LE SSERAFIMが東京ドームで伝えなければならなかったこととは何だったのか 覚悟の全26曲、決死の180分、そのすべて

 ついにLE SSERAFIMは夢の舞台にたどり着いた――。

 11月18日、19日に開催された『2025 LE SSERAFIM TOUR 'EASY CRAZY HOT' ENCORE IN TOKYO DOME』。4月に韓国・仁川で開幕し、日本、アジア、北米を巡った初のワールドツアーのアンコール公演が、デビュー当初から目標として掲げてきた東京ドームにて行われた。全26曲、およそ180分にわたった初の東京ドーム単独公演は、グループのこれまでの歩み、そして彼女たちの凛とした強さを映し出していた。

 公演2日目の11月19日。スクリーンでは炎が燃え盛り、開演が近づくにつれて激しさを増していく。真っ赤に染まったステージに雷鳴が轟き、三角形に象られたLEDスクリーンのなかからKIM CHAEWON、SAKURA、HUH YUNJIN、KAZUHA、HONG EUNCHAEが颯爽と登場。今年リリースの5thミニアルバム『HOT』から「Ash」「HOT」を立て続けに披露し、花道を駆け抜けて「Come Over」と、序盤から勢いのあるパフォーマンスを展開していく。

 白い衣装に着替えて3rdミニアルバムのタイトル曲「EASY」を届けたあとは、同作収録の「Swan Song」へ。クラシックバレエの要素を取り入れたパフォーマンスが優雅で美しい。まるでステージに5羽の白鳥が舞い降りたようだった。そこから、「近くに行きます!」「早く行きたいな!」「ちょっと待ってて!」とFEARNOT(ファンの呼称)に呼びかけたメンバーは、「Flash Forward」、「Blue Flame」で二手に分かれてトロッコに乗り込む。アリーナを一周しながら笑顔を見せ、客席にサインボールを投げ込むなど、FEARNOTとの楽しい時間を過ごしていった。

KIM CHAEWON

 「私たちをここまで連れてきてくれた、FEARNOTのために用意したステージです!」とSAKURAが告げて歌唱されたのは、「Pearlies (My oyster is the world)」。HUH YUNJINがワールドツアー中に語った言葉から誕生したファンソングであり、東京ドームという特別な場所で歌われるからこそ、胸を打つものがある。彼女たちの気持ちに応えるように会場の熱もどんどん高まっていき、KIM CHAEWONの「FEARNOT、私の仲間になれ!」というフレーズから始まった「Fire in the belly」では、大きなシンガロングが響きわたった。

SAKURA

 そして、幕間映像を経て届けられたのは、先月リリースされた1stシングルのタイトル曲「SPAGHETTI (Member ver.)」。赤と黒を基調とした衣装に着替えた5人は、ポップかつスタイリッシュに歌い踊り、熱狂の渦を巻き起こす。さらに、「Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife」、「CRAZY」と洗練されたダンスと歌でクールな魅力を発揮。HUH YUNJINがサングラスをかけてパフォーマンスした「1-800-hot-n-fun」では、重厚なサウンドに乗せてリズミカルなラップも歌いこなし、“パフォーマンス最強ガールグループ”としての現在地を証明するステージを繰り広げていった。

HUH YUNJIN

 MCでは、KIM CHAEWONがNetflixシリーズ『匿名の恋人たち』の主題歌である「告白 (Confession) [Japanese Version]」のワンフレーズをアカペラで歌い上げる一幕も。さらに、HONG EUNCHAEの提案から会場全員でウェーブをすることになり、全員が一体となって生み出された光の波に大興奮するメンバーだった。

 「今のエネルギーのまま、最後のステージを盛り上がっていきましょう!」と「FEARLESS」が届けられると、タットダンスを用いたパフォーマンスから、「UNFORGIVEN (feat. Nile Rodgers)」へ。シームレスに「ANTIFRAGILE」へと繋がっていき、5人の全身全霊のパフォーマンスに、FEARNOTの熱も止まらない。最後は金テープが勢いよく発射され、5人は再び真っ赤に染まったステージを後にした。

