ポルノグラフィティが飾る『ヒロアカ』の始まりと終わり 「THE DAY」から「THE REVO」=“革命”が意味するもの

 ポルノグラフィティの新曲「THE REVO」(読み:ザ レヴォ)が届けられた。アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』のオープニングテーマとして制作されたこの曲は、重厚感に溢れたサウンドと強い意志を感じさせるメロディ、そして、“脳内の革命”をテーマにした歌詞が響き合うナンバー。アニメ“ヒロアカ”の完結を彩ると同時に、ポルノグラフィティの現在地を示す楽曲に仕上がっている。

 アニメ第1期(2016年)のオープニングテーマ「THE DAY」から9年の時を経て、再び交わったポルノグラフィティと『ヒロアカ』。「THE REVO」の制作について、岡野昭仁、新藤晴一に語ってもらった。(森朋之)

作者 堀越耕平の思いを受け取って作られた「THE REVO」

「THE DAY」▶「THE REVO」"継承"ムービー/僕のヒーローアカデミア×ポルノグラフィティ

ーーまずは2016年の「THE DAY」について聞かせてください。TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第1期のオープニングテーマですが、お二人にとってはどんな楽曲ですか?

岡野昭仁(以下、岡野):作詞・作曲は晴一なんですけど、制作のなかでどんどん変化していったんですよね。まず晴一がデモ音源を作って、江口亮くんを中心にしてアレンジを進めていって。「どうなっていくんだろう?」と思ってたんですけど、レコーディングですごく化けて、さらにライヴでも化けて。今もよくライヴでやってますが、すごく力強い曲になったと思います。僕自身、心してかからないと歌えない楽曲なんですよ。「THE DAY」があることで、自分のコンディションを見極めることができるし、「しっかり届けないといけない」というモチベーションにもつながっていますね。

新藤晴一(以下、新藤):昭仁が言った通り、「THE DAY」は想像してなかった変化が起きた曲で。最初はラテンっぽい曲がいいかなと思って作ってたんですけど、そこからBPMを上げて、アレンジしているうちに、想像と違う曲になっていって。『ヒロアカ』の盛り上がりとともにたくさんの方にかわいがってもらえたのも、僕としてはいい意味で予想外でした。

ポルノグラフィティ『THE DAY』MUSIC VIDEO(アニメ「僕のヒーローアカデミア」第1クール OPテーマ)

ーー〈小さき旅人が奏でる 始まりの鐘の音〉というフレーズがありますが、「THE DAY」自体も成長していったというか。

新藤:そうですね。『ヒロアカ』からは、週刊少年ジャンプの魂みたいなものを感じていて。僕らもどっぷりジャンプを読んでいた世代だし、自分のなかにある“ジャンプ魂”を信じて歌詞を書こうと。結果的に『ヒロアカ』のファンの方にもすごく喜んでもらえたのでよかったなと思ってます。

ーーそれから9年の時を経て、アニメ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』のオープニングテーマを再びポルノグラフィティが担当。最初と最後を飾ることになりました。

岡野:ありがたいです。スタッフ、チームの皆さんからも以前から「ぜひ『ヒロアカ』の最後を飾りたいですね」という話を聞いていたし、その熱量も感じていて。本当に担当させてもらうことが決まったときは、覚悟を持って作ろうと思いました。制作としては、まずアニメの監督、プロデューサーと打ち合わせさせていただいて。『ヒロアカ』は大団円を迎えるんですけど、原作の堀越耕平先生の思いとしてはーー続編があるという意味ではなくーー「彼らの未来はまだまだ続いていく」ということを表現したいと。なので楽曲についても、いろいろな出来事を積み重ねてきて、最後に爆発するような曲にしたいと思ったんですよね。アニメソングらしく派手に始まるというより、冒頭のトーンは低いんだけど、ひとつひとつの歩みが重なって、少しずつ大きくなっていくような。

ーーなるほど。「THE DAY」の曲調も意識していたんでしょうか?

岡野:「THE DAY」は第1期のオープニング、「THE REVO」はファイナルシーズンのオープニングなので、自ずと色合いは違うのかなと。「違うものにしよう」という感じはあったかもしれないけど、それほど意識はしてないですね。昨日、編曲のtasukuくんとのやり取りを見返してみたんですけど、かなり綿密にやっていたんですよ。さっきも言ったように僕らのスタッフ、アニメサイドの熱量がすごく高くて。もちろん自分としても自信がある曲を作ったんですけど、「皆さんの熱量に見合った曲になるだろうか」という不安もちょっとあったんですよ。なのでtasukuくんにもかなり無理難題を言わせてもらって。それは苦労というよりも、すごく楽しい試みだったと思ってます。

ーー新藤さんの作詞についてはいかがですか?

新藤:原作の終盤の熱量がすごかったんですよ。デク(緑谷出久)もオールマイトも第1期の頃とはまったく違うし、その変わり方は僕らの想像を超えていて。それを別の言い方に変えると、革命みたいなものじゃないかなと。

ーー〈潜在的未来を目減りさせていくのは/守ることしか知らない戦術上の間違いだった〉など、新藤さんらしい個性的な表現も印象的でした。

新藤:ありがとうございます。そこはがんばっているところというか。もちろん『ヒロアカ』のための楽曲なんですけど、自分らしい歌詞を書くことーーもちろんメロディやサウンドもそうですけどーーが大事だなと。「ポルノグラフィティの今後は?」という話になったときに、時代に合ってる曲というだけではなく、ポルノグラフィティらしさをしっかり出していくことが1番意味があるんじゃないかなと。僕のことでいうと、自分の言葉で書くというのはすごく大きなことなんですよ。「THE REVO」の歌詞もしっかり自分らしく書けたと思うし、『ヒロアカ』にもしっかり合ってるものになったと思います。

岡野:うん。タイアップ先に合ったものを作る、先方の期待に応えることはもちろん、「こんな曲ができた!」と小さいガッツポーズというか、自分たちもワクワクできることが大事なので。年齢やキャリアを重ねるにつれて、余計にそう思うようになりましたね。最初の頃は売上枚数やチャートなどの数字が目安になっていたし、そこで結果を残すのも素晴らしいことなんだけど、今はまた少し違っていて。自分たちのなかで小さなガッツポーズを重ねたり、その変化を聴いてくれた人たちが感じてくれる、そういうやり取りが楽しいんですよね。

 「THE REVO」でいうと〈神聖なMOVE/SILENT VOICE/THE DAY HAS COME〉のパートは、当初は歌詞がなかったんですよ。“Oh〜Oh〜”という感じでお客さんとシンガロングできるように作っていたんですけど、「ここにも歌詞を入れて、しっかり歌ってほしい」という要望があって。シンガロング用のキーに設定してたから、上手く歌えるかな? という不安もあったんだけど、やってみたら「新しい歌の表現が見つかった」という手ごたえがあったんですよね。誰も気づかないような小さな変化かもしれないけど、僕としては「やった!」という喜びがありました。

ーーしかも〈THE DAY HAS COME〉というフレーズは、「THE DAY」の歌詞ともリンクしていて。

新藤:はい。そこは喜んでもらえるかなと。

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