THE SUPER FRUIT、この日の思い出がこれからの孤独な夜をきっと救う――『THE SUPER FRUIT WORLD』徹底レポ

 耳付きカチューシャなどのグッズを身につけたファンが集い、煌びやかなBGMが場内に流れ、開演前から場内には高揚感が広がっていた。そしてフルファミ(ファンの呼称)が秘密のキーワード「ひらけふるうつ」と唱えると、招待された人しか入場できないテーマパーク『THE SUPER FRUIT WORLD』の扉が開く――。昨年の『THE SUPER FRUIT WORLD 2024 in TOKYO DOME CITY HALL』は『THE SUPER FRUIT WORLD』というテーマパークを舞台に展開されたが、今回は閉園後の『THE SUPER FRUIT WORLD』へ、THE SUPER FRUITが連れて行ってくれるのだという。

 11月23日、幕張メッセ。エントランスをくぐると、メンバーカラーをあしらった水色の王子さま衣装に身を包んだTHE SUPER FRUITの姿が。さっそく新曲「Welcome to Our World」でお出迎えだ。衣装や楽曲だけでなく、ヘアメイクもこの日のための特別仕様で、なかでも明るい金髪へとイメチェンを図った小田惟真がアップで映し出されると、客席からは大きな歓声が上がった。続けてフルファミのコールが必至の「Fruity Fruity Shake!!」で自己紹介しながら、フルファミとの絆も確認。この『THE SUPER FRUIT WORLD』は、特別な場所でありながら、普段の自分らしい姿で楽しんでいい場所だと教えてくれる。

 「スパフルのライブ、初めてきたよって人〜?」と聞いて、フルファミとのコミュニケーションを取っていくスパフルメンバー。「飛行機できたよっていう人〜?」と聞いたあとには「遠くからありがとう!」、「歩きできたよっていう人〜?」で手を挙げたフルファミには「(地元に)お邪魔します」と声をかけるなど、彼らの気配りや感謝の気持ちが細やかなところにまで表れている。フルファミの調子も確認したところで、さまざまな場所から、そしてさまざまな経緯で『THE SUPER FRUIT WORLD』にやってきたフルファミを、まずは“ドリームガーデン”へ案内。セットのお城の窓から顔を出したり、街頭の灯るステージを優雅に歩いたりと『THE SUPER FRUIT WORLD』を楽しみながら「君はリアコ製造機」、花道を進みながら「どっちっち!」を届けていく。メリーゴーランドがゆっくりとまわる映像でどこかメランコリックなムードが広がると、阿部隼大の伸びやかなボーカルからバラードアレンジの「青い果実」へ。メンバーの表情も一転し、憂いを帯びたボーカルとセピア色に映し出された姿から、大人になっていくことの寂しさや焦燥がひときわ切なく響いた。

 再びいつもの元気な表情に戻った7人は、花道を楽しそうに歩いていく。その道中でココナッツ、メロン、レモン、アップル、オレンジ、ピーチ、グレープと、それぞれのフルーツを見つける。試しにそれらを口に入れてみると、メンバーは夢のなかへ。パジャマを着た7人が空を飛ぶ映像を挟んで、黒とゴールドの衣装をまとい、スティックを手にした姿のメンバーが。続いて彼らが案内してくれるのは「ファンタジーマジックランド」だ。「ちょいドンマイ」では、堀内結流がおしゃぶり姿を見せるなどとびきりキュートな姿でおまじないをかけ、「I My Me Meow」ではカチューシャ姿になりネコ科の動物に変身。あまりのかわいらしさに、客席からは「かわいい!」の声が漏れ聞こえていた。ソファや椅子に腰掛けて「御伽話」のバラードアレンジをしっとりと届けたかと思えば、後半は原曲通りのジャジーなバージョンに。クールなダンスでも魅せ、ひと時も目を離せないステージとなった。

 舞台は古びた洋館の“ファントムシアター”に。シャンデリアが大きく揺れ、あやしげなムードが漂うなか、メンバーはひとりずつ登場し、ソロでダンスを披露。キャッチーな楽曲やキュートな振り付けで話題を集めることの多い彼らだが、ここぞとばかりにダンススキルや表現力を見せつけていく。真っ赤な照明でステージが照らされると、強気な歌詞が印象的な「馬鹿ばっか」「DanDanDaDance」を艶やかな歌声で聴かせる。舞台が“シアター”なだけに、それまでの一緒に楽しむ時間とは異なり、THE SUPER FRUITの作る世界観をしっかりと見せた“ファントムシアター”の次は、「目いっぱいフルファミと遊びたい!」――そう言わんばかりに、メンバーがトロッコに乗って客席内をまわる“ナイトエクスプレスパレード”へ。幕張メッセは客席内は段差がなく、すべてが平らだからこそ、メンバーはトロッコですべてのフルファミのもとへ進むことができる。トロッコに乗った7人は、お馴染みの手振りをしたり、ファンサービスをしたりしながら「チグハグ」「Juicy Smile」「サマーげっちゅー」を楽しく届けていった。