KAZUHA

 アンコールでは、Netflixシリーズ『My Melody & Kuromi』の主題歌である「Kawaii (Prod. Gen Hoshino)」を最初に披露。マイメロディとクロミもスペシャルゲストとして駆けつけ、7人で手を繋いで輪になったり、FEARNOTに向けてウィンクやハートマークを送ったりと、ガーリーなステージが届けられた。

HONG EUNCHAE

 日本オリジナル曲「DIFFERENT」を届けた後は、5人から今の素直な気持ちが語られた。KAZUHAは、以前にとあるFEARNOTがバレエを習っている娘と本公演に行くことを伝えてくれたと明かし、同じようにバレエを習いながら大きなステージに立つことを夢見ていた昔の自分を重ねたという。あらためて、東京ドームに立てたことに感謝を告げ、「これからも成長する姿をお見せできるように努力していくので、そんな私の姿を通して、皆さんが一歩踏み出す勇気になれば」と優しく伝える。

 HONG EUNCHAEも「こんなに願ってきた今日という日は、これからずっと忘れられないと思います」と口にする。また、今回初めて家族が韓国以外の海外公演に観にきてくれたことも打ち明け、「遠く離れている場所でも、これだけ私たちが愛されている姿を見せることができたのはFEARNOTのおかげです。これからも長く一緒に歩んでいけたら嬉しいです」と涙を滲ませる。

 11年ぶりに東京ドームに立ったというSAKURAも、「たくさんの夢を叶えられて。ただ、代わりにたくさんのことを諦めてきたし、たくさんの人に出会ったけれど、たくさんの人との別れも経験しました」と、アイドルとして生きてきた14年間を振り返って涙をこぼす。それでも、その先に今日の景色が待っているならと、そこに続けられたのは「私は生まれ変わってもきっとアイドルの道を選ぶと思います」という力強い宣言だった。

 KIM CHAEWONは、今日の公演を迎えるにあたって幼い頃から歌って踊っていた自分が頭に思い浮かんだといい、「あの頃から少しずつ夢を育み、諦めなかった私に『ありがとう』と言ってあげたいし、祝ってあげたいです」と語った。そして、「FEARNOTのおかげでひとつ夢を叶えることができました」「皆さんも人目を気にすることなく、夢に向かって一歩ずつ進んでいってほしいです!」とエールを送る。

 HUH YUNJINは、東京ドーム公演の実感が沸いたのは、前日に「HOT」を歌っている時だったという。「『私たちは打ち勝ちました。今もまだ熱いです。そしてこれからも熱くなっていきます』という、FEARNOTへの宣言のように感じられたんです」と、涙を浮かべながら明かす。「FEARNOTと私たちは言葉にしなくても通じ合える何かがあると信じています。昨日と今日、皆さんもそうだったんじゃないかなと思います。ここまで導いてくださって、本当にありがとうございます」と感謝を告げた。

 あらためてパフォーマンスでお礼を伝えるように、「Perfect Night」「No Return」でステージを隅々まで歩きながら、笑顔を弾けさせる5人。幸福感に満ちた時間を終えてメンバーは一度ステージを去るが、「まだまだ帰れませんよ!」という言葉とともにダブルアンコールがスタート。EDM調にアレンジされた「CRAZY」が流れるなか、5人は再びトロッコに乗ってアリーナへ向かう。最後の最後まで、会場がひとつになって盛り上がる光景が繰り広げられた。

 5人がこの東京ドーム公演までに、どんな気持ちを抱えてきたかは計り知れない。彼女たちの言葉から想像するに、決して平坦な道のりではなかったと思う。しかし、LE SSERAFIMはパフォーマンス力を磨き上げ、その成果をまざまざと示すステージを作り上げた。“世のなかの視線に動揺することなく前に進む”という意味を込めたグループ名の通り、彼女たちは打ち勝った。この東京ドーム公演は、間違いなく5人が自らの手で掴み取った夢の舞台だったのだ。

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