タイラー・ザ・クリエイターの絶賛バーガーからNCT WISHのファッションコラボまで――韓国トレンドレポート 2025年10月号
『IAB STUDIO』初のオフライン空間オープン
韓国のアートクルー兼ライフスタイルブランド『IAB STUDIO』が、9月に初の常設ストア『IAB STUDIO DOSAN』をオープンした。これまでポップアップやオンライン販売を中心に展開してきた同ブランドにとって、初のリアル店舗となる。店舗名の副題「NAVY : A STORAGE ROOM」が示す通り、空間全体がアーカイブ展示と物販を融合した文化的スペースに仕上げられている。
『IAB STUDIO』は2013年、ラッパー・Beenzinoを含むクリエイターたちの共同プロジェクトとして始動。名前は“I’ve Always Been”の頭字語に由来し、「いつもやってきたこと」「変わらないこと」「持続性」に関する意味が込められている。ブランドの始まりはメンバー自身のための作業着作りにあり、ユニフォームライクなデザインとミニマルな美学で韓国ストリートシーンにおいて人気を確立。日本でもポップアップ開催のたびに話題を集めてきた。これまで『ASICS』『OBEY』『Netflix』『Yonex』『Helinox』『Pokemon』など著名ブランドとの協業を展開しており、店舗には過去のコラボアイテムや限定プロダクトも展示。ブランドの軌跡を一望できる構成になっている。
ストアでは『Fucking Awesome』『BRAIN DEAD』『Carhartt WIP』とのオープン記念コラボをはじめ、ストア限定アイテムも多数展開。今後もオフラインストア限定のドロップが継続的に発表される予定だ。
世界初のMoMAブックストア、ソウルに誕生
9月上旬、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の公式ブックストアが世界で初めてソウルにオープンした。これは、韓国のクレジットカード会社のヒュンダイカードとの約20年にわたるパートナーシップの成果として実現したもので、MoMAが自ら刊行する展覧会カタログやアート、デザイン、建築関連書籍を中心に、約200タイトル、1100冊以上を揃える。従来のMoMAデザインストアがグッズ中心だったのに対し、今回は書籍に特化した初の試み。限定書籍やコラボレーションアイテムも用意され、ヒュンダイカードがデザインを手掛けた店内は、専門家から一般のアートファンまで幅広く楽しめる洗練された空間に仕上がっている。
この開業は、ソウルが世界的なアートシティとして存在感を高めていることを象徴する出来事とされる。両者は2006年から文化交流を重ねており、ニューヨークでの韓国人アーティスト展や、ソウルで開催されたMoMAの企画展などを通じて関係を築いてきた。現代カードは「MoMAブックストアは、ニューヨーク近代美術館と現代カードの20年にわたる信頼関係を基盤に誕生した唯一無二の空間」(※1)とコメント。海外メディアも「ソウルとニューヨークの文化的な結びつきをいっそう深めた」(※2)「二つのグローバルなアート拠点のあいだで文化的交流がさらに深まった」(※3)「ソウルが世界的なアートハブとして存在感を強めていることを示す」(※4)と評している。
本ブックストアは単なる書店ではなく、アートを日常に引き寄せる芸術体験スペースとして位置付けられ、『Frieze Seoul』など大型アートフェアが開催される都市に常設の国際アート書店が誕生したことは、都市としての文化的成熟を示す象徴的な出来事となった。
※1:https://www.hyundaimotorgroup.com/ko/news/CONT0000000000186167
※2:https://www.wallpaper.com/travel/moma-bookstore-at-hyundai-card-seoul-opening
※3:https://www.skandishop.com/ja/blogs/skandishop-interior-wellness-style-trends-1/moma-bookstore-makes-landmark-debut-in-seoul?srsltid=AfmBOopPfzMNWRJGe9s_OD2YhY-yhklM8x0l6nj-NDbySdiVg4ac9enQ
※4:https://hypebeast.com/2025/9/worlds-first-moma-bookstore-opens-in-seoul-south-korea-announcement