 メンバーがセンターステージに集まると、最後の会場“アドベンチャーシェイクタウン”へ。「サクラフレフレ」でタオルを回したあとには、コール&レスポンスで盛り上がった「どーぱみんみん あどれなりんりん」、メジャーデビュー曲「まにまに」とヒャダインこと前山田健一提供曲を続け、さらなる盛り上がりを生み出す。「まにまに」では、花道に立っていたメンバーが、先頭の小田から順番にメインステージに戻っていく。そして7人全員がひとつになったところで、〈人生楽しんだもん勝ち〉〈僕たちの 将来は/ビビっと VIVID やけに明るいのさ〉と歌うラストのサビに入るという構成で、楽曲のメッセージを体現した。さらに阿部の「みんな違っていい。自分らしく、あなたらしく、最後まで楽しんでいきましょう」との言葉から「だいぶダイバーシティ」へ。〈好きなものを好きだと言おう!/できない事を恥じないでいよう!〉という、THE SUPER FRUITが届け続けてきたメッセージを、オーケストラアレンジに乗せて壮大に『THE SUPER FRUIT WORLD』に響き渡らせた。

 星野晴海の「まもなく夜が終わります」とのアナウンスから、始まったのはフルファミへの思いを歌った「SUPAFURU WORLD」。メンバーのお願いでフルファミがスマホライトで客席を真っ白に染めるなか、メンバーは嬉しそうに客席の一つひとつの光を見つめ、「今日という日を一生忘れません」と噛み締めながらゆっくりとステージを去っていった。

 フルファミのクラップとコールでクレーンを動かすゲームで、再びメンバーをステージに呼び戻したアンコール。メンバーは客席内を歩きながら「ポップコーンフィーバー」を届けたあと、ステージのセットに腰掛けて、『THE SUPER FRUIT WORLD』に訪れる朝の気配を感じ取るように、まっすぐ前を見据えて「ボクらの夜明け」を熱を込めて歌い上げた。

 ここでようやくMCに。松本勇輝曰く「キュンキュン」だというセットや、メンバーの髪型についての話題から、この日のライブを振り返ったり、スペシャルゲストのグッズを呼び込んで紹介したりと、スパフルらしい賑やかなトークを繰り広げた。そして、「僕たちの始まりの歌」として、THE SUPER FRUIT初のオリジナル曲「Seven Fruits」で、最後にもうひと盛り上がりしてカラフルなライブを締めくくった。その後、写真撮影やTikTok撮影などで、この日の思い出を閉じ込めた彼らは、最後にひとりずつ挨拶をする。

 「発表からドキドキで、前の夜もあんまり寝られなかったですけど、みんなの笑顔を見れて幸せでした」(鈴木志音)、「今回こうしてみんながいてくれて素敵な舞台で踊ることができて、またやりたいと思ったし、フルファミのおかげだなと思いました」(松本)、「発表から1年間の皆さんの期待を、僕たちのパフォーマンスで超えることができていたらすごく嬉しいです」「これからもTHE SUPER FRUITはいろんな形に変化していくと思います。これからもついてきてくれたら嬉しいです」(田倉暉久)、「今日、この景色を見て、悩んでいたこととか考えていたことが一瞬でどうでもよくなりました。みんなも普段ツラいことあると思うんだけど、目をつぶったらスパフルワールドがある。『THE SUPER FRUIT WORLD』がそんな支えになるところになったらいいなと思っています」(星野)、「(「SUPAFURU WORLD」での)白い景色、TDC(東京ドームシティホール/現Kanadevia Hall)もすごくきれいだったけど、幕張の景色はもっときれいで、全部が宝物です。今日も大切な思い出ができました」(堀内)、「『THE SUPER FRUIT WORLD』を皆さんに届けられて幸せでしたし、あらためてこの7人が大好きだなって思いました。皆さんがツラい時とかしんどい時に、今日を思い出して頑張ろうかなって思ってくれる一日になったらいいいなと思っています」(阿部)と、ひとりずつ思いを語る中、ひときわ思いを募らせたのが小田。「TDCのときはちょっと悔しい気持ちが残って。今回は全部出し切れて最高でした」と口にする目には涙が浮かぶ。涙をこらえながら「ここ一年、ツラかったんですけど、今日を成功で終われて、生きててよかったなって心の底から思います」と続け、「この涙は嬉し泣きですので!」と気を配りつつ、「泣く予定じゃなかったのに」と言うと、「もう、やりたいことやって終わりたい!」とウェーブを提案。温かい空気のなか、笑顔で『THE SUPER FRUIT WORLD 2025 in 幕張メッセ』の扉を閉めた。

 前回の公演からの延長という意味を込めて、今回は閉園後の『THE SUPER FRUIT WORLD』を舞台にしたそうだが、夜という時間にスパフルがいてくれること、夜に『THE SUPER FRUIT WORLD』というテーマパークに連れ出してくれること、それが思い出として残ることにも意味を感じてしまう。寂しさや不安を考えてしまう夜、SNSを見て他人と比べてしまう夜。そんな時に、〈僕は僕で 君は君で/他の誰でもないさ〉(「チグハグ」)、〈好きな服着て 好きな口調で/好きな表情で 好きなメイクして〉(「どーぱみんみん あどれなりんりん」)、〈自分らしさ出していこう!〉〈やりたいことを我慢するとか/むりむり なしなし〉(「まにまに」)と歌ってくれるTHE SUPER FRUITがいてくれること、そして『THE SUPER FRUIT WORLD 2025 in 幕張メッセ』での楽しかった思い出が、きっと救ってくれる。それこそが、「Welcome to Our World」で彼らが歌う、〈今ここに扉は開かれた〉〈ひとりでは辿り着けない所まで手を引くよ〉という言葉の意味なのではないだろうか。

 この日、彼らは来春にツアー『ONE FLOWER HALL TOUR 2026』を開催すること、来年12月12日に『THE SUPER FRUIT WORLD 2026』を開催することを発表。さらに2026年は新曲もたくさんリリース予定だという。THE SUPER FRUITとともに過ごす2026年も楽しくなりそうだ。

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