STUTS、旅の果てに辿り着いた境地 Kアリーナ横浜を熱狂で包んだキャリア最大公演『Odyssey』

 トラックメイカー/音楽プロデューサー/MPCプレイヤーのSTUTSが日本武道館でのワンマンライブから約1年半、さらにスケールを大きくし、Kアリーナ横浜で自身のキャリア最大規模となるワンマンライブ『Odyssey』を開催した。国内のヒップホップシーンからポップスの領域にまたがって活躍を続けて来たSTUTSだからこそたどり着けた境地だ。同公演はCS日テレプラスで独占生中継が行われ、9月27日の21時からアンコール放送が行われることも決定している。

写真=cherry chill will.

 STUTSと、岩見継吾(Ba)、仰木亮彦(Gt)、TAIHEI(Key)、高橋佑成(Key)、吉良創太(Dr)、武嶋聡(Sax, Flute)、佐瀬悠輔(Tp)からなるバンドによる演奏と共に、日本を代表する映像作家、Spikey Johnの手がける映像が流れ始める。『Odyssey』というこの公演のコンセプトを表現した壮大なオープニングだ。ソールドアウト公演となり、隅から隅まで埋め尽くされたKアリーナ横浜の客席からドッと歓声が湧き上がる。

 さらにゲストに北里彰久が登場し「Sail Away」を披露すると、矢継ぎ早にC.O.S.A.とYo-Seaの参加する「Pretenders」、Yo-Seaとの「Flower」をプレイし、ここでやっと最初のMCへ。「人生って旅だなって思って」と少し照れくさそうに「Odyssey」というコンセプトを語り始めるSTUTS。さながら世界中の港を巡る船のように、彼は自らの旅をしながら、同時にシーンのハブとなって様々なアーティストと自身が繋がり、繋げてきた。本公演は、そんなSTUTSのこれまでの旅路なのだろう。その後に「マジックアワー」で登場したBIMとRYO-Z、「Pointless 5」で駆けつけたPUNPEEとスチャダラパーというキャリアの長さを問わないコラボレーションは象徴的だ。

写真=Masato Yokoyama

 次のセクションでは、「ZOTさんが来てくれました!」と、STUTSと同様に国内ヒップホップシーンをリードするプロデューサーであるZOT on the WAVEがオンステージ。「明るい部屋」、「Shall We」、「Perfect Blue」、「雨」と、今年7月にプロデューサーユニット、STUTS on the WAVEとしてセルフタイトルの1st EPもリリースした2人のタッグによるプロデュース曲が次々に投下される。LEX、LANA、Yo-Sea、Tiji Jojo、Daichi Yamamoto、RYO-Z、iri、Benjazzyと、このセクションでも曲に参加しているゲストがすべて登場。その華やかさの影響もあってか、あっという間に時間が過ぎていく。

 ZOT on the WAVEが去ってからもSTUTSは畳み掛けるのをやめない。鎮座DOPENESS、Campanellaが参加し、ステージに炎が吹き出した「Sticky Step」、Daichi Yamamotoと鎮座DOPENESSの乗ったレゲトン風の「Mirrors」と観客を湧かせまくり、Daichi Yamamotoの最新作『Secure+』に収録され、Daichi YamamotoがSTUTSとテキサスで寝食を共にした思い出を歌った「いい感じ」をライブ初披露。Yo-Seaと、STUTSとの楽曲でデビューを果たした、Kaneeeも登場した「Feel Missing」を経て、BAD HOPによる最後のアルバムに提供されたT-PablowとZeebraがラップする「Empire Of The Sun」では、ラストにZeebraがオーディエンスと特大のコールアンドレスポンスを交わし前半を締めた。

 若干の静寂を経て、ステージにはまるでクラフトワークのようにSTUTS、DJ FUMIYA、DJ Mitsu the Beats、熊井吾郎、KEIZOmachine!、KO-neyが並ぶ。キャリアも様々な錚々たるメンツだが、彼らに共通するのは、サンプラーであるMPCをリアルタイムで叩いてプレイできる点だ。入れ替わり立ち代わり、それぞれのMPC、ドラムパットと、このMPC Sessionsの発起人でもあるというDJ FUMIYAのスクラッチが火花を散らすようにビートを響かせていく。おそらくこの規模で、この人数でのMPCを用いたセッションは史上初だろうが、このパートだけで一つの公演として観たいと思うほど素晴らしい時間だった。

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