ときのそら、8周年の感謝を込めた輝き 『Starry Bl∞min'』は華やかでエモーショナルなダンスパーティに
8周年を迎えた人気VTuberグループ・ホロライブのはじまりのメンバーとして、VTuber界を引っ張ってきたときのそら。10月1・2日の2日間、彼女の単独公演『ときのそら 8th Anniversary Party「Starry Bl∞min'」』が神奈川県のCLUB CITTA'で開催された。本稿では2日目の模様をレポートする。
公演のキービジュアルにダンスが映える衣装の彼女と、ヘッドホンを着けてDJ風になったマスコットキャラクター・あんきもが登場している通り、今回のライブは全編が8周年を祝うクラブ仕様のアニバーサリーパーティ。7周年ライブでも顕著になっていた近年の彼女のライブの特徴のひとつ、“ダンス”により焦点を当てた華やかな雰囲気が印象的だ。
ライブ冒頭、ダンスフロアの高揚感を連想するようなオープニング映像が流れると、ステップを踏むときのそらの映像に続いて「8th Anniversary Party」の文字が登場して客席から大歓声。そのまま2019年の1stワンマンライブからこれまでの映像が順番に表示され、「Are You Ready?」の文字に続いて、早速キービジュアルの衣装に身を包んだ彼女が登場してダンサブルなエレクトロ曲「デジタリックリリック」でスタート。サビ前の超ハイトーンが印象的なこの曲では観客も合いの手で参加して早速客席が沸騰する。そのまま、始まりを思い返しながらもまだまだ夢を追いかけていく気持ちを歌う「そらを超えて」に繋げると、ポップな楽曲に合わせて観客も真似しやすい振りのダンスでさらに客席を盛り上げる。ライブは序盤からまさに、ときのそら版のダンスパーティのような雰囲気で進んでいく。
そんなセットリストと連動するように、今回はスピーカーなどをモチーフにしたステージ演出が施され、会場は辺り一面クラブのフロアのよう。原色のカラフルな色をアクセント的に使った華やかな照明もパーティ感をさらに引き上げている。
続く「スタースタースタート」ではイントロから観客と〈(フッフー!)(フーワッフーワッ!)〉というお馴染みのコーラスを大合唱。ステージを端から端まで移動しながら、会場の隅々まで観客とコミュニケーションを取ろうとする様子がいかにも彼女らしい。MCでは「みんな声枯らす準備はできてるって感じ?」「次は新アルバムからダンサブルな曲を歌ってみようと思います!」と伝えてダンス曲を多数収録した新アルバム『Pulse』のリード曲のひとつ「Dancing Reed」へ。観客の合いの手やホーンセクションが躍動するクールなダンスチューンに乗って、歌とダンスで魅了した。その後も軽快でジャジーなポップ曲「未練レコード」、お洒落なコード感が心地いい「アマテラテラス」を次々に披露した。
とはいえ、今回のダンス要素はここからが本番。中盤のダンスナンバー「Bloomin`」ではふたたびDJあんきもが登場し、過去のすべての公演の中でも一番と言っていい本格的なダンスパートを披露。そのままUKハードコア~フューチャーコア風のクラブ曲に変化した「羽を手にして - KO3 Remix」に繋がり、客席からも「最高!」と声が上がる。続く「∞超スーパー無限インフィニティ∞」ではサビの〈超電波ピース!〉に観客が合いの手を入れてフロアがさらに熱狂した。
「次は5周年のときに出したアルバムから!」と伝えて「ポラリスソラリス」の切ないピアノのイントロが始まり、一転エモーショナルなバラードパートへ。その後「そらとものみんなへ」と題した映像が流れ、2017年9月7日の初ニコニコ生放送やX(旧Twitter)のフォロワー100人など、彼女の活動を最初期から順番に振り返る。
VTuberとして活動している人々が6万人以上いるとも言われている今では信じられないかもしれないが、2017年当時はまだVTuberとして認知されているタレントが両手で数えられるほどしか存在しておらず、技術的なトラブルも日常茶飯事。けれども、だからこそ多くの人々が手探りでエンターテインメントの形を探るような、決して華やかなだけではないけれども可能性に心をときめかせているような雰囲気が印象的な時代だった。そこからどんどん人気と活動幅が広がり、その様子が伝わる彼女のバイオグラフィは、そのままVTuber自体が辿ってきた歴史のよう。最後に「見えてますか? 映ってますか?」という有名な初配信のシーンが挿入され、「みんなの支えがわたしの力になるよ。いつも応援ありがとう」というメッセージが様々な言語で表示されオーディエンスも湧いた。
続いてドレス衣装に着替えた「Swallow Tail」では、涙を拭うような様子を見せつつも、〈どこまでも遠くへと このまま手を繋いで Take a journey〉と晴れやかな未来に向かって駆け抜ける姿を連想させながら熱唱。以降も彼女の実直な活動をそのまま表すかのような「ゆっくり走れば風は吹く」、もともとファンメイドの楽曲を公式化した初期からの人気曲「夢色アスタリスク」、間奏で「みんなとの約束、絶対やぶらないから!」と伝えて割れんばかりの大歓声が起こった「ユメゾラ☆ファンファーレ」で終盤をさらに盛り上げる。特に涙をこらえながら「ユメゾラ☆ファンファーレ」を最後まで歌い切り、終わった瞬間に泣き崩れる瞬間は印象的だった。
続くMCでは自分のこれまでを改めて振り返り、「私を輝かせてくれる人たちがいっぱいいてくれるから、ここでアイドルができているんだとずっと思っています」「私と一緒に歩いてくれますか? 9年、10年と、そこから先も私と一緒にいてくれますか?」と問いかけ、「みんなのことを思って歌います」と伝えて、「はじまりは一直線」へ。歌詞に登場する〈好きだ〉の部分で特に気持ちを込めて歌う様子は、8年分のリスナーへの感謝を伝えるようだった。
アンコールは「ラッキーセブンホイッスル」と「Dream☆Story」。クラブチューンを活かした賑やかで華やかなパーティでありながらも、彼女のこれまでや活動に込めた想い、リスナーと作ってきたキラキラした日常を詰め込むことで、ファンとともに成長していくエモーショナルなアイドルのステージにもなっているーーその煌めきがまさにときのそらという人を表わすようだった。
アンコール前の特報映像では、2026年1月に自身最大キャパシティとなる東京国際フォーラム ホールAで開催される昼夜2回の新たな単独公演『New Year’s Party 2026「Dreams in Motion」』の開催も発表。10周年に向けてさらに突き進む彼女の力強い足取りと、リスナーへの感謝の想いが輝いたステージだった。