの“NEW KAWAII”というコンセプトをしっかり言葉にして伝える。その積み重ねによって、ステージが進むごとに歓声とクラップが増え、最後にはFRUITS ZIPPERを目当てに来たわけではない人までも巻き込んでいく姿は圧巻だった。2025年の夏を終えた時点で、FRUITS ZIPPERはアイドルシーンの代表的存在という枠を超え、日本のライブシーン全体を語るうえで欠かせないポップアクトとしての信頼を獲得していたように見える。

　その夏フェスでの経験を経て、結成3周年を記念して行われた、さいたまスーパーアリーナでの『さいたまスーパーアリーナ25周年 FRUITS ZIPPER 3rd ANNIVERSARY 超超超めでたいライブ -さん-』は、その象徴と言える一夜だった。これまで積み重ねてきた楽曲やパフォーマンスを総動員し、巨大なアリーナをしっかりと“ふるっぱーの空間”に変えてみせたこの公演は、ファンにとっては大きな祝祭であり、メンバーにとっても「自分たちはここまで来たんだ」と実感できる時間になったはずだ。

　そして、その熱が冷めないうちに発表されたのが、2026年2月1日に行われる東京ドーム公演だ。アイドル、バンド、ソロアーティスト――ジャンルを問わず、多くの日本のアーティストにとって東京ドームは夢の象徴であり、ひとつの到達点として語られてきた場所でもある。そのステージに、デビューから3年というタイミングで挑戦するという決断は、プロジェクトに関わるすべての人たちが、FRUITS ZIPPERというグループのポテンシャルを本気で信じているからこそできた選択だと言っていい。

　発表の際に掲げられた「だれかにとっての“SUPER IDOL”に」というメッセージも印象的だった。これまで“NEW KAWAII”を掲げて走ってきたFRUITS ZIPPERが、東京ドームという舞台に向けてあらためて言葉にしたのは、ただ夢を叶える存在ではなく、誰かの人生にとって確かに力を与える存在になりたいという意志だった。会場の規模が大きくなるほど、ステージと客席の距離は広がっていく。だからこそ、その距離を埋める力として、楽曲と言葉とパフォーマンスがどこまでアップデートされていくのか。その問いを、FRUITS ZIPPEE自身が真っ向から引き受けた宣言でもあった。

　2024年に味わった落選の悔しさがあったからこそ、2025年の歩みはより大きな意味を持つ。夢が叶わなかった年から目を背けるのではなく、その現実を受け止めたうえで、数字も、ライブも、カルチャーとしての存在感も、1年をかけて磨き上げてきた。そしてもちろん、FRUITS ZIPPEEの物語は『紅白』で終わらない。むしろ『紅白』は、2026年2月1日の東京ドーム公演へ向けて、FRUITS ZIPPERというグループの名前と楽曲、そして“NEW KAWAII”というコンセプトを日本中にあらためて刻みつけるための、最大規模の入口だ。“NEW KAWAII”の旗を掲げ、夢を叶え続けるグループが、次にどんな景色を見せてくれるのか。その答えは、そう遠くない未来、東京ドームのステージで明らかになる。

※1：https://www.musicawardsjapan.com/2025/awards/?t=294

■公演情報
『FRUITS ZIPPER SPECIAL LIVE 2026「ENERGY」』
日時：2026年2月1日（日） OPEN 15:00 / START 17:30
会場：東京ドーム
特設サイト：https://fruitszipper.asobisystem.com/feature/special_live_2026

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