「全部が同じように大切」 THE SPELLBOUNDが刻んだ矜持、BOOM BOOM SATELLITESの“音楽は生き続ける”という証明
1990年代より、エレクトロとロックを融合させ、研ぎ澄まされたビートを展開。日本のミクスチャーサウンドの礎を創造した存在として、現在も影響を与え続ける、BOOM BOOM SATELLITES(以下、BBS)。そのボーカリスト&ギターとして活躍した川島道行がこの世を去って9年を迎えた翌日である10月10日、BBSのもうひとりのメンバーである中野雅之と、THE NOVEMBERSの小林祐介によって結成されたバンド・THE SPELLBOUNDがスペシャルライブ『THE SPELLBOUND Presents BOOM BOOM SATELLITES Special Set !!Spiritualized!!』を開催した。
BBSの楽曲のみを披露ーーTHE SPELLBOUNDによる新たな伝説のステージ
『THE SPELLBOUND Presents BOOM BOOM SATELLITES Special Set !!Spiritualized!!』すべてのライブ写真を見る
BBSの楽曲のみをパフォーマンスするという、彼ら初の試み。ゆえに、会場となった東京・渋谷 CLUB QUATTROは、チケットが即完したということもあって開演前から汗が滲み出る熱気に包まれていた。そこにはデビューから30年近くにわたってBBSを追い続けている人はもちろん(ところどころで再会や生存を喜び合う声が響く)、THE SPELLBOUNDをきっかけに知った雰囲気のあるファンまで、さまざまな世代が新たな伝説の始まりを今か今かと待ち侘びている様子が伝わってきた。
会場が暗転すると、割れんばかりの歓声はもちろんのこと、温かみのある拍手も響くと、中野と小林のふたりも手を挙げて応答し、ライブのオープニング定番曲でありながらも正式リリースのない「Dig The New Breed」を演奏し始めると、どよめきが轟く。エフェクトのかかった小林のボーカルからは川島の魂をしっかりと受け継ぐという強い意志を感じることができ、中野の描くベースやビートはかつての衝動を表現しながらもTHE SPELLBOUNDでしか鳴らすことのできないエッジを効かせたものに。
また、ふたりを支えるサポートの福田洋子(Yoko)が叩き出すドラムも、力強く生命の輝きを感じさせるもので、そのアンサンブルが会場をタイムスリップさせた。オーディエンス全員が、一心不乱に音楽をエンジョイするキッズのような表情を浮かべながら、ダンスをしたり手を挙げたりしていた。その後、2004年にアニメ映画『APPLESEED』の主題歌として書き下ろした「Dive For You」、1998年リリースの「Push Eject」など、お馴染みというか、BBSの人気を決定づけた楽曲の数々を畳みかけるように披露していく。
彼らが登場した当時は、デジタルロックという音楽概念、また、フェス文化が日本に浸透し始めてきた頃。BBSはその時代の先端に立ち、オーディエンスやリスナーに新しい刺激的な音楽世界を伝え、切り拓いてきたパイオニアであり続けたことを改めて実感した。しかし、そんな感慨が頭をよぎったのは一瞬。畳みかけるように展開する研ぎ澄まされたビートの連続に、表現体制に変化はあったものの、時代を扇動し続けるアティテュードにますます磨きがかかっているというか。発表から時間が経過しているのが信じられないくらいのフレッシュさと鋭さがあることに圧倒させられた。
後半では、川島の闘病生活の中で完成した2015年発表曲「A HUNDRED SUNS」を披露。ほかの楽曲で轟かせるビートとは異なる開放感に包まれたメロディアスなサウンドには、これからを生きる希望に溢れていた。会場が、異世界でエキサイティングな音楽を作っているはずの川島への愛に包まれたような感覚がしたのは、筆者だけではなかったような気がする。