THE YELLOW MONKEY『CLIPS 4』解説:バンドが続く理由と意味を克明に刻む重要な作品 4人の絶大な信頼関係に宿る強さ

 2016年1月8日の再集結からまもなく10年が経とうとしているTHE YELLOW MONKEY。その間には忌まわしいコロナ禍を挟んだものの、再録ベストアルバム『THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST』(2017年)、『9999』(2019年)と『Sparkle X』(2024年)のオリジナルアルバム2作、『砂の塔』(2016年)や『CAT CITY』(2025年)といったシングル、そして数々のライブツアー開催やロックフェス出演、東京ドーム公演と、約10年の間に我々の心にさまざまな記憶を刻んできた。

 そんな再集結THE YELLOW MONKEYの、映像面でのひとつの集大成と呼べる作品『CLIPS 4』が11月12日にリリースされる。本作は再集結後最初のオリジナル曲「ALRIGHT」(2016年)から最新曲「CAT CITY」までの全MVに加え、本作のために25年ぶりに高橋栄樹監督とタッグを組んで制作された「Kozu」(※1)、そしてメイキングやオフショットなど貴重な未発表映像などを含む、非常に見応えのある内容だ。

 活動初期はそのグラマラスなヴィジュアルを活かした煌びやかな映像が印象的だったTHE YELLOW MONKEYのMVだが、吉井和哉(Vo/Gt)が自ら監督を務めた「JAM」や高橋監督と初コラボを果たした「SPARK」など、1996年以降は持ち前の華やかさにより磨きがかかり、かつアーティスティクな側面が強く滲み出た映像作品が多数散見される。その傾向は再集結以降も踏襲されており、民族的マスク姿のダンサーたちが舞う姿を交えながらも軸になるのはバンドの躍動感溢れる演奏シーンという「ALRIGHT」、会員制キャバレーを舞台に絶望を断ち切り希望を見つけ出す女性の姿を描いた「砂の塔」といった再集結から間もない時期のMVは、まさに解散前からの作風/世界観と共通するものが見え隠れする。

THE YELLOW MONKEY / ALRIGHT
THE YELLOW MONKEY / 砂の塔

 しかし、キャリアを経るにつれて無駄な装飾をどんどん削ぎ落とし、よりソリッドになったバンドアンサンブルが光る『9999』以降の楽曲、特に「Horizon」(2017年)あたりからはMVのなかで展開される世界観や作風にも変化が見え始める。もともと2017年12月開催の東京ドーム公演で上映するために制作された「Horizon」のMVは、メンバーが一切登場しないフルCGアニメーション作品。メンバー4人を彷彿とさせる動物4匹が車に乗って旅をする様子は、これまでのバンドの道のりを想起させるものもあり、イメージビデオ的な作風含め観る側のイマジネーションが掻き立てられる仕上がりだ。

THE YELLOW MONKEY / Horizon

 また、「Horizon」同様にアニメーションで表現された「ソナタの暗闇」(2024年)も興味深い作品のひとつ。歌詞を踏襲した物語が展開されるなか、アニメキャラクターとして描かれたメンバーも登場し、その特徴をとらえ、デフォルメされた4人の姿含め、実写MVでは表現し切れない世界観は「Horizon」同様に必見だ。そして、「Horizon」同様にイメージビデオ的作風という点では、「未来はみないで」(2020年)も特筆すべきMVだろう。曲中盤以降のギターソロあたりからメンバーの歌唱/演奏シーンがソートされるものの、全体を通して描かれるのはロシア文化圏で古代から行われている、冬の終わりと春の到来を祝う祭り『マースレニツァ』の燃焼行事を軸としたイメージシーン。監督を務めた丸山健志のカラーも色濃く反映されたアーティスティックなテイストは、個人的にも強く印象に残っており、THE YELLOW MONKEYにとっても新規軸と言えるのではないだろうか。

THE YELLOW MONKEY – 未来はみないで (Official Music Video)

 その一方で、台北で撮影したことで独特の空気感を纏うことに成功した「天道虫」(2018年)や、その「天道虫」同様にハードボイルドさが際立つ「罠」(2024年)などのバンドのクールさを打ち出した作品や、メンバーの猫コスプレ姿も記憶に新しい「CAT CITY」といったコミカルさのなかにも妖艶さが伝わる作品など、懐の深さを見せる場面も多々あり、あらためてTHE YELLOW MONKEYというバンドの引き出しの多さに驚かされる。だからこそ、“過去”と“今”が地続きでつながりながらも成熟した今だからこそ表現できる「Kozu」が、より鮮烈に映り、そしてこのバンドの特異性と普遍性を強く実感させてくれるのだ。

THE YELLOW MONKEY - Kozu (Official Music Video/Short ver.)

 また、約2時間を超える特典映像も見応え満載で、撮影の合間にちょっとした冗談で笑い合ったりと、随所で垣間見えるメンバーのリラックスした姿も、完成されたMVを視聴するのとはまた違った感情で楽しむことができる。再集結以降、筆者もメンバーに何度かインタビューをしてきたが、その都度感じたのは4人の仲のよさやメンバーへの絶大な信頼関係の強さ。そうした取材の場面で目にした4人の姿同様、メイキング映像のなかの彼らも相手を思いやりながら今この瞬間を楽しんでいるように見え、終始一貫したスタンスでTHE YELLOW MONKEYと向き合っていることが伝わる。

【11.12 Release】「CLIPS 4」MAKING & OFFSHOT VIDEO Digest

 バンドの最新の姿をさまざまな形で描きながらも、「THE YELLOW MONKEYとは何者なのか」という原点をライブとは違った形で再確認させてくれる――『CLIPS 4』は単なる“10年間のまとめ”ではなく、このバンドが今も続いている理由や意味を克明に刻んだ重要な作品なのだ。古くからバンドを追うファンはもちろんだが、再集結以降に彼らのことを知った若いファンにも入門編として手に取っていただきたい。

※1:https://realsound.jp/2025/10/post-2187493.html

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■リリース情報
『CLIPS 4』
2025年11月12日(水)発売

予約URL:https://tym.lnk.to/CLIPS4

WPXL-90343/7,920円(税込)

<収録内容>
MUSIC VIDEO
01. ALRIGHT
02. 砂の塔
03. ロザーナ
04. Stars
05. Horizon
06. 天道虫
07. I don’t know
08. DANDAN
09. 未来はみないで
10. ホテルニュートリノ
11. ソナタの暗闇
12. 罠
13. Kozu
14. CAT CITY

EXTRA VIDEO
15. THE YELLOW MONKEY IS HERE.
16. ホテルニュートリノ (Another ver.)
17. SHINE ON (2024.4.27 TOKYO DOME Document)
18. 罠 (Another ver.)

MAKING & OFFSHOT VIDEO
01. 砂の塔
02. 天道虫
03. I don’t know
04. DANDAN
05. 未来はみないで
06. ホテルニュートリノ
07. 罠
08. CAT CITY

THE YELLOW MONKEY オフィシャルサイト:https://theyellowmonkeysuper.jp/
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