トゲナシトゲアリ、アニメの物語を越えて交差する『ガルクラ』とバンドの軌跡 『小指立てませんか』全曲レビュー

 今年9月23日、活動開始当初から大きな目標として掲げてきた日本武道館でのワンマンライブを実現させたトゲナシトゲアリ(※1)。同公演では来年2〜3月に初の全国ツアー『トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”』を開催すること、そして10月3日公開の『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂走曲』および11月14日公開の『劇場版総集編 ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。』に続く完全新作映画の製作が決定したこともアナウンスされ、『ガールズバンドクライ』というコンテンツおよびトゲナシトゲアリというバンドがこの先もまた新たなストーリーを生み出していくことに対し、多くのファンからさらなる期待が寄せられている。

 武道館公演以降もトゲナシトゲアリは今年2枚目のシングル『薄采ディスプレイ』を同公演翌日の9月24日にリリースし、10月22日には4作目となるライブ映像作品『4th ONE-MAN LIVE “協奏の響”』を発表。11月3日には日本工学院アリーナにて学園祭ライブ『ナタリー×日本工学院かまた祭 School Festival LIVE “トゲナシトゲアリ”』を実施し、年末にもRAISE A SUILENとの対バンライブ『RAISE MY CATHARSIS』(12月7日)や屋内音楽フェス『rockin'on presents COUNTDOWN JAPAN 25/26』(12月27日)といったライブが控えており、夢の舞台に立ったあともその歩みを緩めることなく前進を続けている。

 そんなトゲナシトゲアリが初のEP『小指立てませんか』を11月19日にリリースした。本作にはテレビアニメ『ガールズバンドクライ』Blu-rayおよびDVDの第1巻から第7巻に、特典として収録された楽曲を1枚にコンパイル。本作に収録された多くの楽曲がすでに彼女たちのライブにおいてなくてはならない存在となっており、映像作品を入手しないと聴けなかったレアな楽曲群を手軽に楽しむことができるという意味でも、非常にありがたい作品となっている。

 本稿では『小指立てませんか』に収録された全7曲について、歌詞やサウンド面での聴きどころや現在のトゲナシトゲアリにどんな影響を与えているかについて解説していく。

M-1. 碧いif

 2000年代以降の王道ギターロックとボーカロイド楽曲をルーツに持つトゲナシトゲアリだが、この曲は特にクリーンとクランチの中間的ギターサウンドが特徴的な、モダンなオルタナギターロック色を全面に打ち出している。ボカロ以降の性急なリズム感が持ち味のひとつでもあったトゲナシトゲアリにおいては、この曲は全体的に落ち着いたトーンをまとっており、ライブにおいてもいいアクセントになっている。

M-2. 無知のち私

 張り上げるような高音域でその魅力を遺憾なく発揮する理名のボーカルだが、この曲では低〜中音域を強調したメロディラインが用意されており、こうした表現が『ガールズバンドクライ』の物語における仁菜の葛藤とも重なる。歌声のメリハリがより際立つ仕上がりになったことで、理名のボーカルの新たな魅力が発見できる1曲になったのではないだろうか。

M-3. 渇く、憂う

 理名のつぶやくようなセリフ〈スベテコワシタイ〉にドキッとするオープニング含め、終始スリリングさが伴うトゲナシトゲアリらしさ全開のアップチューン。「無知のち私」の延長線上にあるボーカルのトーンを筆頭に、アレンジ面でも小技の効いたフックが多用されており、ひたすらがむしゃらに攻めまくるだけではない表現の仕方には新たな可能性も感じられ、2分40秒という短い尺ながらも1秒たりとも聴き逃せない魅力が凝縮されている。

M-4. 吹き消した灯火

 曲ごとに想像を絶するフックや変化球を散りばめてきたトゲナシトゲアリだが、ここではストレートな王道ミディアムバラードに挑戦。トリッキーなロックチューン中心のトゲナシトゲアリだからこそ、アルバム『棘ナシ』収録の「蝶に結いた赤い糸」同様ライブにおいて場の空気をガラッと変える上で、非常に重宝されるのではないだろうか。

M-5. 生きて生きていく

 隙間を作ることで広がりを見せるA〜Bメロとアンサンブルの妙が光るサビという対照的なアレンジ、熱量が高まる中盤以降の構成など、ロックバンドとしての幅の広がりが随所から実感できる。サビで歌われる〈足掻いただけ / 今日もまた一つ明日へ向かう / 時に散々に傷ついたりしながら / 生きてゆく〉など、トゲナシトゲアリというバンドの生き様や指針が凝縮された歌詞含め、先の武道館公演において本編の締めくくりに披露されたのも納得だ。

M-6. 臆病な白夜

 序盤の内省的なボーカルとドラムンベース調ビートがミニマルな世界観を生み出すものの、サビに入ると途端にアッパーなツービートと情報量の多いアレンジによりガラッと雰囲気が変わる。しかし、歌詞においては〈どんな願いでもいい / 此処にいてもいい 理由(わけ)をずっと求めていた〉など、一貫して自己肯定を切望する姿が描かれており、従来の“らしさ”に新しさを散りばめた、バンドとしてのステップアップを伝える新境地的楽曲と言える。

M-7. 最期の禱り

 自分の置かれた現状を嘆く悲痛な叫びがズシリと響く歌詞を、流麗で伸びやかなメロディと疾走感の強いメジャーキーのバンドアンサンブルに乗せることで、不思議と“明日への一歩”につながるようにと聴き手の背中を押してくれる。〈いいよ この世界に / 居場所などなかった〉というラストフレーズこそネガティブな印象を受けるかもしれないが、痛みを感じながら「それでも僕らは今日も生きていかなければ」とネガティブをポジティブに変えていく。そんな生命力に満ち溢れた、実にトゲナシトゲアリらしいロックチューンと言える。

 以上7曲、皆さんはどんな感想を持っただろうか。ここに収録された7曲は、テレビアニメ『ガールズバンドクライ』放送終了後に発表されたもので、もしかしたら前日譚あるいは後日談のような立ち位置なのかもしれないが、あの物語の中で動き回るトゲナシトゲアリの5人をより深く知る上では必要不可欠とも言えるだろう。ロックバンドとしてのさまざまな可能性を打ち出した『小指立てませんか』を通じて、アニメの物語とリンクした楽曲群とはひと味違ったトゲナシトゲアリの魅力をじっくり感じていただきたい。

※1: https://realsound.jp/2025/10/post-2179794.html

■リリース情報
トゲナシトゲアリ EP『小指立てませんか』
発売日:2025年11月19日(水)
形態:CD
品番:UMCK-1805
価格:2,750円(税込)
購入リンク:https://togenashitogeari.lnk.to/Lets_give_them_the_pinky_finger_cd

▼CD収録内容
碧いif
無知のち私
渇く、憂う
吹き消した灯火
生きて生きてゆく
臆病な白夜
最期の禱り

▼初回プレス分封入特典
ステッカーシート

▼先着特典
アンブレラマーカー(メンバーソロ絵柄5種のうちランダム1種)

トゲナシトゲアリ EP『全部をさらして生きてやる』
発売日:2025年12月17日(水)
形態:CD
品番:UMCK-1811
価格:2,200円(税込)
予約:https://togenashitogeari.lnk.to/Ill_live_with_my_heart_on_my_sleeve_cd

▼CD収録内容
もう何もいらない未来
命をくれよ
arrow
荊の薔薇
もう何もいらない未来 (Instrumental)
命をくれよ (Instrumental)
arrow (Instrumental)
荊の薔薇 (Instrumental)

▼初回プレス分封入特典
・ステッカーシート

▼先着特典
カードホルダー(全1種)

■公演情報
『トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”』
【開催日時・会場】
2026年2月11日(水・祝)OPEN 17:00 / START 18:00 KT Zepp Yokohama(神奈川)
2026年2月14日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 Zepp Fukuoka(福岡)
2026年2月23日(月・祝)OPEN 16:00 / START 17:00 Zepp Nagoya(愛知)
2026年2月28日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 Zepp Sapporo(北海道)
2026年3月8日(日)OPEN 16:00 / START 17:00 Zepp Osaka Bayside(大阪)
2026年3月13日(金)OPEN 18:00 / START 19:00 Zepp DiverCity(TOYKO)(東京)
2026年3月14日(土)OPEN 16:00 / START 17:00 Zepp DiverCity(TOYKO)(東京)

【チケット金額】
グッズ付き1階スタンディング 14,400円(税込)
1階スタンディング 9,900円(税込)
グッズ付き2階指定席 15,500円(税込)
2階指定席 11,000円(税込)

グッズ付きチケット特典:「トゲナシトゲアリ スペシャルBIGタオル」
※グッズは「トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”」キービジュアルを用いたデザイン。
※複数公演申し込み可、複数公演申し込みの場合は1公演ごとに申し込みのこと。1公演につき第4希望まで申し込み可。
※グッズ付きチケット・グッズなしチケットで、整理番号、座席の優劣はなし。
※ドリンク代が入場時に必要。
※未就学児入場不可/6歳以上チケット必要

【シリアル先行】※ツアーファイナル2026年3月14日(土)公演のみ
受付期間:2025年10月22日(水)10:00~2025年11月24日(月・祝)23:59
当落発表:2025年11月29日(土)18:00~
入金期間:2025年11月29日(土)18:00~2025年12月3日(水)23:59

※2026年3月14日(土)にZepp DiverCity(TOKYO)で開催されるツアーファイナルのチケット最速先行抽選申し込み券は、2025年10月22日(水)発売の「トゲナシトゲアリ 4th ONE-MAN LIVE “協奏の響”」Blu-ray&DVDに最速先行抽選申し込み券シリアルが封入。
※シリアルナンバー1つにつき、2枚まで申し込み可

■関連リンク
ガールズバンドクライ公式サイト:https://girls-band-cry.com/
ガールズバンドクライ公式 X(旧Twitter):https://x.com/girlsbandcry
ガールズバンドクライ公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@girlsbandcry
ガールズバンドクライ公式instagram:https://www.instagram.com/toge0toge1/
ガールズバンドクライ公式TikTok:https://www.tiktok.com/@girlsbandcry
トゲナシトゲアリ - Official Web Site:https://ageha.agehasprings.com/archives/artist/togenashitogeari

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